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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第四章 怪盗は黒き骸骨と共に
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#181 月光下の決戦その十五

 空中にへと魔法の力で飛び上がったメルは全神経を研ぎ澄ませ、炎に魔力が送られている「経路」を探すために。


「どこ・・どこだー・・・?」


 サリトスに託されたメルの役目。それはシムビコートから供給され続けているであろう魔力の経路を見つけ出し、その供給を止める事。それを止める事さえできれば、炎の竜巻の巨大化を防ぐことが出来、そのまま騎士団の魔法によってそれらを消し飛ばすことが出来るようになる。一見地味だが、最も重要な役どころである。


「多分、シムビコートに一番近い炎辺り・・・・・」


 今地上からかなり離れているメルは、そこから今この砂漠で起こっていることがよく見えた。

 一番奥、シムビコートと戦っているタクは、メルがいる場所から相当離れているというのにも関わらずその迫力、両者が睨み合う威圧感というものがひしひしと伝わってきた。そしてそれを放っているのは、タクだけではない。


 その少し手前で砂岩巨蛇(サンドサーペント)と戦っているレリルド、そしてアリヤ。二人も見たこともないようなサイズの大蛇と一対一(サシ)で戦っていた。


(あれは・・・ボクだったら役不足だったかもな・・・)


 ふと、メルはそんなことを考えてしまう。

 騎士であるメルだが、魔法というよりかは、どちらかと言えば近接戦闘能力と冷静な判断能力が評価され今の三番隊隊長の地位に就いている。総合的な戦闘能力はあまり高くないことは自分でもよく分かっているし、それを補うために修練を欠かしたことはない。

 だが、この魔法世界。魔法の面でも戦えなければ駄目だというのに、自分が持って生まれた魔法の際は、妨害魔法だった。


 具体的に言えば、相手が魔法を発動する際の魔力の塊と相手の間につながっている、彼女が「経路」と呼んでいるそれに干渉し、魔法の発動を一時的に邪魔する、というもの。

 仲間がいる時は相手の魔法を一時的に妨害する立ち回り。サポート役としては活躍できる。だが、ああいた、彼らのような一対一の場面では、実質的な役には立たないのだ。


 「相手の魔法を封じながら戦える」というのならば、それは十分に強力な力だろう。だが、齢十八の彼女は、まだまだその領域には達していなかった。メルが魔法を発動するためには彼女は動きを止めておかなければまともに行使することも今は難しい状態であり、正直戦闘においては使い物にならないというのが現状だった。


「でもボクだって・・・役に立ちたい・・・!」


 メルは徐々に落下していき、炎の檻の外に着地する。猫のように両手両足で着地し、衝撃による反動を最小限に抑える。

 そこからすぐさまダッシュで経路があるであろう場所へと向かう。


「やっぱり、シムビコートと最も近しい場所・・!一瞬だけど、確かに経路が見えた・・・!」


 あんな状態のタクと戦いながら、ここまで大規模な魔法の管理も並行して行っている。敵ながら感心してしまうが、それは阻止すべきもの。あまり深く考えず、ただその繋がりを断つことだけを考える。


「ッ!?やっば!もう始まっちゃった・・・!」


 炎のステージの上空、凄まじい魔力の塊が生成され、それがどんどん大きくなっていくのが見える。始まったのだ。サリトスが指示した超大規模魔法、『滅魔之超台風(イレイザータイフーン)』。その基となるものなのだろう。


「急がないとっ・・・!『身体能力強化』・・・!」


 タクがアルデンから授かったスキルの内の一つ『身体能力強化』事態は、この世界のどの国でも割とポピュラーなスキルだ。発動しても特にクセなどもなく扱いやすく、習得もそこまで難しいものというわけでもない。なんなら、スキル付与者(エンチャンター)の下でも付与してもらえるようなものだ。

 

 そんなスキルを使用して走る速度を上げたメルは、凄まじいスピードで経路の元にへと急いだ。






「・・・あった・・・・・!」


 端から見れば何もないような場所、だがメルにははっきりと見える・・・シムビコートと炎のステージを繋ぐ経路。

 メルはすぐさまその経路に手を触れる。もちろん魔力。触れた感触などは無い。だが、それでも伝わってくる相当に邪悪で恐ろしく強力な魔力。


「ハァッ・・・!『献身的な(デヴォーテッド)魔力妨害(・ジャミング)』!!!」


 そして発動されたメルの妨害魔法。彼女の魔力は経路にどんどん浸透していき、やがてその主導権を一時的に奪う。


「クッ・・・結構キツいなぁ・・・!!」

 

 大抵、そこそこの魔法であれば無理なく止められるのだが、そんなメルが少し厳しいと思うほどの魔法。それは、魔法士としての格。それがシムビコートに自分が劣っているという何よりの証拠だった。

 だがそれでも、メルの意思は揺らがない。ただ仲間を信じ、自分にできる事を全力でやるだけだった。


「あとは頼んだよ・・・サリトス・・皆・・・!!」






「サリトスさん!消した竜巻が復活しません!どうやら、魔力の経路は隊長によって経たれたみたいですね・・・!」

「・・・よし。」


 ワレットからの報告に、サリトスは小さく頷いた。

 ステージ内にあった小さな炎の竜巻、それを騎士団の一人が消し飛ばし、復活すればまだ、復活しなければ、メルがシムビコートからの魔力供給を断っている際中だということが分かる。


「隊長補佐殿・・・!『滅魔之超台風(イレイザータイフーン)』・・・準備完了でございます・・・!!」

「我ら、いつでも放てます・・・!」


 発動準備を整えた騎士が、サリトスにそう告げる。空中の魔力の塊は相当なサイズになっており、淡い黄金色に輝いていた。


「皆・・・・・私の無茶ぶりに、よくぞ答えてくれた・・・」


 正直、自分が相当無茶苦茶な事を言っているのは百も承知だったサリトスであったが、仲間たちは自分が思っていたよりもよっぽど優秀で、頼もしい存在だった。


「・・・『滅魔之超台風(イレイザータイフーン)』、発動!!!!!」

「「「「「了解!!!!!」」」」」


 サリトスの号令で、魔法が発動。魔力の塊は徐々にその形を変え、やがて地上でその動きを続けている炎の竜巻に類する姿となった。


 『滅魔之超台風(イレイザータイフーン)』事態に殺傷能力はなく、竜巻もイメージ。人を吹き飛ばしたりなども出来ない。

 その効果は、ただあらゆる魔法を消し飛ばす、といったもの。それは範囲内の魔法にだけ作用し、それに対してだけは絶大な効果を発揮する。


「・・・沈まれ炎!我ら英鎧騎士団をなめるなぁぁあああ!!!!!」

「・・・いっっけぇぇえええ!!!!!」


 そんなサリトスとメルの声が揃ったのは、きっと偶然ではないのだろう。黄金の竜巻はどんどん大きくなり、やがて地上の炎の竜巻全てを飲み込んでいく。


 そうして炎のステージが全て消滅したのは、『滅魔之超台風(イレイザータイフーン)』発動からそこまで時間も経っていない頃だった。






「・・・・・だぁぁぁ・・!何とか収まった・・・!」


 ひとまず安堵するメルだったが、戦いはまだ終わったわけじゃない。まだまだやることはたくさんあるのだ。


「皆・・!ボクも今行くから・・・!!」

 

 緊張状態はまだまだ続く。この夜が明けるまで・・・・・

☆魔法の力で空を駆ける☆魔法少女☆メルたそ☆


(この戦いから数か月後、英鎧騎士団内に存在していたメルたそファンクラブ会員の一人の机の中に入っていた怪文書のタイトル)

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