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NOISE  作者: SELUM
Book 1 – 第1巻
40/69

Op.1-34 – Hard Worker (1st movement)

高校生活、明里の苦労は絶えない!?

 光と明里は学年主任・小池の呼び止めを終え、そのまま25Rへと向かう。2人の背後からは階段の踊り場で引き続き中野を説教する小池の怒鳴り声が聞こえてくる。


「中野の奴、何考えとーと!? 巻き込んできたせいで私まで注意されたやん? 意味分からんやん」


 明里は中野が光に声をかけたことで小池から「学級委員として注意しろ」といった具合に、一瞬ではあったものの自分にまでその矛先が向けられたことに対して不満をぶちまける。


「アハハ、中野くんっていっつも明里に声かけとるよね」

「は?」

「え?」


 明里は光の言葉に驚き、素で返してしまう。しかし、光の様子を見るに明里がなぜ驚いているのか分かっていない様子で明里は「はぁ……」と溜め息をついて光に告げる。


「いや、中野は最初、あんたに『おはよう』って声かけたやん」


 光は明里の言葉を聞いてもピンときておらず、首を傾げてさっきの小池と中野とのやり取りを思い返す。


「あれ? そうだっけ? 丈一郎おじいちゃんに『英語のワーク持ってっとって』って言われたのは覚えとるけど」

「いやいやいやいや」


 光と話していると時々自分の方が間違っているのではないかと錯覚してしまう。


 どう思い返しても中野は光を見つけて「あ、結城さん、おはよう!」と元気よく挨拶していたし、それに当の本人である光だって「え……、あ、おはよう」と困りながらも返事をしていたではないか。いやそれとも自分の記憶違いか?

 

「中野が最初に光に気付いて『おはよう』って言ったやん? それで小池先生のヘイトが一瞬こっちに向いたったい」

「え? そうだっけ?」

「あんたちゃんと中野に『おはよう』って返しとったよ?」

「ん〜? そっか」


 何だか光は頑固な子供をあやすかのような調子で話を終わらせにかかる。


 いやいやいや、おかしいのはお前やろ……。私の方がさっき起こったこときっちり説明できとーよ? 逆に何で光はついさっきあったことすら覚えとらんと!? 


「明里どうしたと?」


 キョトンとした表情で明里の顔を覗き込む光の無邪気な様子は更に明里を動揺させる。


 あれ? もしかして私の方が間違っとる? 中野って私に「おはよう」って話しかけた? こんだけ光の中で腑に落ちてないとなるとやっぱり私の方が間違っとる?


 明里の中で徐々に自分に対する疑惑が色濃くなっていく。それほどまでに光の表情は自信に満ちている。一応、言葉の上では「ん〜? そっか」と明里が正しいということにはしているのだが、これ以上は話が拗れそうで面倒くさいから話を断ち切ったと言った方が正しい。


 立場的には自分の方がこの台詞に相応しいように思うが、いつの間にか逆の立場となっているし、光の方が大人感が出ていて明里の中で敗北感と疲労感が湧き上がる。


「時々、あんたと喋っとると何が何だか分からんくなって頭痛くなってくる……」

「大丈夫?」


 純粋に心配そうな調子で聞いてくる目の前の幼馴染みにふっと軽く息を吐いた後にさっきの小池の言葉が鳴り響く。


––––広瀬! お前も学級委員として中野(こいつ)にちゃんと言い聞かせんか


 無理だ。


 光のお()りで手一杯の自分がこれ以上、手のかかる相手を、しかも別に仲が良いとも思っていないような者に注意を向けるなどできるはずがない。

 しかも、小池の口調からして中野に限らず、クラス全体に気を配れということなのだろうが、そんなの(もっ)ての外である。


 そもそも光の中でここまで中野のことが眼中にないとなると、もはや中野のことが不憫となってきて明里はいたたまれない気持ちになってしまう。


「うん、大丈夫」

「なら良かった」


 明里が心配ない旨を伝えると光は安心したような笑みを浮かべて教室へと歩を進め、教室後方の引き戸を開けてそのまま教室の中へと入っていく。



お読み頂きありがとうございます!

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今後ともよろしくお願いいたします:)

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