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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第三章 ビギニング・ジャーニー
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#124 踏破

「本当にありがとう!君らは英雄だ!」

「もうグラーケンに怯えることなく過ごせるってワケだ!」

「「「おにーちゃんたち!ありがとう!!!」」」

「お、おう・・・」

 

 いろいろと準備を済ませて出発の手筈を整え、いざ新天地へ・・・のはずだったのだが、最後の最後に洞窟居住民(アンダーグラウンダー)の方々がお見送りに来てくれたのだ。

 それは別にいい。むしろ感謝を述べてくれているので少し嬉しいし、悪い気はしないのだが・・なんかこう・・・出発しづらい!


「これぇ・・お前ら見送りに来たんじゃろうが?引き留めてどうする?」

「いやぁ、はは・・・そんなつもりは無かったんですが・・・」

「あまりにも嬉しくて・・・つい・・・」

「全く・・・すまんなタクよ。許してやってくれ。」

「いやいや、全然大丈夫ですよ。」


 長老からの謝意を受け取った矢先、ムラメとキキョウがこちらに少しだけ近づいてくる。


「では手短に一言だけ・・・皆さん、お元気で!」

「ムラメももっと強くなって、皆さんをお持ちしております!!」

「ムラメちゃんも頑張ってね!」

「キキョウさん!いろいろとお世話になりました!」

「必ずまた帰ってくる!・・・んじゃ、」

「「「行ってきます!!!」」」


 エンゲージフィールド踏破の旅九日目。

 洞窟居住民(アンダーグラウンダー)の世話になり始めたのが四日目だから、ここで五泊したわけだが、やはり住めば都というように、岩しかないこの場所でもかなり居心地がよいものとなっていた。

 美味い湧水、美味い空気、そしてこんな場所でも暖かい人たち。ここに永住したいとまでは思わないが、それでも慣れていないこんな環境であったとしてもそこまで気疲れしなかったのも、この人たちの要因が大きい。

 俺たちがここに来た初日から、毛嫌いすることなく気軽に話しかけてきてくれたし、異世界に来て人とコミュニケーションすることが劇的に増えたためなんとか助かったレベルで。

 ここのムラメ以外のとも暇なとき少しだが遊んでたし、娯楽が一切ないこの洞窟では一番楽しかったと思う。なんだかんだで、ここもかなり気に入っていた。

 だが、これ以上長居するわけにもいかない。魔神復活は近いし、道のりはまだ果てしなく長い。それに、何か変な情が芽生えてしまってもいけない。なんか悪い気もするが、俺はこんなところで天寿を全うするつもりは毛頭ないのだ。

 そうして洞窟居住民(アンダーグラウンダー)に別れを告げ、目指すは新天地、ルクシア王国。

 ダリフから以前水の都と聞いたが、一体どのような 所なのだろうか。知らない場所を点々と進む。いよいよ冒険っぽくなってきた。ここまで洞窟ばっかだったし・・・・・




「そうだった・・・ボス倒したからって転移する魔法陣とか現れる訳じゃなかった・・・」

「何それ?」

「転移魔法陣を作るなんて、超が付くほどの高等技術だよ?今の僕らが作れるわけないじゃないか?」

「はいそこマジレスやめろー。」


 いやほんと、ゲームはよくできている。そうつくづく感じながらも、俺たちは地下洞窟を進んでいた。

 よくよく考えてみたら、一日千キロ移動しようとか言っていた場所なのだ。居住区を出たとて、エンゲージフィールドはおろか、地下洞窟の出口すらまだまだ先である。そろそろ飯と太陽が恋しくなってきた。俺とて引きこもりではないのだ。


「とりあえず、この洞窟を抜けることが最優先だな。もういっそのこと『闘気波動砲(アーツ・キャノン)』で天井吹っ飛ばしちまおうか?」

「洞窟自体が崩壊しかねないからやめなさい。」

「あ・・はい・・・」

「それにしても、先が遠いなぁ・・・」


 そんなことを話している間にも、俺たちの前に立ちはだかる者は存在する。

 先ほどから魔物に遭遇することが少し増えたように感じる。グラーケンが死んで、地上(うえ)でやっていた縄張り争いのようなものがここでも起こっているのだろうか?それにしては、あの魚人の魔物は見当たらない。あいつだけではないだろうが、一体どこに身を潜めていることやら・・・・・


「ま、絶対的強者が消えた途端いきり始めるのは、あんまかっこよくはねぇな・・・!よしお前ら、もうひと頑張りするぞ!」

「もうこんな奴ら、頑張る必要すらないわ!」

「お前もいきり始めてんじゃねぇか!?」


 あとでアリヤさんには割と注意しておこう・・・




 その後問題なく魔物の群れを撃破し、俺たちは再び先に進む。

 ざっと五十体ほどはいたが、あの意味の分からないサーヴァンツの後だ。調子に乗っているわけではないが、少ないとさえ思ってしまった。俺も気をつけねば・・・

 

「さて、かなり移動してきたけど・・・今どのあたりなんだろう・・・?」

「いやいやレリルドさん?方角覚えてたんじゃないの?」

「アレの後だよ?正直ずっと意識するのは無理だよ。」

「まぁそれもそうか・・・」


 そんな状況でも忘れないとしたら、そいつはもうその方角に飼い主の家がある犬である。

 いや待て・・・ということは、今どこに向かっているんだ?てっきりルクシアの方に直行しているものとばかり・・・


「さっきタクが言ってたように、まずは洞窟を抜けない事には始まらない。とにかく今は外に出ることが最優先。」

「ふむふむ。」

「師匠が言ってたんだ。この洞窟は中心が最も深く、外側に行くにつれて底が高くなっていく、いわばお椀のような感じなんだ。だから、とにかく上に進んでいけば・・・」

「いつかは出口に辿り着く・・・と。」


 これは流石にあのダリフ情報でも、信じて進まざるを得ない。それ以外に情報が存在しないのだから。

 事実、彼も昔この洞窟に踏み入り、そして生還したのだ。先人の知恵は、有効活用するしかないだろう。




 そしてその後も、俺たちはどんどん先へと進む。たまに襲ってくる魔物を払いのけ、たまに湧水の近くで休息も取りながら、変わり映えのしない景色をただひたすら上へ。

 そうして俺達がふと感じるのは、洞窟内とは全く違う、新鮮な空気。

 プストルム近くの森と比べたら最悪だが、それでも直接的な風を感じた時に生じるこの心地良い感覚。

 戻って来たのだ。地上へ。一週間以上の時間をかけて。命の危機を乗り越えて。


「太陽が出てるわけじゃないのに、なんだかすごく眩しく感じる・・・!」

「洞窟とはまた違った明るさだね・・・!この風も、なんだかすごく懐かしいよ・・・!」

「っし!あとはウイニングランだ!さっさと抜け出そうぜ!!」


 地上に出てもなお、洞窟内とは違う魔物が襲い掛かってくる。おそらくこちらがこいつらの縄張りに入ったのだろうが、縄張りの外をわざわざ通ってやる義理もない。そんなにむきになって襲ってくるのであれば仕方がない。逆に俺の縄張りにでもしてやろうか?


「今俺は気分がいいんだ。あんま突っかかってくんじゃねぇ!!」


 俺は全力で地面を殴りつけ、前方に地割れを発生させる。そうして生じた亀裂はどんどん拡大していき、その場にいた魔物を次々とその中に落としていく。

 

「・・とうとうデイモンドさんみたいな技も使い始めたよこの人・・・」

「いや、地面殴っただけなんだけど・・・」

「まぁ今に始まったことじゃないし・・・強くなる分には良いんじゃない?味方だし。」

「こいつら人を化け物扱いしやがって・・・ほら行くぞ!」

「「はーい。」」

「なんだそのやる気のない返事はぁ!?」


 強くなった。絆も深まった。新しい人に出会えた。こんな場所でも、たくさんの思い出ができた。

 それは魔神討伐に必要なものではない。でも、どれだけあっても損することは絶対にない。

 ここでした経験を、次に迫ってきているであろう戦いでもフルで活かす。今日見た地獄は、明日以降の確実な糧となるのだ。

 そうしている内に、地面の石はいつの間にか見慣れない砂へと変わり、点々と緑も見え始める。


「・・・これってつまり・・・・・」

「僕たち・・・あのエンゲージフィールドを・・・」

「あぁ・・・!クリアしたんだ・・・!!」

「「・・ぃやったぁああ!!!」」


 エンゲージフィールド踏破の旅は、ついに終わりを迎えた。旅のたった一歩目であったが、波乱万丈という言葉が相応しい十日間を、ついに乗り越えたのだ・・・!


「レル、改めて言うわね・・・ありがとう!」

「・・・うん!」


 二人は達成感からか大いに喜び、俺も静かにそれに浸る。

 さあいざ行かん!水の都、ルクシア王国へ!!!!!






「・・・・・水の都?」

「どちらかと言えば・・・砂漠のオアシスを拡大したような・・・」

「・・・どこ?ここ?」


 どうやら波乱万丈は、これからもまだまだ続くようだ・・・・・

長らく洞窟ばっかでしたが、これでようやく第三章完結です。イカが・・・いかがでしたでしょうか?

もしよろしければ、感想や評価などをしていただけると、今後の励みになりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

さて、これから第四章に突入しますが、変わらず書く側も楽しんで執筆していこうと思います!

体ぶっ壊してお休みすることもあるかもしれませんが、ご容赦いただけると嬉しいです。

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