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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第四章 怪盗は黒き骸骨と共に
187/189

#189 月光下の決戦その十九

最近話数のミスが多くてすみません・・・・・

 剣とシンクロする緋色の少女。心身ともに熱い炎が滾り、燃え盛る。


「ッ・・・ッッッ!!!」


 アリヤが放ったのは、懐に飛び込んでの一太刀。ただそれだけ。

 そんなもの、ここまでの戦闘でも何度も行ってきた。そしてそのほとんどは強化された大蛇の体に刃が阻まれ、確実なダメージにまでは至っていなかった。


 だが、なぜだか今回は違う。まるで熱した包丁を氷の塊の上に乗せたかのように、ジィィィと焼けるような音を立てながらアリヤの斬った場所に傷が残る。


 これまでにほとんどなかった感覚。このままいけば、絶対に目の前の大蛇を倒すことが出来るという確信がアリヤにはあった。だが、確信は良いものだけではなく・・・


(なんとなく分かる・・・この状態は、そう長く続かない・・・)


 この状態になれたとアリヤが自覚しているのはただ一回。それは、ムラメと共にグラーケンの作り出した疑似天井を突破した時。

 肉体、精神、あらゆるものが限界の先すらも超えてしまった時、体の硬直を解き放ち再熱させたあの時だ。


 その一度で、アリヤは少しだが掴んでいた。自分が強くなれるであろうその可能性を。死んでも離すまいと、しっかり握っていたのだ。


 そして今、それを手繰り寄せ、再び戦うことが出来ている。この感覚にずっと浸っていたいアリヤであったが、そうは問屋が卸さない。


 おそらく相当に短いであろう制限時間。その間に目の前の砂岩巨蛇(サンドサーペント)を倒せなければゲームオーバーのこの状況。されど、アリヤは臆することなく剣の柄を握る。


「短期決戦一点集中・・・!次で決める・・・!!」


 後先などもう関係ない。次で決められなければ自分の負け。潔くその命を明け渡すしかない。


 だが、それでも構わない。アリヤは心の中でそう決め、集中力を更に高める。


「ふぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・」

 

 教わったわけではない。それは憧れの男を模したただの真似事に過ぎない。だが、例え紛い物の一撃であったとしても、その威力は絶大。それはそうだろう。これを使っている人物は、人の常識など軽く超えてしまうような化け物なのだから。


(だめ・・まだ足りない・・・!()()()()()()()()・・・!!!)


 更に、更に剣に力を注ぎ込む。この戦いに人生の全てを賭けるかの如く。


 アリヤのオーラは、この一時的にではあるがどんどん膨れ上がる。それでも、タクやシムビコートまでとはいかない。


 アリヤも、あの二人の戦いは遠くから少し見えていた。自分では介入することすら許されない領域で戦う奴らには、彼女も驚かされていたと共に、謎の苛立ちを覚えた。


 もし、天才と呼ばれる部類の人間として生まれていたのならば、生まれた時から、タクのような力があれば。若さゆえか、そのような事を嫌でも考えてしまう。そんなこと考えても、無駄で空しいだけだということは分かっているというのに。


「・・っぁああ!!阿修羅『破道』一之型・改!『微笑み月(ルナティック)()焔流星(フレイムスター)』ぁぁぁあああああ!!!!!」


 炎を付与した神速と呼べる一閃は、砂岩巨蛇(サンドサーペント)の反応速度を遥かに上回った。


 気付かぬうちに体を斬られてしまった大蛇。即座に再生を試みるが、高熱の炎のせいなのか、傷が一向に回復する気配がない。

 もちろん、時間をかければ再生自体はする。それでも、その時間というのが相当に長くなるということは、大蛇自身もきっと、この時点で気付いていた。


 魔力で作られた身体。それは攻撃を通さず、魔法すら寄せ付けない。だがそれは、あくまで相手が格下だったならば、という話。強大な力の前では、どうすることも出来なかった。


「ッッッをぉ!!三連発!!!!!」


 アリヤの方も、相当な無理をしている。だがそれでも、止まることを己が許さなかった。強くなるためには、己の中の壁を破壊しなければならない。そして止まってしまえば、その壁は永久に開くことはない。


「だぁぁぁああああああああ!!!!!」


 その三撃は空で炎の大三角を描く。砂岩巨蛇(サンドサーペント)の肉体を削ぎ、その動きを一時的に封じる。

 そして、このレベルの戦いにおいて、立ち止まることは・・・・・死を意味する。


「っだぁぁぁ・・・・・!!!!!」


 アリヤは再び砂岩巨蛇(サンドサーペント)の正面にへと戻ってきた。そしてそこで、呼吸を整え直し、次の攻撃へと繋ぐために構える。


 その構えは、闇丸を彷彿とさせる居合の構え。鞘に剣を収め、それでもなお眼前の敵を見据え、確実にその息の根を止めるために、鞘の中を炎で満たす。


 その火力は、先の洞窟でアリヤの放った、見様見真似の斬撃とは比べ物にならない。『真紅炎刃(クリムゾン)』は継続し、そこに更なる炎がつぎ込まれる。そして・・・それだけではない―――――


 バチバチバチバチ・・・・・!!!!!


 鞘がはち切れるのではないかと思うほど、ここまで鞘が耐えているのが不思議なほど、爆発的に内側では火力が増す。


 アリヤは戦いの前、鞘の中に仕込んでいたのだ。入れられるだけの、ありったけの火薬を。


 それにより剣速は、ただ剣を抜き放つよりも格段に跳ね上がり、その威力を一気に引き上げる。だがそれは、反動により下手をすれば自身の腕が引きちぎれかねない諸刃の剣。それでもアリヤは躊躇うことなく、あろうことか更に魔力を注ぎ込む。


 この際、疑似長期魔力蓄積(アキュームレイト)を取り入れることで消費した魔力を少しでも多く回復させ、その回復させた魔力すらも全て注ぎ入れる。大蛇が再びこちらに襲ってくるギリギリの時まで。


「シュ・・シュルル・・・シュロロロアアアア!!!!!」


 砂岩巨蛇(サンドサーペント)も暴走状態。未だに焼ける音が鳴る傷が治るよりも前にアリヤの命脈を断たんと突き進み、その巨体を少女へぶつけんとする。


「・・・・・ッ!!『赫熱(かくねつ)・・・破轟斬(はごうざん)』!!!!!」


 そして、とうとう放たれたアリヤの全てが籠もった究極の一閃。


 目で追えない剣速。一瞬で全てを包まんばかりの炎。そして鬼気迫る少女の形相。その全てが大蛇の身体に激突する。


「ぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!!」

「シャアアアアアア!!!!!」


 砂岩巨蛇(サンドサーペント)も、それに抵抗する。が、もう大蛇に・・・できる事はなかった。


「はぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!」


 やがて、アリヤの炎は五十メートルある大蛇の体を全て飲み込んだ。

 彼女の全てを乗せた、アリヤの生み出した『赫熱破轟斬(かくねつはごうざん)』は、とうとう大蛇を打ち破ったのだ・・・!




 炎が全て消える頃には、その場所に砂岩巨蛇(サンドサーペント)の姿はなく、剣が手から抜け落ち、仰向けに倒れる少女だけが残ったのだった―――――

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