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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第三章 ビギニング・ジャーニー
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#100 託す未来、時を越えたエールその六

さぁ。作者の深夜テンションで去年の五月に第一話が投稿されたこの異世界武闘譚。

とうとう本編が100話突破です!!!

これからもまだまだ続くので、どうかよろしくお願いいたします!!!

「ははっ!親方、空からレリルドがってかぁ!?」


 ここでまさかの緊急事態。しかもかなり落下位置が悪すぎる。劣るならせめて近くに落ちてきてほしかったというのは流石にちょっと酷いだろうか。

 レルの事だ。足を踏み外して落下という間抜けな落ち方ではないだろうが、中々タイミングが悪くないですかね!?

 

「まずはこっから抜け出す・・・!」


 状況を物凄く簡潔に説明しよう。触手七本による絶え間ない猛攻撃を捌いている。以上。

 まぁ滅茶苦茶簡単に述べればそんな感じだが、それに加えキキョウの護衛役も務めているため、今ここを離れれば、彼に触手が向かってしまう。そうなればかなりまずい。


『皆さん・・・申し訳ありませんが、『強化火(エンハンス・)力設定(レギュレーション)』を一時的に解きます・・・タクさん!この場は私が受け持ちます!一刻も早くレリルドさんの救援に!』

『・・・信じますよ?』

『無論ッ!!』


 考えている時間はない。こうしてやり取りしている間にも、レリルドの身体は地へと向かっている。向こうがパニック状態なのか、『思念共有』でも連絡が取れないし、一刻も早く向かわなければならない。


『じゃあ・・・お願いします!!!』

「『身体強化』百パーセントォ!!!はぁぁぁああああ!!!!!」


 俺は自分の闘気を一気に解き放つ。それにより俺を中心に発生した衝撃波は、グラーケンの極太の触手すらも一時的に大きく弾き飛ばす。

 その隙に、そのまま『身体強化』百パーセントで地面を思いっきり蹴りその場を脱出することに成功する。




「・・・肉弾戦を行うのは・・・あの日以来かもしれないですね・・・!」


 タクの離脱後、その場に一人残ったキキョウは、七年前のあの日を思い出しながらも腹を括る。

 あの日何も出来なかったことを、何も出来なかった自分の姿をどれだけ悔やんできたことか。それを今変える。今日、七年止まっていたグラーケンとの因縁が、とうとうキキョウの中で動き始めたのだ。

 この瞬間、これまでの全てを越える。


「彼のようにずっと捌き続けるのは無理だが・・・弱者は弱者なりに・・・ 死ぬ気で抗わせてもらおうか・・・!」


 キキョウはこの瞬間を、突然のアクシデントの穴埋めにさえも命を懸ける。彼をそこまでさせるのは、彼の揺るぎない覚悟。そして、最愛の妻を奪われた怒り、恨みである。


「『身体能力上昇』・・『持久力超回復(スタミナリカバリィ)』・・『幻覚付与』・・・更にぃっ!『強制視力向上』、『魔硬質化(リジッド・マジック)』、『魔物(モンスター・)命糧(プレデター)』、それに加え上位精霊の加護オールベット!!!真命統合(ハイ・ユニファイド)!!『絶魔人化(デモン・ノイド)』!!」


 上位精霊の加護により強化された体だからこそ耐えられる自身へと付与する強化魔法。それはキキョウを全く違う存在に変貌させる。

 体格はそのままに、体の皮膚、その表面が魔力により硬化する。日光を浴びないため白寄りだった肌色には灰色が混ざり、うっすらと金属光沢のようなものも発現する。

 眼球の瞳孔は小さくなり、その代わりに十字の四方向に伸びていく。

 その後、キキョウの身体全体に高密度の魔力が纏わりつく。この魔力は、今までキキョウが屠って来た魔物達のもの。魔力炉とは別で日々の戦闘でキキョウが貯めていたそれを全開放。放つ雰囲気は、もはや人のそれではない。

 キキョウは片手で眼鏡の両端を持ち、そのまま位置を直す。


「フゥゥ・・・さァ・・どこまで持つか・・・試してみようじゃねェかァ!!!」


 キキョウはタクとの特訓の際のように、まるで人格が変わったかのような言動で変化後の第一声を上げると、口角を上げながら触手へと歩み寄る。

 キキョウは分かっている。いや、分かっていなくともある程度予想できる。この形態は確実に燃費が悪く、そう長くは持たない。

 制限時間付きの超絶パワーアップ。上位精霊の力も全てこの『絶魔人化(デモン・ノイド)』に充てており、いくら洞窟居住民(アンダーグラウンダー)となったキキョウの身体でも、肉体限界を軽く超えた強制的な能力上昇にずっと耐えられるわけではない。

 そして、とうとう一時的に魔人となったキキョウに、七本の触手が襲い掛かる。


「はぁぁぁあああああああッ!!!!!」


 一直線に伸びるような咆哮を上げながら、キキョウと触手が衝突・・・・・彼の渾身の拳は、宿敵グラーケンの触手を穿ち、風穴を開けた。

 確実な手応え、七年前勝てるわけがないとさえ感じたグラーケンに自分の攻撃が通用しているという事実を噛みしめ、そのままタクが戻ってくるまでの時間稼ぎを続ける。


「グラーケン・・・鬼ごっこと行こうかァ!!!」


 キキョウは突然触手に背を向け、ジグザグに走り始める。それを逃がすまいと追いかけるグラーケンの触手はうねり、彼を追いかける。

 アクロバティックな動きでその悉くを躱すキキョウ。捉えきれない獲物に苛立ちを覚えたグラーケンは、触手を自在に操り四方八方からキキョウを捉えようと試みるも、それらさえも皮一枚で回避される。

 

「そらよッ!!とォ!!!」


ギュィィィイイガァァァアア!!!!!


 七本すべてを駆使して捉える寸前まで囲んだものの、キキョウが()()()()放った連撃により触手はどんどん破壊されていくのみである。




 グラーケンは、魔物でありながらもその記憶能力は凄まじく、七年前、己の住処に突然現れた部外者のことを今でも覚えている。

 力、精神、全てにおいて弱い人の男、力なき雌の赤子、そして()()()

 グラーケンがそう記憶していた三人のうち二人は、今自分の目の前に立ちはだかり、この世界に指で、いや、触手で数えきれるほどしか存在しない自分の『敵』となろうとしていた。

 片や命を削りながらも、おそらく一時的だろうが自分の猛攻を一人で抑える。あの時の男がだ。片や赤ん坊だった女は、人間側の戦力の一部となり、未だその潜在能力を隠している。

 近頃住処に訪れた愚かな三匹の人間。この洞窟に叩き落としてやったものの、こちらも未だに生き永らえ、こうして今自分へと果敢に挑み続けている。特にあの男。先ほどまでこの自分の触手七本をを、何の制約もなさそうな様子で一人で捌いていたあの異質な人間。

 他とは明らかに違う何かを有し、そしてそれは成長段階のおそらくは序盤。卵から羽化したばかりの雛のような力で戦っている。それでいてあの力量。危険因子であることはすでにグラーケンの中で確定していた。

 この世界の南の頂点に君臨する王の座を揺るがす者は、相手が何者であろうとその息の根を止める。

 その者が息絶えるまで掴み、決して離さない。王に相応しいこの肉体とその執着でこの王座に君臨したその力の片鱗を、この愚かなる人間どもにお見せしよう。

最後の文章ですが、グラーケン自体がそう思っているというわけではなく、『もしもグラーケンがその状況で思考しているのならば、このように考えている。』という感じです。

なんか分かりづらくてすみません・・・文章力ぅ・・・

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