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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第三章 ビギニング・ジャーニー
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#101 託す未来、時を越えたエールその七

 まさか、現実で壁ダッシュを遂行する日が来るとは思わなかった。

 キキョウが時間を稼いでくれている間に、俺は全速力でレルの元へと向かう。洞窟自体が明るいので相当小っちゃいが肉眼で何とかレルを捉えることに成功・・・気絶してません?


「待ってろよ・・!嫌でも叩き起こしてやる!!」


 俺は自分でなんとか制御できるギリギリの『身体強化』の出力。五十パーセントにまで引き上げ、地を蹴り壁を蹴り、たまにイカを蹴りながら進むは最短距離。実際に最短距離かどうかは、正直分からないが、まぁ間に合えばなんでもいい。


『タク!触手が何本かそっちに行きやがったぞ!!』

「マジすか・・!っていうかまた口調変わってるし!?」


 雰囲気が急変したキキョウからの緊急連絡を受け、俺は辺りを見渡す。確かに後ろからさっきまで嫌というほど見ていた触手がこちらを追いかけてきている。数は三本。まだ余裕はあるか?いや、三本でも極めて邪魔でしかない。どうにかして食い止めたいが、何をどうしようか・・・


「とりあえず足止めぇっ・・・『闘波散弾射撃(アーツ・ショット)』!!」


 俺は空中で無理矢理体の方向を変え、グラーケンの三本の触手に手を構える。

 体の上下が反転しており、慣れない態勢に三半規管が悲鳴を上げているが、それに関しては気合いで黙らせる。

 指先に闘気を集約させ、生成した合計十の玉を乱雑に発射。そして、触手はすでに射程圏内に収まっている。

 以前、最大出力の『闘気波動砲(アーツ・キャノン)』を放った際は、奴の触手を一本丸々消滅させたが、果たして今回はどうなることやら。

 それほどまでとはいかないが、それでも時間稼ぎくらいにはなってもらいたいものだ・・・!


「『全闘気解放(フル・バースト)』ォォォ!!!」


 十個の玉は一気に弾けるように分裂を始め、光の塊は触手を次々と飲み込み、消滅させていく。もっとも、それでもすぐに再生しやがるのだが。


「だがな・・・意外とグラーケン(おまえ)への効果は絶大だったかもなぁ!」


 なんせこの光の玉。()()()()()()()()

 分裂を終えた玉はしばらくその場で効果が消えることなくとどまり続け、その間永続的に触手の肉を焼き続ける。

 向こうがいくら再生したとて、その瞬間に再び焼かれる。その一時的な無限ループに、グラーケンはまんまと嵌まってくれた。

 始めは多少の足止めになればいいとしか考えていなかったが、自分でもびっくりするほどに効果アリだった。

 これを予測して放ったのならばどんなにかっこよかったか・・・まぁそれは一旦置いておいて・・・とにかく、十分な時間が稼げた。

 レルとの距離は残りおよそ五百メートル。レルが今落ちている辺りは高さ三百メートルくらい。普通にまずい。


「間に合え間に合え間に合え・・・!」


 間に合え!走れ!足を限界まで動かせ!

 走れ!黒い風のように!沈む太陽の十倍の速さで!待ってろレリヌンティウスぅぅぅ!!!


「っとぉぉぉおおお!!!っぶねぇ・・ギリギリセーフ・・・!!!」

『ナイスッ!!』

『タクさん!最高です!!』


 俺はこれでもかというほどの自分でも見事としか言いようがないスライディングでレルと地面の間に割り込み、なんとか両腕でレルの身体をキャッチする。

 高度数百、数千の高さから落ちてきたレルを受け止めた衝撃はとんでもないものであった。下手をすればこちらまで潰されかねないくらいに。

 キャッチするその瞬間、俺は『身体強化』を一気に百パーセントまで引き上げたのだが、それでも伝わってくる衝撃。生身では絶対に受け止めることは出来なかっただろう。


「おいレル起きろ!!戦いは終わってねぇぞ!!!」

「・・・ん・・んうぅ・・・っ!?僕、生きて・・・っタク!?」

「怪我は無いか!?立てるか!?」

「うん・・・グゥッ・・!」


 とりあえず、意識はすぐに戻った。だがしかし、受け止めた衝撃はレルにも伝わっていたようで、すぐに起き上がることは出来ない様子だった。


「えーっとなんかあったような気が・・・あっ、これか!!」

「それは・・ポーション・・・?」


 ここまで一切出番のなかったこの代物。ラザール通りにて(首相の金で)購入した最高級ポーションだ。

 大抵のものは治ると聞いたが、その効能は・・・

 レルは俺が渡した小瓶の中身を一気に飲み干すと、なんと数秒で普通に立ち上がった。なんというか、徹夜でイベランして死にかけになったところでエナドリを飲んだ時みたいな・・・例えが悪いか・・・


「・・・前に一度飲んだことあったけど・・・やっぱり凄い・・あの店のポーション・・!」

「流石は最高級だな。」

「あっ!いうのが遅れたけど・・タク、ありがとう。」

「おう!でもあんまりここぞってとき以外無茶すんなよ!」


 なんかこう、ここまで素直に感謝されると照れくさくもなるが、そんなことを言っている場合ではない。

 さっき放った『闘気波動砲(アーツ・キャノン)』はとっくに消滅してるし、いつまでもキキョウに任せておくわけにはいかない。今だってあそこで一人触手を食い止めてくれて・・・って・・・


『キキョウさんフォルムチェンジしてるぅ!?』


 この数分間で一体脳にどれだけの情報が送られたのだろうか。そろそろパンクしそうかもしれない。

 なんというか、人型の魔物みたいな。人間と魔物のハーフみたいな。キキョウさん、あなた戦闘では足元にも及ばないって言ってましたけど、普通に触手削りまくってるじゃないですか!?

 今眼前では、文字通り触手が削られている。まるで、おろし金ですりおろされる山葵の如く・・・俺やっぱり例えるの苦手かもしれない・・・

 とにかく、明らかに先ほどまでのキキョウと・・いや、人間と違う目、体の色、纏うオーラ。全てが人間というよりかは魔物に近い雰囲気を醸し出している。

 細かく動く目は、同行が十字の形に変わっており、キキョウが見ている世界がどのようなものなのかは想像がつかないが、おそらく通常時よりも遥かに見えているのだろう。

 体は金属光沢のような艶があり、洞窟内の光をわずかに反射させている。

 そして何よりも驚くべきは、その身体能力。もはやキキョウがレルを助けに行っても間に合ったんじゃないかと思えるほどの動き。謙遜こそしていたものの、俺達と十分に肩を並べられるほどの強さを披露している。


『キキョウさん・・その姿は!?』

『説明は後だ!この状態はそう長くは続かねェ!タク、レリルド!俺は一旦元に戻る!交代だ!!』

『『了解!』』

 

 俺とレルは急遽触手を受け持ち、キキョウは後方に下がって一息つく。

 七本の触手を、俺は再び『身体強化』五十パーセントで、レルは『夜空之宝石(カーメルタザイト)』で対応。後退し体制を立て直すキキョウの時間稼ぎを行った。


「・・・『絶魔人化デモン・ノイド』、『一時終了(スリープモード)』。」


 キキョウの身体は、みるみる元の色を取り戻し、眼球も人間のそれへと戻っていく。いつものキキョウへと戻ったが、その瞬間にキキョウは激しい息切れを起こす。よほどあの形態は体に負担がかかるのだろう。タクとレリルドが触手を食い止めている間に深呼吸し息を整えると、すぐさま彼は復帰する。


『皆さん、ありがとうございました!!『強化火(エンハンス・)力設定(レギュレーション)』を再発動します!!お願いしますよ!!!』

『『『『はい!!!』』』』

ちなみに、もしもキキョウがレルを助けに行ったとしても、

・触手に邪魔される。

・牽制できる技を持っていない。

・そもそもタクのスピードに劣っている。

等の理由でおそらく間に合いません。


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もうよろしければなんて・・・多分言いますけど・・とにかく!お待ちしてます!

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