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NOISE  作者: SELUM
Book 1 – 第1巻
43/69

Op.1-35 – Few years ago (2nd movement)

沙耶が見た光の過去……!

「光ちゃんはまだ見つからないの!?」

「本当、プログラムのちょっと前まではいたんですけど……。今はどこにも見当たらないんです!」


 折本の生徒によるピアノ発表会が終盤に差し掛かってきた時、福岡県民交流センター小ホールの外にあるロビーで受付の女性数名が慌ただしく誰かを探している。


 沙耶は兄の演奏が終わり、それまで長いこと順番を待たされていたこともあって、母親である智花(ともか)と共にロビーで休憩していた。


「光ちゃんって折本先生が言ってた子かいな?」


 隣の母が小さく呟く。発表会のある3日前にあったレッスンで裕一郎と智花は折本から光の話を聞いていた。

 ちょくちょくピアノがとんでもなく上手い女の子がいるという噂を聞いており、その噂の子が今回からはプログラムを終盤に持ってきて且つ、即興演奏者にも選んだので見てみると良いと言われ、2人は密かに楽しみにしていたのである。


 光のプログラムは裕一郎の2つ前。光はその順番が回る直前に姿をくらまし、舞、明里、祐美、ハヤマ関係者や警備員が血眼になって探している。


 仕方ないので光のプログラムを一旦飛ばしているのだが、この時、最後の演奏者に順番が回る直前となっていた。


「(光ちゃんどこ行っちゃったの……)」


 折本は講師である都合上、会場を離れられず光はどこに行ってしまったのか、もしかして何か事件に巻き込まれたのではないかと落ち着かない様子で生徒たちの演奏を見守る。


#####


「大丈夫かしら。先生の話やと沙耶と同い年って話やったけど」


 周りの様子を見て智花は心配そうにその様子を眺めている。智花は沙耶の手をギュッと握りしめており、娘と同じ年齢の小さい子が行方不明となっていることに心を痛めている様子だ。 


「光、おった!」


 その時、向こうから明里の声が聞こえてくる。そちらに目をやると明里、祐美と共に舞に手を引かれて目を腫らしている小さな女の子がやって来る。


 結城光である。


 知らせを聞いた折本も会場の扉から出てきて「光ちゃん! どこおったと!?」と言いながら駆け寄る。

 

 光は交流センターの4階・5階にある図書館に行ってPCスペースで1人閉じこもっていたらしい。


 福岡県民交流センターは県民の自主的な活動を促進し,交流の場を提供するための生涯学習、国際交流、男女共同参画、介護の実習・普及、共生・協働の5つの機能からなる複合施設で、大小ホールや図書館なども併設されている。


「お父さんすぐ戻るって言っとったのに来とらん!」


 光は涙声で舞に訴えかけている。


 いつも病院勤務で忙しい脳神経内科医の和真も月末の土曜日ならば発表会を見に来れる。それを聞いて光は今日の発表会を心待ちにしていたのだが、和真が担当している入院患者の様子がおかしいということで急遽病院へと向かってしまったのである。


 その際、「すぐに戻ってくる」と言っていたのにも関わらず、光の順番が近くになっても現れないために光はボイコット。1人でその場を離れたというのが事の真相である。


 1人でどこかへ行ってしまったという事実はあるにせよ、理由が理由であるために舞は強く言えず、ポケットの中で携帯を握りしめて和真の連絡を今か今かと待っている。


 光は「ピアノを弾きたくない」と駄々をこね、折本も無理をさせない方が良いと判断し、光を演奏させない決断を下す。


 一部始終を少し離れたソファーに座って眺めていた沙耶と智花はいたたまれない気持ちになってその場を離れ、会場の中へと戻る。


「結構、困ったちゃんなんやね。まぁ可愛いもんやけど」


 智花が笑いながらも光の演奏を聞けないことに少し残念そうな表情を浮かべているのを沙耶は鮮明に覚えている。


––––しかしその後、姿を現した光が即興演奏を披露し、会場を飲み込むのである。



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