表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第四章 怪盗は黒き骸骨と共に
184/189

#182 月光下の決戦その十六

更新をお休みさせていただく際などは活動報告またはXの方にてご連絡させていただきますので、ご了承ください。

―――――自分の武器とは何か。


 それは、人によってそれぞれ答えが変わってくるだろう。愛用している剣や防具、鍛え上げた肉体、揺るがぬ熱いハート。千差万別の回答が存在している。


 レリルドは改めて自分の中の答えがなんなのかを考える。

 体は鍛えてはいるが、それでもそんなに自身があるわけではない。冒険者として活躍しているベテランなどと比べてみれば、はっきりいって全然だった。

 年齢差、歴の違い、積み上げてきたものの違い。言い訳を考えればごまんと出てくるが、そんな物いざという状況下ではまったくもって無意味だ。今自信を持てるような武器ではない。


 心はそんな肉体以下だとレリルドは自分で自覚してしまっている。そもそも、こういった事を考えている時点で心が弱い証拠だ。

 余計なことは考えない。ただ自分にできる事をする。そんな当たり前のことをしなければならないのも十二分に分かっている。


 この約一か月間。アリヤ、そしてタクと共に戦い、かつてないほどの強敵との対峙。未知との出会いにより、心も体も今までにないほど成長している。それは実感していた。


 だが、レリルドはどうしても何かが足りない気がしてやまなかった。


 同種合成獣(セーム・ド・キメラ)、クルーシュス率いる『ケラウノス』の襲撃、グラーケンとの死闘。


 それらとの戦いを振り返るたび、思い浮かぶのは同い年の青年が決死の覚悟で前に出て戦うあの姿。


 レリルドが関わったほとんどの戦いには、必ずタクというキーパーソンが存在していた。どんな危機的な状況であろうとも、あの男がいたから乗り越えることが出来たのだ。

 あまり認めたくないものだが、もしもアリヤと自分の二人でこれらと戦うとなれば、まず勝利することは難しいだろう。


 そこまで考えて、レリルドは完全に頭から抜けていたことがあったのを思い出す。

 皆が等しく持っていて、自分は持っていないものを。


 言わなくてももはや明確であろう。それは己の得物。


 レリルドは戦闘の際剣を使う。銃を使う。だがしかしそれらは彼の()()によって生み出されたものであり、確固としたそれを持ってはいない。だから、己の武器に信念が宿ることは基本的に無いだろう。


 だが、逆に考えればそれは、彼にとっての大きなアドバンテージである。


 仮に、人と戦うことになるとする。お互いに顔を知っていて、戦い方もなんとなく頭に入っているような相手。

 その片方の得物が槍とする。自分が前に出ればそいつは少し引いて、自分が引けばギリギリを狙って迫ってくる。槍の有効射程を完璧に把握しており、ギリギリの場所。自分の安全マージンを確保しつつも確実に削ってくる戦法を得意としている。いきなり攻められても対応できるよう、近接戦闘の訓練も怠っていない。


 そしてそんな相手にレリルドが対していた場合、どうだろうか?


 剣と銃を好んで使うことはその相手も分かってる。が、それだけではない。

 同じく槍で来るかもしれない。はたまた斧かもしれない。戦槌?鞭?ハルバード?何で来るかは攻撃のその瞬間まで分からない。それすら予測して戦えるのならば、その相手は相当な腕をしている。


 レリルドの確固たる武器。それは無限に存在している手数。

 好んで銃や剣ばかり使っていたレリルドだったが、それは自分の可能性を自ら潰す行為だったのだ。



 パワーメインで強引に突破口を開く師匠、ダリフ・ドマスレットが得意とする戦法よりも、こうやって走りながら相手を翻弄して削り続ける戦法の方が得意で、好みでもあったりする。



 そんな事を思ったのは、いつだっただろうか。ついこの間のようで、随分前のようにも感じる。

 自分でもわかっていたじゃないか。なぜ今日の今日まで、それを忘れていたのだろうか?


「翻弄し続けろ・・・そこに生まれた隙に・・僕の活路がきっとある・・・!!」

 

 正面突破はどこぞの誰かに任せておけばいい。同じ土俵で戦う必要などない。




 自分はレリルド・シーバレード。手数だけなら世界一の冒険者だ・・・!




「うおおおおおぉぉぉ!!!!!」


 思考を回せ。足を止めるな。常識を捨てろ。手数だけが、己が奴に勝っているものだ。

 この巨体にどれほど通用するのかは分からない。それでもやるんだ。みんなで勝つために・・・!


「ッ!」


 直後再び辺りに鳴り響く銃声。それと同時に大蛇の側方にへと走り出す。

 砂岩巨蛇(サンドサーペント)もそれすかさず反応。向こうもレリルドの行動をしっかりと学習しているようで、レリルドの行動に追従する。が、そこで大蛇は違和感を感じた。


 今対峙している人間は、小さな武器のようなものから鉄の塊を飛ばして攻撃してきている。そしてそれはこの瞬間も自分にへと牙を剥いているのだが、人間はその武器を()()()()()()()()

 

 大蛇は攻撃されている方向を向いた。そこには誰もいなかった。代わりにそこには、レリルドが持っているはずの武器()()が存在していた。


「ふぅぅっぁぁあああ!!!」

「シュルァァアア・・!!」


 その気を取られた直後だった。大蛇の側頭部に、レルが生み出した戦斧による一撃が叩き込まれる。

 ただの人間サイズの武器程度ではどうともない砂岩巨蛇(サンドサーペント)であるが、その斧の大きさは人間が持てるほどの大きさではなかった。そしてそんなものを振り回しているのは、大きさが斧の三分の一程度しかないレリルドだったのだ。


 レリルドはまず銃を生成した。それには自立するための脚が備わっており、レリルドのイメージ次第で遠隔発砲できる仕組みのもの。それを置いて撃ち続けたのだ。自分の手から離しているので魔力による弾の補充は出来ないが、それでも一瞬の隙を突くためのおとりとしての役割は十分に果たすことが出来る。


 そうしてできた隙に、蛇の側頭部へと向かいながら戦斧を生成。レリルドのコートに備わっているスキル付与(エンチャント)魔力吸収(マジック・ドレイン)』と『魔力貯蔵(マジック・ストレージ)』の効果により相当量の魔力を行使可能であるレリルドは、生成する武器を巨大化させるという暴挙に出た。

 常識の枷を外したレリルドが生み出した隙は確実に砂岩巨蛇(サンドサーペント)の意表を突き、その刃は確実に奴の下にへと届いたのだ。


「シュロロロロ・・・・・!!!」

「・・・なんだか、いろんなアイデアが湧いてくる・・でも、それらだけじゃ届かない・・・!この戦いの中で進化するしかない・・・!」


 レリルドは腹を括る。文字通り命を賭けて。

レル・・久しぶりだな・・・(前回レル登場から半月以上経過)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ