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NOISE  作者: SELUM
Book 1 – 第1巻
30/69

Op.1-29 – Tuning (1st movement)

明里の制裁に目を覚ました光は......?


『Op.1-29 – Tuning』第一楽章。

「約束の時間無視して寝とったやろ」


 ベッドに仰向けになる光に馬乗り状態になった明里が、枕の両端に手をついてじっと光の顔を見つめたまま問い詰める。光は明里の顔を見た後に口元をもごもごさせながら気まずそうに視線を横に逸らして小さな声で呟く。


「ごめんなさい……」


 明里に対して甘えている光でもこれほどの失態は珍しく、大抵は起きてはいるもののぼーっとしているだったり、時間に少し遅れたりするといった程度である。

 それもあって明里は2種類のシンバルを光の耳元で大音量で思いっ切り鳴らすという制裁兼イタズラを敢行したのである。


 明里は光の素直な謝罪を聞いて、自分も頭にダメージを受けるという不運はあったものの概ね満足といった表情を浮かべ、光の頭を軽く(はた)く。

 尚も横を向いたまましおらしく反省している光の様子を見て、明里は両手で光の頰をムギュッと音がするくらいに挟み、無理やり正面を向かせる。


「んー! んー!」


 声を上手く出せずに騒いでいる光を見て明里はそのままの体勢で大笑いする。


「アハハ! 光、顔キモーい!」


 散々光の頰で遊んだ後にてを離すと光が文句を垂れる。


「酷い、酷い! キモいって言った!」


 明里は再び光の両頬を(つま)むと、今度は外側に引っ張りながら告げる。


「謝るときは人の顔をしっかり見て謝りましょうねっ!」


 明里はそう言うと手を離して光の顔が元に戻る。光は解放された両頬を手で触りながら「痛い〜」とぶつくさ言っている。

 

 少しして光が恐る恐る明里の顔を見る。明里はその行動が先日動画で視聴した、悪いことをして怒られている猫の様子が頭に浮かび、微かな笑みを浮かべる。

 それを見た光は少しホッと安堵の溜め息をついて改めて明里を真っ直ぐに見つめて謝罪する。


「ごめんなさい」


 それを聞いた明里はニッと笑い、光の頭を撫でながら「よくできました」と告げた後に光の身体から退()けて動けるようにする。

 パッチリと目が覚めた光は目を閉じながら首を左右に振り、髪の毛をバサバサっと音を立てる。明里はいつものように光の頭についている寝ぐせを手ぐしで整えながら尋ねる。


「ちょっとビビッとったやろ?」


 悪戯っぽい笑みを明里は浮かべている。


「うん。今回は本気の怒りかと思った」


 その答えを聞いて明里は笑う。


「私、怒らんよ? 特に光にはね」

「ほら、ライン越えってあるやん?」

「そう思うなら寝らんどけば良いやん」

「いや、お布団の誘惑が……」


 バツの悪そうな顔をして光は答える。


「もっと甘やかして」


 光はニパァッと(はじ)けるような笑顔を明里に向けながら懇願する。


「アホか」


 明里はそう一蹴してもう1度光の頭を軽く叩いた後にベッドから降りる。


「ほら早よ行こう。練習部屋にもうアコベもエレベも運び込んどるよ」


 ベッドの上で伸びをしている光に向けて明里が催促する。


「ほーい」


 ふわっとした調子で光は答えるとようやくベッドから離れて、机の上においてある明里と色違いのuPad proを持ち出し、エアコンを切って部屋の外へ出ようとする。


「ほら換気、換気」


 明里はそう言いながら窓を開け、外の空気を入れ込む。


「寒いやん」


 光が明里の行動に対して文句を言う。


「どうせ練習部屋行くやんか。定期的に空気入れ換えんと体調崩すよ?」

「でもその間ずっと開けとくとここ雪国になるよ?」


 光の返答に対して明里は「雪降っとらんめーも」と小さく呟いた後に説得を始める。


「練習の途中で閉めに行けば良いやんか」

「動くの面倒くさいじゃん」

「私が行ったげるけん」

「やったー!」


 こうなることを狙っていたのかは定かではないが、光は軽い足取りで練習部屋へと一直線に向かっていく。明里はそれを見ながら軽く溜め息をついて光の後に続いた。



お読み頂きありがとうございます!

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今後ともよろしくお願いいたします:)


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