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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第三章 ビギニング・ジャーニー
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#103 託す未来、時を越えたエールその九

「ッ・・・これは・・・?」 


 それは、俺の『闘波散弾射撃(アーツ・ショット)』のような光の玉。しかし、俺のそれとはまったく違う。


『塊の一つだけでも、魔力量、質が明らかに高すぎる・・・!?』

『・・・もし一発でも被弾すれば・・・お陀仏ね・・・』


 全身から放たれる光の玉は、白熱電球並みの光を纏いながら俺達へと向かってくる。

 ピンポン玉サイズの『闘波散弾射撃(アーツ・ショット)』に比べてそれは、もし中に入れるのであれば成人男性が余裕で二人は入れそうなサイズ。


『ふっ!・・くっ・・・!全く油断できません!』


 無数に広がる玉には間に隙間があり、回避はギリギリ何とかなるが、それでも全く気が抜けない程の物量。


ドガァァァァン!!!!!


「やべぇな・・・玉一個であれかよ・・・!?」


 その時、床に接触した瞬間光の玉が弾け、高威力の爆発を引き起こした。自分の技ではあるが、俺の中の『闘波散弾射撃(アーツ・ショット)』のイメージが強すぎて、てっきりあれは光をそのまま凝縮したとんでもない熱量を持った玉で、触れた者を全て焼き消すものかと思っていたが、光というよりかは、衝撃が加わった瞬間に爆発するニトログリセリンのような物のようだ。とにかく、アリヤの言う通り、あれに一回でも当たれば間違いなく終わりだということは明らかであった。


『チィッ・・・集中力がどんどん削られますね・・・!』 


 速度はそこまでといった印象。故に見極めさえミスらなければ問題はない。

 

「『夜空之(カーメルタザ)・・・ぐあぁっ!?」

「レルッ・・・!?」


 だがそれは否応なしに空間を破壊していき、崩壊こそしなかったものの、かなりの被害を受けた。

 床は抉られて凸凹。壁に開いた穴は数知れず。レルの『夜空之宝石(カーメルタザイト)』でも玉は防ぎきれず、レルは爆風で大きく吹っ飛ばされた。

 怪我は二本目のポーションを開けて瞬時に回復したものの、中々に危なかった。

 そうして、さながら弾幕シューティングゲームを彷彿とさせるグラーケンによる魔法の初披露は終わりを迎え、何度目かの脅威はひとまず収まる。


『アリヤ!ムラメ!一応玉は止まったが、そのまま上がれるか!?』

『・・・さっきのこいつの魔法で、たくさんの足場がやられた・・・!ムラメちゃんと私が今この場所にいるのが奇跡なほどよ・・・!』

『・・・・・やっぱか・・・』


 あれだけ隙があるようでない爆発。正直玉同士で連鎖反応を起こさなかった時点で奇跡と言ってもいいくらいだが、あれだけ派手をやったのだ。石の足場くらい余裕で破壊するだろう。

 しかし考えたくは無かった。運よく残ってくれればいいのになんて考えていたが、そう甘くなかった。たまに接触したものは平等に崩れ、その原型を変貌させる。触手だけでも相当厄介であったグラーケンも、とうとうその本領を発揮し始めているということであろうか。 

 どうする、考えろ。回れ俺の思考回路!

 二人は俺のように『身体強化』で地形フル無視で行動できるわけではない。二人とも素でも相当身体能力が高いが、届くのかどうか分からない離れた足場に向かって迷わず飛ぶことなど誰もしない。

 どんな幸運か分からないが、まだ目指すべき石の柱は生き残っており、他の足場も全てがやられたわけではない。なので、足場をどうにかして増やす、もしくは強化で次の足場に確実に届く跳躍力を二人に与えるか。だが、今現在二人はすでにキキョウの『強化火(エンハンス・)力設定(レギュレーション)』の恩恵を受けている。これ以上の強化となれば・・・いや待てよ?


『・・・・・キキョウさん。俺にかけてもらっている分の強化量を、二人に回してやってください。』

『!?・・しかし・・それではタクさんが・・・』

『俺は全くもって問題ありません。物理じゃ俺は殺されませんよ。』

『・・・分かりました。タクさんの分を二人に・・・』

『ちょっと待ってください!』


 俺の提案を受けたキキョウを、レルがすぐさま制止する。その目には、何やら決意が宿っているようにも見えた。


『・・・僕の分もお願いします。』

「・・・・・って待て待て!!」


 さてはこいつ、いのちだいじにの意味を全く理解していないな!?なんなんだ!?死に急ぎ野郎なのか!?


「俺は『身体強化』あるからともかく・・・お前は生身なんだぞ!?触手攻撃でも一発喰らえばただでは済まないんだ、分かってんのか!?」

「分かってるさ。タク。僕は君の・・英雄の雛の眷属として共に来た。でも、ただお荷物になるためについてきたわけじゃないんだよ。僕だって戦える。君の足手纏いになんてなりはしない!」


 その顔は真剣そのものであり、その眼差しからは、一切の迷いもない覚悟が伝わってくる。なんというか、俺はこういうのに弱い。ここできっぱり駄目だと言えない辺り、俺もまだまだ甘いのかもしれない。だがそれ以上に、俺がここまで頼りにしている人間も、ほとんどいないことも事実なのだ。


「・・・無茶すんなよ?」

「はは、もうすでにやってるだろ?僕も、他の三人も、そして君も。」

「ハハ・・ったく、俺は大丈夫なんだって・・・んじゃ、気張るか!!」

「うん!!」


 俺とレルは小さく笑いながらも構え、また来るであろう連撃へと備える。

 グラーケンは展開していた触手もすでに納めており、攻撃の準備を進めているようだ。もういつ来てもおかしくない。

 俺とレルの意思を読んだキキョウは、『強化火(エンハンス・)力設定(レギュレーション)』の調節に思考をシフトする。


『それでは二人とも・・・覚悟はよろしいですね?』

『おう!』『はい!』

『では・・・アリヤさん、ムラメ。ここからは時間との勝負です。もう一切余裕はないと思ってください。二人が時間を稼いでくれている間に、一気に駆け上がってください。』

『『はい!!』』

『いきますよ・・・総員、作戦を強制的に次のフェーズへと移行します!二人は速やかに上昇開始!レリルドさんは余裕ができ次第再び壁を登り、二人の援護を!その際にまた調整してあなたももう一度強化します!タクさんは当分の間そのまま触手を引き付けてください!タクさんの言う通りであれば、三人が頂上まで辿り着き、グラーケンの肝臓を叩けば、奴はエネルギー貯蔵庫を失い、そのまま弱体化するはずです。その隙を突いて私たちも上昇、グラーケンを一気に叩きます!!!行動開始!!!』

『『『『了解!!!』』』』


 さぁ、第二ラウンド開始だ!!!

今更ですが、グラーケン戦はこんな感じで、一話一話の文字数はちょっと少な目で、サクサク(?)進めていきたいと思っています。それでももうちょっと続きます。


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