大ちゃんの希望
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大ちゃんとの暮らしが始まって あっというまに20日が過ぎた。
コンラッドは 地上への新たな転移ルートも確保した。
「わしらは そろそろ一度 地上へ戻ろうかと思うのだが お主どうする?」
コンラッドは大ちゃんに尋ねた。
「そもそもわしは太陽の光に負ける。
このまま ここで暮らすには・・
自給体制が整うまで食料援助を受けるか 再び休眠するの2択じゃろうに。」
少々やけくそ気味に大ちゃんが答えた。
「3番目の選択肢として 僕たちと一緒に地上に行って そこの地下室とか陽のささない洞窟で暮らすって案もあるよ」ボロン
「地上に行っても 結局わしは一人暮らしになるのだろう?」大ちゃん
「うーん 昼間寝て、夕食は僕たちと一緒で、夜は少しだけ僕たちと一緒で
あとは 夜行性の動物と仲良くする?」ミューズ
「わしは まだ食料自給体制を整えて 休眠中の仲間を探しだして起こす夢をあきらめてはおらんぞ!」大ちゃん
「その食糧自給に関しては・・ここで キノコ栽培とかはどうかな?
そしてワームの培養土ができてきたら 野菜栽培?
でも 穀物とか肉までここで自給できるのかなぁ・・」ボロン
「まじめな話 お前さんたちは この先 どの程度 ここに来る予定なのだ?」大ちゃん
「ゴンが大人になるまでの保養地として 時々訪れるには良い所だと思う
特に 冬の間の休息と 地底探検の拠点として利用させてもらえれば助かるな」コンラッド。
「まあ わしとドラゴンは 食っちゃ寝生活の場としてここを使うのもやぶさかではないが 人族は それほどでもないのではないかな」コンラッド
「ここは 魔素が濃いからねぇ。
あまり長居をすると 地上での生活力が弱くなりそうで怖いよ」ミューズ
「逆に言うと ここに慣れすぎたわしらは、地表近くの洞窟に引っ越して生きていけるかいささか不安ではある」大ちゃんが つぶやいた。
「ここに来てから あちこち見て歩いた感想なんだけど
ワームの処理場あたりから 徐々に魔素が減っているっていうか
この光の洞窟周辺が異常に魔素が濃いので、
処理場周辺から 栽培場とか魚の養殖場とか作っていくと
魔素の悪影響を抑えらるんじゃないかなぁ。
コンラッドの好きな食用ガエルとかウナギとかだと
暗い所でも育ちそうだ。
養殖が軌道に乗るまで手伝ってもいいよ」
ミューズが 考え考え言った。
「ナーズも白身の肉がうまい」コンラッド
「少し 考えさせてほしい」大ちゃんは言った。
2・3日して大ちゃんが言った。
「キノコ栽培と魚の養殖を手伝ってもらえるなら やってみたい。
ただし 援助を受けるばかりはいやだ。
わしにも 君たちの仲間としての役目を与えてほしい。」
「その件について わしらも考えさせてほしい」コンラッド
・・
ボロン・コンラッド・ミューズ・ゴンは4人の寝室に集まって相談した。
「僕は 大ちゃんがクランの仲間になってくれると嬉しいな」ゴン
「しかし あいつが仲間を起こせば どうなる?」コンラッド
「その時はその時だよ。
彼が 同族に対しても秘密を守ってくれるなら、
クランの本拠地の地上まで攻めてきたりしないだろうし」ゴン
「つまり 地上へのルートは秘密にするのか?」コンラッド
「そうなるのかな?」ゴン
「ゴンが自力でここと地表とを行き来できるようになれば
将来 地上でなんかあった時に ゴンの避難場所としてここが使えるよ」ボロン
「しかしなあ かつて地底世界で繁栄していたドラゴンの痕跡がないのは
この地も 必ずしもドラゴンにとって良い場所ではなくなったのではないかという懸念もあるのだ。
もともと ドラゴンは 地表の生き物であったわけだしのう」コンラッド
「でも さしあたっては、君や僕たちがゴンについているわけだから・・
そんなに 何もかも急に確かめられるわけでもないしさぁ」ボロン
「大ちゃんに、ドラゴンクランの一員として ゴンを守る仲間になるのか否か尋ねるところからはじめたらどうかな?」ミューズ