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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第三章 ビギニング・ジャーニー
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#112 託す未来、時を越えたエールその十八

この回が投稿されている前日に、思いっっっきりタイトルずれてることに気付いたので修正いたしました。

この場にて謝罪を・・・

 砲身自体は以前の物に少し手を加えた程度のため、元の電磁砲本来の質感を有しているが、それの真下に取り付けられている装置に関しては、粗雑な板金を組み合わせて作り上げたような代物であった。

 それはレリルドなりに試行錯誤を重ね改良、改造されたものであり、これまで彼が生成したのは試作機数回程度。正直に言ってまだまだ本当の意味での完成形には程遠いものである。しかし、彼が考えている威力は出せないものの、弾のサイズは本来より大きい上に、その速度は本物のそれと同等。時間を気にしないのであれば実戦でも十分に使えるレベルなのである。




 それはおよそ二年前。彼がいつものようにその本を読み漁っていた時の事。

 彼は最初の一ページ目からゆっくりと読み、記されてある武器の知識を最大限深めたのちに次のページをめくるというスタイルで仕組みを覚え、趣味と学習を両立させることに成功していた。

 だがそれ故に、その分厚すぎる本を読破することは二年たった現在でもできていない。しかしそれも考え方を変えれば、彼の楽しみは今もなお続いている、ということだ。

 そんなわけでその日もページを一枚めくった。そしてそこに記されていたのは、目を見開かざるを得ない代物だった。


「!?これは・・・大砲?いや、何か違う・・・!」


 それは彼の興味を駆り立て、レリルドはもちろんその日はめくったページを齧りつくように眺めていたのだった。


「なになに・・・レールガン・・弾を電磁気力を用いて・・・磁気ってのは磁石の力のことだろうけど・・・電っていうのは何だ?」


 レリルドがそのように日本語を、ましてや漢字を読めるのには理由がある。それはスキル。

 彼はタクも所有しているスキル『理解者』を持っている。

 それは本来神が彼に与えた特殊能力のようなものなのだが、『進化之石板(アドバン・スレート)』に含まれる『スキル詳細』など持っているはずもないので、それの存在に関しては今のレリルドも知らない。

 『理解者』の能力は、その名の通り所有者の理解能力の向上。

 例を挙げると、相手の話の意味を間違えることがなかったり、難しい文章でもしっかりと意味が分かったりなど。

 それに加え、自分が見たあらゆるものの構造を記憶しておけること、彼の持つ『世界の銃の仕組み全図』の内容を彼が理解できているのも、全てこのスキルのおかげなのだ。

 更に、目に映る、耳に入る、自分の話す言語の自動翻訳。

 この世界の人間のほとんどが使用しているアルデラ語。それらをタクが自国の日本語として理解できている理由がまさにこれだ。

 どのような知らない言語であろうと、それが意味のある人間の言葉であれば何の違和感もなく内容を理解でき、逆に自分が相手に伝わらない言語で話していたとしても自分が知らぬ間に翻訳されているので相手にもしっかり伝わる。異世界から来たタクにとっては一番重要なスキルともいえよう。


「・・・とにかく、とんでもない武器・・いや、兵器だ・・・!!構造も複雑だし、再現するのはかなり難しそうだ・・・!でも・・・音速の何倍も速い弾を撃ち出す、って書いてあるし・・・き、気になりすぎる・・・!」


 当時齢十五の少年の好奇心は、本を読んだだけでは抑えられなかった。レリルドはすぐさま試行錯誤を何日も重ね、当時はそのことばかりを考えていた。


「おはようレル。今日の討伐クエストだけど・・・レル?」

「え?あっ、ごめん!おはようアリヤ!」


 本業をおろそかにすることは何とか回避できたものの、いつもよりも身が入らなかったのは確かだ。しかしそれでも彼が止まることは無い。

 そうして半年の時を経て、ついに試作第一号の生成に成功した。

 生成開始から完成にかかった時間は約丸一日。フリーの日を全て使いつぶして作り上げることができたのであった。

 

「やった・・・!やっとできた・・・!」

 

 レリルドは思わず感嘆の声を漏らす。無理もない。本の字面を見るだけでロマンしかなかったそれを、彼は半年費やしてとうとう完成させたのだから。


「もし僕の考えが正しいのなら・・・これらを使えば・・・!」


 そう一人で呟きながら、レリルドはその場の辺りを見回す。

 彼が今いる場所は、ライルブーム付近に位置する雷岩魔の洞窟。雷属性の魔石の宝庫。辺り一帯に輝く黄色い光は、潤沢な魔石で溢れていることを教えてくれる。

 レリルドはこの試作第一号を生成する前にも、一部の部品のみで試したことがあった。

 ラザール通りの路地裏にある小さな市場であらゆる属性の魔石を買い込み、ひたすら自分以外誰もいない自宅で試行錯誤を重ねた。

 そうしてたどり着いた答えこそ、雷属性。

 本体に組み込まれた二本のレールに魔石を砕いてエネルギーを流すと、その瞬間に超強力な磁界を発生させ、生成した金属の小さな塊を凄まじい速さで飛ばすことに成功したのだ。

 そして、この試作第一号には、一個でも十分な雷属性の魔石を五個使用する。これを動かすのには相当なエネルギーが必要となり、それをまかなうためには五個でも最低個数なのだ。


「よし・・・発射――」


ビビビビビビビドゥォォォォォオオオオオオオン!!!!!!!

  

 刹那、それは放たれた。音速を遥かに凌駕する速度で。

 初速の時点でそれに達している弾丸は、目の前にあった岩石の壁をいとも簡単に貫き、先の見えない横穴が完成した。


「・・・・・・・」


 その後、レリルドの中では様々な感情が渦巻く。その目では追えないスピードへの驚愕、その威力への恐怖、やり遂げた、作り上げることに成功した達成感。

 思わず言葉を失い、ただその場に呆然と立ちつくている時間がしばらく続いた。開いた穴をじっと見つめ、最後には何も考えられなくなってしまった。


 駄目だ。これは強すぎる。


 もしもこれが人に当たったならば、考えるだけでもゾッとする。

 その肉体は確実に吹き飛び、きっと生存確率はゼロに等しいのだろう。

 そうして、レリルドは決意した。極限まで追い詰められるような状況でない限り、これを絶対に人に対して使わないと。そして次にこれを使うのは、仲間のためのいざというときだと。




「さぁ、道を開けてもらうよ!!」


 レリルドはレールガンを完成させるやいなや、サーヴァンツの疑似天井に向けてそう言い放った。そして自分のコートからとある物を取り出す。


「念のため、タクから貰っておいて正解だったようだね・・・!」


 それはもちろん魔石。雷岩魔の洞窟の魔石をほとんど取りつくしたタクが『アイテムストレージ』に溜めている雷属性、そして数日前にこの地下洞窟で手に入れた闇属性の魔石。その二つの保有量はまさに無尽蔵。

 もしかすれば使う瞬間が訪れると思ったレリルドは、事前にタクから魔石を受け取っていたのだ。

 そうして彼は目の前に生み出した装置の蓋を開け、中に魔石を放り込む。その数十個。かつて作った試作第一号に用いた量の倍である。

 投下後蓋を閉め、その下についている装置右側のレバーを力強く下げる。下げるたびに魔石の砕ける音が装置から響き渡り、エネルギーが充填されていることが分かる。

 これにて準備は完了。レリルドはとうとう天に向け、その雷の一矢を放つ。


「天を貫け!!!インドラ!!!!!」


ビ・・ビ・・ビ・ビ・ビビビビビビドゥォゴォォォォオオオオオオン!!!!!!!!


 左側のレバーを下げた瞬間、インドラにセットされていた弾丸は、光の矢となって疑似天井を一瞬にも満たない速度で穿つ。

 それは疑似天井接触付近のサーヴァンツの身体を否応なしに消し飛ばし、突破不可能に近いそれに大穴を開けた。

試作第一号の件の後、レリルドはそのことがダリフにばれ、こっぴどく叱られましたとさ。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

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