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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第四章 怪盗は黒き骸骨と共に
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#141 超大型店舗

 と、いうわけで街の人に場所を聞きながら向かった書店なのだが・・・


「・・・書・・店?図書館?」


 土地の大きさからして他の建物とは格の違う面の店がそこには堂々と建っていた。

 無論ここは異世界。駐車場など無しに、店の大きさだけでこれだ。もう少し詳しく言えば、そうだな・・・自分の頭の中で書店を思い浮かべてほしい。町の小さな本屋さんではない・・そう。ショッピングモールとかに入っている書店辺りが良いだろうか。あれの軽く五倍はある。

 カウンター以外はほとんどが本棚。ジャンルごとに綺麗に分けられたそれらは、もはや圧巻という言葉すら生ぬるいほどの凄まじい本の数。同じ本が数百冊ずつあるわけでもないのにこれだ。

 お、よく見たら奥に読書スペースのような物もある。購入した本をあそこで読める訳だ。


「す、凄い・・!」

「ん?どうした?」

「本の値段だよ!アリンテルドじゃありえないくらい安い・・・!!」


 レル曰く、ここの書店の本の値段はアリンテルドのそれの約三分の一程度だそうで・・・古本屋かな?とにかく、一番来たかった俺以上に興奮している様子だ。そしてそれはアリヤも同じようで、無言で剣術に関する本のコーナーまで一直線に突き進んでいた。もはや店員よりも本の場所に詳しそうな雰囲気を醸し出している。

 俺も元の世界では近所の古本屋に入り浸っていたこともあり、何ならどの出版社の本はどこにあるか、どのタイトルの本がどれ程の在庫があるかなどを網羅するほどに通っていたので、まぁ店側からブラックリスト扱いされてもおかしくない程に本が沢山ある空間で過ごしていたのだが、ここもどこかそんな雰囲気がある。もちろん古本屋ではないので掘り出し物を発掘する楽しさというものは無いのだが、それでもこれはこれで楽しい。ほとんど知らない本だけど。


「さて、どんなジャンルの本がどれ程の割合で置かれているか・・・」

「ぱっと見、六割くらい魔法に関する本だね。」

「魔法世界許さねぇ。」


 たしかに魔法が主体の世界。それでも全然おかしくは無いのだが、魔法が使えない奴の事も少しは考えてほしいものだ。まぁ俺以外いないけど。


「なるほど・・・こういう構えから技に繋げて・・・」

「新品の本は流石に立ち読みしたら駄目だろ!」

「いえいえ、全然かまいませんよ。」

「ぬぁっ!?」


 後ろから意識外の声が聞こえたので振り返ると、そこには緑のエプロンを着けた若い女性が。この店の店員なのだろう。


「うちの店はお客様に気軽に本を手に取っていただき、そこから気に入ったものを買っていただくことがモットーなんです。なので全然読んでいただいて、気に入っていただけましたら購入しておうちでも呼んでみてください!」

「これ買います!」

「ありがとうございます!あと、店内ではもう少し声を小さくしましょうね。」


 なんて人の温かさを感じる本屋なのだろうか。もう店側の優しさが店内に満ち溢れている。


「でも、これだけ安くて、元って取れるんですか?」

「あら?お客さんがそれを心配してくださるのですか?心配いりませんよ!無理のない程度でやらせていただいているので!」

「レル、俺ここに住もうと思うんだが。」

「気持ちは分からなくもないけど、とりあえず一旦外の空気を吸ってこようか。」


 ずっとここにいたい。そう思えるほどの居心地の良さ・・・・・


「っウォイテメェ!!!!!」

「ッ!?」

「こんなバカみてぇな店まだやってんのかよ!!!」


 思わぬ名店との出会いに幸せな気持ちがいっぱいだったのだが、突然現れた集団がそれをぶっ壊しやがった。


「誰ですか・・アイツら?」

「・・・この辺りをうろついているギャングです・・・半年前から店を明け渡せってうるさくて・・・」

「よし分かった。おいノータリンのゴミ共。」

「「「「「ア゛アン!?」」」」」


 多くを聞く必要も無いだろう。結局のところ、誰がどう見たって迷惑な客なのだから。

 奥で絵本を読んでいた子供たちも次々と泣き始めている。小さい子供というものは一度体験した恐怖を結構引き摺ってしまうものだ。もしこいつらのせいでこの書店がトラウマになりでもしたらどう責任を取るのだろうか?

 他にも大人も、お年を召した人も本というこの世界における数少ない娯楽を楽しみにここへ足を運んでいるのだ。よくそんな真似が出来るなと逆に関心してしまうほどだ。


「見るからに本読みに来たわけじゃなさそうだが、何しに来たんだよ?」

「ハァ!?この店ぶんどって賭博場作るために決まってんだろォ!?」

「兄貴は儲けの天才なんやぞ!?こんな店でも広さだけはいっちょ前にあるけんなぁ。兄貴みたいなビッグな男にはちょい物足りんかもしれんけど、まぁ赤点スレスレくらいにはえぇ立地しとるからなぁ!!!」


 よし、半殺しにするか。


「あんたらいい加減にしな!!!何度来てもこの店をやるつもりはないよ!!」

「お、お婆ちゃん!?」

「クリス、あんたも気圧されてんじゃないよ。もっとしゃんとしな!」

「は、はい!」


 と思った矢先、店の奥から店主らしき老婆が現れた。いい意味で迫力のある人だ。年の功なのか、相当肝が据わっている。


「老害が調子乗ってんじゃねぇぞ!!力づくでもここはいただくぜ?たとえ死人が出ても構いやしねぇよ!!!」

「んなっ!?」


 そういう一人の男が右手を前に突き出す。赤色の小さな魔法陣を掌で生成し、魔法を発動する準備に突入する。


「・・・タク、あれ多分炎系の魔法よ。」

「了解。」


 俺は本棚に体をぶつけないよう気を付けながら奴が発動させる前に懐にまで迫る、意表を突かれたそいつはすぐさま掌を俺の方へと向けたがもう遅い。俺は左手でそいつの右手首を思いっきり握り、そしてそのまま捻る。


ボキイィッ!!!


「ぎゃあぁぁあああ!!!!?」

「手ぇ出そうとしたなら、もう口だけじゃ許されねぇな。」

「てっ・・テメェ!!!」

「よーし脳みそ節分豆野郎共、表出ろやぁ・・・」

「セツブンマメ?ってなんだ・・・?」

「今はそこはどうでもいいだろ!!っし!!やってやろうじゃねぇかァ!!!」

「「「「「うおぉぉぉおお!!!!!」」」」」


 


―――数分後


「ただいま。」

「あ、おかえりなさい。」

「え・・・?あいつらは・・・?」

「あ、半殺しにしてゼローグのところに突き出しました。」

「なんと・・・!?」


 クソ野郎相手とは言え逆集団リンチとは・・・俺も悪になったものよ・・・

 とはいえ、この数日間でちょっとイラついていたのでいいストレス解消になった。感謝なぞするわけないが、少しすっきりした。


「兄ちゃんつえぇぇ!!どんなトレーニングしたらそんな強くなれんだよ!!」

「おう。ゼローグとおんなじくらい強い奴と戦い続けて、エンゲージフィールドの体長数キロメートルある化け物の猛攻撃を捌きまくったらこうなれるぞ。」

「ひえっ。」


 俺に話しかけてきた少年はなぜか絶句していた。少年よ。大使を抱いて強くなれ。俺と一緒にアルデンをぶっ飛ば・・・魔神を倒そうじゃないか。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

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