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NOISE  作者: SELUM
Book 1 – 第1巻
47/69

Op.1-37 – Other View (2nd movement)

明里は光の行動を読んでPCルームへ!

 いなくなった光を探すのに私と母、そして光の母・舞は血眼になって彼女を探し回った。母たちは光が誰か怪しい人に連れ去られたんじゃないかとか、何か事件に巻き込まれたんじゃないかと気が気でない形相だった。


 しかし、私は光の父の姿が見えないことから、そのことについて舞さんに尋ねるとやはり、急用でいなくなったのだと聞き、光は恐らくそれでいなくなったのではないかと母たちに告げた。


 光は交流センターのプラネタリウムがお気に入りだったが、そこへ入るには小学生以下は保護者同伴のため、候補から消し、図書館へと向かった。


 図書館は4階・5階にあり、まず明里たちは音楽書籍コーナーへと向かった。


「ちょっと明里、離れんで」


 母は先に走ろうとした私の手を引き、光のようにいなくならないように注意する。私は早く光を探したいのにという思いを堪えながら母の手を握る。「ちょっと痛い明里」と言いながらも母からしっかりと握り返されたことを私は未だに覚えている。

 

 いつもは絶対に力を入れることがない母だったが、その時の彼女の手が僅かに震えていたことに気付いた私はそれに大人しく従ったのだ。


 音楽書籍コーナーに光の姿は見当たらなかった。こうなってくるといよいよ母親たちは青ざめてくる。

 音楽があんだけ好きな子がここにいないとなるともう、何か事件に巻き込まれてしまったのかもしれない。警備員や受付の人たちにも協力を頼んだが、見つかったという知らせはまだ無い。


「(いや、光は今ピアノなんか弾きたい気分なんかじゃないに決まっとる)」

 

 私は光の感情になりきった。


 光ならどう感じる? 光ならどう行動する?


 自分の演奏を1番に聴かせたかった父がいないとなると最早ピアノを弾くなんて気は失せてしまっているに決まってる。そうなるといじけて1人になれる場所にいるはず。


「(1人になれるところ、1人になれるところ……)」


 交流センターには様々な施設があるが大体は開けた大きい場所が多い。そうなると騒がしくて1人になれない。


「あっ!」


 私は思わず大きな声を出す。母たちは驚き我に返って私の方を見る。


「どうしたん?」

「上の階のPCルームは? あそこ調べ物するところで個室のとこあるし、そこおるかも」


 図書館エリアの上階、交流センターの5階にはPCルームが用意され、自由に使用することが許されている。

 勿論、常識的な時間が経ったら別の人に交代する必要があるが、そもそもここの図書館エリアは私立図書館や県立図書館のような広さはなく、何かの研究や自習に訪れる人たちの第一候補になることはまずない。


 したがって、通常、人が多く混み合うことがないため、PCルームは実質的に使い放題となる。今の光にとっては打って付けの場所だろう、そう私は考え、母たちを誘導する。


「明里、何言いよると?」

「いいから来て!」


 疑問に思っている母を無理やり引っ張り、5階へと向かわせる。


 階段を上り、貸し出しカウンターを通り過ぎて自然に関するコーナーの本棚を右に曲がって奥へ行くとそれまで整然と佇んでいた本棚群の姿は消え、いくつかの個室が現れ、すりガラス作りの扉が並ぶ。


 外からだと辛うじて利用者の姿が見える程度で、よく目を凝らさないと分からない。それでも利用者は少なく、埋まっているのは3部屋のみ。

 その中で1番奥にある部屋の利用者の影は明らかに小さく、私はすぐに光であると確信してそっと扉を開けた。


「光おった」


 PCの前に伏せていた光は私の言葉に一瞬ビクついた後、振り向いて私たちの方ほ向いた。目を真っ赤にして涙を溢れさせ、頰が紅潮したその様子は父がいなくなったことのショックが大きいことを示していた。


 光の母はすぐに光の方へと駆け寄り抱きしめた。光は怒られると思ったのか目を瞑ったのだが、その予想外の抱擁に動揺しているのが見て取れた。


「本当心配させないで」


 舞はそう言うと光を立たせてその場を離れさせる。光の嗚咽が混じる中、私たち4人は図書館エリアを抜け、ロビーの方へと向かった。


「なんでいなくなったの」


 舞は光にそう尋ね、その言葉で悲しい気持ちをまた思い出してしまったのかまた泣き始めた。


「お父さんすぐ戻るって言っとったのに来とらん!」


 汗だくになっていた私の父と合流して一通り説明し、折本や他のスタッフたちにことの顛末を伝えると私たち5人はロビーの窓側にある少し大きめなソファに向かい合って腰掛けた。


「光、まず言うことは?」


 向かい側にいる私たちの方を見て「ごめんなさい」と消え入りそうな子で謝罪するのだった。

お読み頂きありがとうございます!

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