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NOISE  作者: SELUM
Book 1 – 第1巻
39/69

Op.1-33 – Like Guardian (2nd movement)

2人の学校生活はこうして始まる。

 2年生の学年主任の小池は60を超えるベテラン教師であるが、背筋はピンと張って姿勢が良く、身長は180cm以上と威圧感がある。彼は英語を担当し、光たち25R(ルーム)の授業も受け持っている。


「中野! 学年章のことは先週も注意したろーも」

「いや先生、あれ付け忘れちゃうんすよ〜」

「何ば言いよっとかって! 学ランの襟に付けとくだけやないか!」


 鶴見高校では制服に学年章と校章を付けるように生徒たちは指示されている。男子生徒の場合は正面から見て左に学年章、右に校章を、女子生徒の場合は胸ポケットの位置にフェルトを安全ピンで留めて校章、学年章の順に取り付ける。


 殆どの男子生徒は学生服をクリーニングに出す以外は襟に校章と学年章を付けたままにしているが、中野は学年章を取り外して投げるなどして遊んでいるうちに付け忘れることが多く、その度に担任の宇都(うと) 菜穂子(なおこ)や学年主任の小池、生活指導の井本(いもと) 克典(かつのり)に注意されている。


「あ、結城さん、おはよう!」


 光と明里はクラスメイトが説教されている場面に出くわし、気まずい思いをしながらも存在感を消しつつ通り過ぎようとする。それを視界に捉えた中野は2人とは対照的に元気良く光に話しかける。


「え……、あ、おはよう」


 光は突然声をかけられたことに動揺するも、消え入りそうな声で挨拶を返す。中野が小さい声で「かーわいっ」と呟いたのを明里は聞き逃さなかった。


「広瀬! お前も学級委員としてこいつにちゃんと言い聞かせんか」


 小池が明里と光に気付き、声をかける。


「え、すみません」


 突然飛び火したそれに明里は驚きながら小池に返事をする。その後、中野を厳しい眼差しで睨み、迷惑であることを訴えかける。


「結城。ワーク、もうチェック終わっとるけん、後で職員室に来て持って行っとって。3限の授業前までに皆んなに返しとってね」

「はい」


 "ワーク"とは英語の授業や課題で使用される問題集で、25Rの生徒たちは月曜日に提出していた。ちなみに光は英語の教科連絡員で次の授業で必要なものを小池に聞きに行ったり、授業前に必要な道具 (プリントや問題集など) を運んだりする役割を担っている。


「先生、自分でやり〜よ」

「せからしかっ! 大体お前は……」


 中野はまたしても余計な一言を発し、小池の説教が再開される。光と明里は小池がもうこちらを見ていないことを確認し、足早にその場を離れた。


(なん)、あいつ」

「ね」


 2人は2階に到着し、左に曲がって女子トイレの前を通り過ぎる最中、言葉少なに今あった出来事の不満をぶつけ合う。


「朝から大きな声出すと、丈一郎おじいちゃん、血圧大変なことになりそう」

「いや、そっち?」

「え?」


 光は小池に対しての不満を、明里は中野の馬鹿さ加減に対しての不満を言っており、会話が噛み合わない。


「どう考えても中野、あいつ面倒くさ過ぎやろ」

「あぁ、そっちね。何て言うか……どうでもいいというか、気にしてないというか」

「光、結構いい性格しとーよね」

「そ?」


 2人はそのまま25Rの後方の引き戸を開き、教室へと入っていき、クラスメイトたちに「おはよう」と言いながら自分の席へと着いた。


 そうして8時半からの朝読書に備えるのだった。



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