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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第四章 怪盗は黒き骸骨と共に
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#177 月光下の決戦その十一

更新時間を少し変更してみたのですが、どうでしょうか?0時に待っていただいていた方は本当に申し訳ございません・・・

来週はこの時間帯でやってみて、あまり違いがなければ元に戻します。

「このあたりの時間帯が良いよー!」などありましたらX(旧Twitter)やらでお伝えいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。(X(旧Twitter)アカウントへは私のプロフィールからも飛べます。)

 うん。よく分かった。


 シムビコートが俺に剣撃を浴びせ続けてかなりの時間が経過したと思う。十分、少なくとも五分以上は経っているはずだ。向こうも俺を仕留めきれずに苛立ちを覚えている。なぜ分かるのかというと・・・・・


「クソッ!さっさと死ね!!」

「いやマジ小学生かよお前・・・!」


 この通り、顔や言動で丸わかりというわけだ。

 ゼローグの整った顔立ちで幼稚な罵倒をしているのは少し笑えるが、あまり馬鹿にし過ぎて気を抜くとこちらがやられかねないのである程度の自重はしておく。


 さて、分かったというのは、シムビコートがイラついているということではなく、ちゃんとこの戦いにおけるものだ。


「シムビコート、お前・・・・・さては魔法とか盗むこと以外はそこまでだな?」

「・・!?なんだと貴様・・・!」


 俺の言葉に怒気の籠った声で答えるシムビコート。舐められたことに怒っているのか、はたまた図星だがそれを否定したかったのか。

 確かに今剣を振るうシムビコートの剣は速度も凄まじく、その一太刀の威力も相当なものだろう。そもそもがゼローグの装備をそのまま使っているのだから当然と言えば当然なのだろうが。


 話を戻そう。俺がそんな剣を食らっていく中でそう思ったのかというと、


「振り下ろしては切り上げ、たまに横一文字。速度こそ早いがモーション自体は単純なんだよ。お前の斬撃の道中で俺に余裕が出始めたのもそれが理由だ。」

「・・・・・」

「最初は多少戸惑ったが、俺も戦ってく中で目が慣れてきた。この世界に来てからの俺の動体視力の成長速度舐めんなよ・・・!結局お前の剣は人様の借り物・・・装備が強いだけでプレイヤースキルが全然足りてない奴、あるいはスキンと態度だけ一丁前でいざ戦うとすぐ死ぬタイプのFPSプレイヤ―――――」

「さっきからごちゃごちゃうるさいんだよ!!!!!」


 おっと、少し煽り過ぎたか。散々色々言ったせいでついにシムビコートの野郎は怒髪天を衝く形相を見せる。先ほどまでの怒っていた様子の顔が可愛らしく思えるような。


「おっとシムビコート、回答としての心構えがなってないんじゃないか?もっと冷静に、感情を表に出さず、常にクールかつ鮮やかに・・・・・」

「黙れ!!魔法も使えない人間以下の下等生物の分際で!!!」


 怒らせた俺が言うのもなんだが・・・この野郎、感情に応じて言動とか性格物凄い変わるな・・・

 叫ぶと同時、シムビコートの斬撃の嵐が突如止む。やっと一息つけると思いながらも、奴への警戒レベルは更に上げる。理由は自分でもよく分からない。だがここで油断すれば、全てが終わってしまう気がした。


「・・・・・お前だ・・・三日前も、そして今も・・!悉く僕の邪魔をする・・・お前さえいなければ、僕のショーの成功は揺らぐことなどなかったのに!!!・・・絶対に殺す!お前だけは許さない!殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!!」

「・・・そりゃあ、分かりやすい殺意なこって・・・・・ん?」


 そう言いながらも、シムビコートは自身のスーツの内ポケットから何かを取り出した。それを掌に乗せ、そして俺に見せてくる。


「・・・・・なんだそれ?」

「もう知らんぞ・・・!お前はこれから、地獄を見る・・本物の地獄だ!!!!!」

「いかにもチンピラって感じの台詞言ってることにそろそろ気付かない?」


 奴が俺に見せてきたのは、見たことのない錠剤。それが三粒。カプセルタイプのそれは、片方が黒、もう片方が紫色の奇妙な色合い。見るからにヤバい薬だということは明らかだった。


「で、その違法薬物がなんだって?」

「んあがっ・・・ゴグッ・・・」

「無視かよ。」


 でもあの感じ、間違いなくドーピングの類だろう。やっとこさあいつの剣に慣れてきたというのに。


「って・・・!!ちょっとまずいか・・・!?」

「ッドゥァァアアア・・・・・!」


 奴から出ていたオーラが一気に何倍にも膨れ上がる。目を真っ赤にギラつかせ、青筋をいくつも浮かばせている。そんなんじゃモテないぞと軽口を叩いてやろうかと思ったが、そんな状況でもなさそうだ・・・!


「ダアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

「・・・ぐあっ・・!?」


 そんな直後だった。俺の視界の前にすでに奴はおらず、そのオーラは俺の後ろから感じられる。そして俺の四肢・・いや体全部・・・・・


 気付いた瞬間には細切れにされてしまっていた。


(・・・・・は?)


 脳と目はまだ繋がっていた。だがそれも地に転がり、目の前に広がる光景は、自らの血に染まり、原型が分からないほど刻まれた俺の身体だった。


 正直、気分は最悪だ。というか、あれだけ食らっておいてなんで胸当てとブーツは傷一つ付いてないんだよ・・・わっけ分かんねぇ・・・・・


(・・・・・・・)


 駄目だ。何も考えられなくなってきた。

 意識が途切れそうになる。本来ここで俺の生命活動は完全に停止し、短い十七年の人生は終わりを迎える―――――




 だがこの世界で、俺にそれは許されていない。




「フゥゥゥゥ・・・・・ッ!?」

 

 振り返るシムビコート。タクの亡骸と思われるそれは、次の瞬間光輝き始める。それは神からの祝福のようであり、そしてそれはこの世界で戦い続けなければならない宿命の灯でもあったのだ。

 肉体はどんどん再形成され、時間にして一分にも満たない僅かな静寂の後、タクの身体は元の姿形を取り戻す。そして以前までなら戻らなかったであろう装備たちも、スキル付与(エンチャント)(マーシャル)のおかげで元に戻っていた。


「・・・・・」

「ナゼダ・・・ナゼシナナイノダキサマハ・・・!!」

「・・・まぁ、そういう運命的な奴なんだろうな・・・俺があのクソジジイに呼び出されたのが運の尽きだ・・・・・」


 死を恐れる。それは人間であればごく普通の感情だ。そしてこのような戦場においては尚更自然と湧き上がるものだろう。


 だが、もはや俺にそれはない。


 何があろうと、例えぐちゃぐちゃに潰されようと、粉々に切り刻まれようと、俺は何度でも立ち上がり、目の前の敵をぶん殴る。

 今目の前にいるシムビコートは、多くの人の命を奪い、そして弄んだ。多くの祭りを楽しみにしていた人たち、そして冒険者を巻き込み、挙句国の宝を盗み、国の財産を勝手にばら撒いた。到底許されることではない。例え世界がこいつを許したとしても、俺は絶対に許さない。


 もう、その時は来てしまったのだ。覚悟を決めなければならない時が。


「シムビコート・・・俺は今から・・・・・全力でお前の息の根を止めにかかる。」

「ハッ・・・サイショカラソノツモリデキテイレバイイモノヲ・・・・・!」




「見せてやるよ・・・俺のもう一つの奥の手・・・・・『ヴァリアブル』を・・・!!!」

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