表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第三章 ビギニング・ジャーニー
121/189

#119 託す未来、時を越えたエールその二十五

 流石のグラーケンも自分の頭の中に触手は入れてこないので、進むのが比較的簡単になってきた・・・というわけにはいかない。

 先ほどよりも遥かに多いサーヴァンツに今もなお飛んできている墨玉。どちらが厄介かと聞かれれば間違いなくこっちである。

 また先ほどのように『闘波散弾射撃(アーツ・ショット)』で殲滅することも考えたのだが、ここは半分屋内のような物。相当広い事には変わりないが、『闘波散弾射撃(アーツ・ショット)』の効果範囲もかなりの物であり、ここで闇雲に撃っては他の三人にも影響しかねない。

 となれば殴るなり斬るなりして強硬突破、ある程度のサーヴァンツは無視して進むのがベストだとは思うのだが、残った奴らは残った奴らで追いかけてくるわ触手伸ばして攻撃してくるわで中々に面倒くさい。

 それに加えてのあの高威力の墨玉。流石にレルのアサルトライフルほどではないが、それでもかなりの連射速度で発射してくる。

 そしてここはもう石の足場ではない。内臓を伝っているため足場も悪く、さらにこいつは自分に墨玉が当たろうとすぐに再生しやがるので、何のためらいもなくどんどん放ってくる。


「二人とも、大丈夫か!?」

「うん!何とかね・・・!」

「ムラメはレルさんがいなかったらとっくに死んでるのです・・・」


 俺は今のところあの最初の一発しかもらっていない。元が液体なので弾くことができないので、なんとか撃ってくるそれを凝視して回避している。

 レルは毎度おなじみ『夜空之宝石(カーメルタザイト)』で壁を形成し、そのまま問題なく進んでおり、ムラメはそれに一緒に隠れている。


「今回の歯さっきの光の玉みたいに爆発しなくてよかったよ・・・!」

「爆発してたら多分第二回フォール・オブ・レリルドだったな。」

「何それ!?」


 おっといけない。そろそろ本格的に頭が回らなくなってきた・・・ここ数日水と魔石しか食ってないから・・・・・しれっと魔石が俺の中で食材扱いになってる・・・!?


「っぇえいっ!もうラストスパートだ!もうちょっと働け俺の頭・・・!」

「まだ心臓までは距離があるのです・・!」

「サーヴァンツも知らない間に更に増えてるね・・・本当にきりがない・・・!」

「・・・ってレルさん!下からも!!」

「えぇ!?」


 ムラメの言葉に俺とレルが下を見てみると、先ほどまで少し下で群れを形成していた触手妖精が、じわじわと上昇してきているではないか。

 それだけならまだいい。いやよくはないが。それだけであればただ単にサーヴァンツが増えるだけであり、すでに意味が分からない程いるそれがちょっと増えたとて、そこまで問題ではないだろう。

 しかしその下からは、更にそれらに加えて伸びてくる八本の黒い触手。


「そんなに大盤振る舞いしなくても・・・」

「まずいかもね・・・墨の玉だけでかなり手一杯なんだけどな・・・」

「・・ッ!ムラメが何とか食い止め・・・っ!?」


 今、下で何やら赤く光った。

 それはサーヴァンツの眼のような信号機に近いキツい赤ではなく、揺らめく炎のような自然と落ち着く輝き。

 その正体は、剣が纏った炎。そして剣そのもの。二振りの炎を自在に操り、付近のサーヴァンツを次々と焼き斬っていく。

 それとは別でもう一か所、そこでも次々と多くのサーヴァンツが動かぬ骸と化していた。

 振り回されているのは、大剣と言われても納得のいく巨大な刀。怪しく輝く刃文は波打つような光を纏い、今もなお敵を斬り続けている。

 三人からすれば、それらを行っているのが誰なのかはすでに明白だった。


「・・・!アリヤ!!」「アリヤさん!!」


 真っ先にその存在に気付いたレルとムラメは、真っ先に彼女に向かって叫ぶ。特に、先ほどまで共に進んでいたムラメに至っては、その頬に涙を零していた。


『本当に・・本当によかったですぅ!!!』

『おいおいアリヤ・・非常に頼もしすぎるんだけど・・・体は大丈夫なのか・・・?』

『こんな時に、私一人寝てなんていられないわ・・・かなり待たせちゃったかしら?』

『・・・・・全く問題ねぇよ!起きたところ悪いけど、闇丸と一緒に下のそいつら食い止めてほしいんだけど、頼めるか?』

『了解!もうみんな最終段階って感じだし、時間稼ぎは私と闇丸に任せて!!』


 何とも頼もしい返事をアリヤから受け取り、俺達はとにかく心臓まで急ぐ。

 もうここまでくれば、サーヴァンツなんてただ数が多いだけの雑魚に過ぎない。俺は一瞬の間先陣を切り、目の前のサーヴァンツを片っ端から殲滅していく。


「うおらぁ!!道を開けやがれ!!!」

 

 顔を潰し、胴を穿ち、触手を()ぐ。そうしてどんどん視界に映るそれらの数を減らしながらも、なかなかのハイペースで一気に駆け上がる。

 肝臓だけでも規格外のグラーケンの心臓はその更に上。下手をしなくとも余裕で五百メートルはありそうな肝臓の真横を直腸を伝いながらどんどん進んでいく。

 未だに撃ってくる墨玉にも目が慣れてきており、結構いい調子である。


「というかあの墨玉、玉切れ起こさねぇのかな・・?相当撃ってきてるけど・・・」

「もしかしたら、他の内臓みたいに墨の内容量も回復できるのかもね。」

「マジで旅の最序盤に登場するボスじゃねぇだろこいつ・・・」


 上を見て、キキョウが今どのあたりにいるのかを確認しながら進んでいるが、絶え間ない攻撃の隙に見なければならないのであまりじっくりとは見ることができない。それでもキキョウがかなり上の方まで進んでいるのは分かる。

 キキョウの事を思うと、少し胸が痛くなる。一応言っておくが、決してそういう意味ではない。

 今彼が必死に登っている理由が、彼の妻の身体が入った結晶を破壊するためであるからだ。

 それを実行するのに、一体どれ程の覚悟が必要なのだろうか。少なくとも、今の俺にキキョウと同じような事、例えば、自分の家族であったりなどが同じような状況になっていたら、それを破壊する勇気など俺には無い。

 いや、今もキキョウは俺の気持ちと同じはずだ。ユカリにそれを言い渡されたときの彼の取り乱し具合は尋常ではなかった。

 それでも彼は進む。一度止まって何やら叫んでいたが、それでも再び進んでいる。一体どうしてそこまで突き進んでいけるのか。それを知るには俺の人生経験はあまりにも浅すぎる。


「あともう少し・・・!俺達も急ぐぞ!」

「タクさん!次はムラメが前のサーヴァンツを請け負うのです!」

「防御は任せて!」


 人生経験は遥かに劣る。それでも、今この場でそんなことは正直どうでもいい。

 ただ最高のタイミングで、なるべく後悔を残さないように戦いを終わらせるのだ。

昨日、PV数が9000を超えておりました。

10000までもう少し。年内にはきつそうですが、これからもよろしくお願いいたします。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

いいね、ブックマーク、評価、感想等、お待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ