洞窟暮らし:コンラッドのベッド
(8/9)
洞窟での暮らしを快適にするための工夫をすることにした。
「まずは 安眠確保!」
寝室用に定めた小洞窟の入り口に木の扉をとりつけた!
扉や蝶番などは スカイの空間収納庫からコンラッドが取り出した。
洞窟の扉がぴったりとはまるように 洞窟の出入り口を削って形を整えるのは、ヒト型の3人=ボロン・ミューズ・ノームだ。
そして 部屋には タッチ式で光をつけたり消したりできる光石を、ノームの手の届くところに取り付けた。
「ああ うれしいな。
ゴースト対策で 光の部屋を磨きたててから、そこに通じるどの部屋も 差し込む光が強すぎて困っていたのだ。
一方 ゴースト達がきてからというもの、暗闇の中で行方不明になる仲間が出て、
わしらノームも闇を避けるようになったから
ほんとに困っていたのだ」
「それってゴーストに襲われてたってこと?」ゴン
「襲われて逃げてきた者はいない。
襲われているのを見た者もいない。
ただ 暗い洞窟に入った仲間が行方不明になっただけだ。
だから 疑い・警戒はしたが確証はなかった」
「その推論は正しかったよ。ぼくの探知では」ミューズ
「だからこそ 消したのだ」コンラッド
寝室は、ゴン・フェンリル・ボロン用とミューズ&大ちゃん用の二部屋を用意した。
ゴンの寝る部屋はスイング式の大扉の一部に、コンラッドやボロンが通るための小扉(スイング式)がついている。
「スイング扉おもしろ~い!」ゴンは2・3日の間、何度も何度も出たり入ったりして遊んでいた。
「そういえば 君 城のホールなどの出入りは転移してたんだ!」
今更ながらに気が付いて驚くボロン
「だって 城の扉は重いし繊細なんだもん。
でも 僕に気を使って、大きな扉をつけていてくれたのはうれしかったよ」ゴン
ボロン ('◇')ゞ (;'∀')
ゴンの寝床には わら布団の上に発熱毛布を敷いた。
必要に応じて使えるようにダウンのかけ布団もある。
幼い子は寝相が良くないので コンラッドやボロンがしょっちゅう掛布団をかけなおしてやらなくてはいけないのだが・・
最近は ゴンの体が大きくなったので、ゴンが掛布団の上に乗っかって眠っているときは ボロンはお手上げである。
ゴンの寝床の向かい側、戸口寄りの場所に フェンリル用特別寝台が置かれた。
それは 厚い板の上にとりつけらえた大きなかごの中に羊毛マットが2枚納まっていて、
そこに リネンのシーツを敷いて、コンラッドが体を伸ばしてゆったりと寝そべることも、
あるいは羊毛マットの1枚を 丸いくぼみをつけた羊毛布団と取り換えて、
体を丸めたコンラッドが布団の中にうずまり眠ることもできるようになっていた。
もちろんコンラッドは 必要に応じて 自分の魔法を使って毛布をひっかけて眠ることもできる。
「コンラッドのベッドを始めて見たよ!」ボロン&ゴン
「これまでゴンの寝床は 保温のために温泉の傍だったからな。
湿りやすい所では この寝具を使えなかったのよ。
ここは その点だいじょうぶだ」コンラッド
「同じ理由で そこにあるボロンの寝台も 今まで僕と一緒の時は使ってなかったの?」ゴン
「うん」ボロン
ゴンは しげしげとボロンのベッドを見た。
「みんな 何枚も寝具を重ねて使うんだね」ゴン
「僕たちは汗をかくからね。
寝具は 干したり洗ったりと衛生には気を遣うんだ」ボロン
「その点 ドラゴンは あまり汗をかかないし
体がでかいから 寝具を作るのもたいへんだし
幸いなことに 成長するほど体が丈夫になるから寝具を必要ともしないな」コンラッド
「でも コンラッドだって、寝具なしでも大丈夫なんでしょ」ゴン
「まあな。しかし わしも長く生きてきたから・・
年寄りの贅沢じゃよ」苦笑いするコンラッド
「人間との付き合いが長くなると 口だけでなく寝具も奢るの?」ゴン
「それを言うなって」コンラッド
「すくなくとも わしはまだ へそ天で寝るほど人慣れはしてないぞ」
「寝場所と言えば、台地の温泉の傍の床が あったかくて気持ちよかったなぁ」ゴン
「それは わしも同感だ」コンラッド
「床暖房は 最高のぜいたくじゃよ」
「だけど その発熱毛布も 床暖房のような快適さになるはずだよ」ボロン
「それは 今夜の楽しみだね」ゴン
翌朝 発熱毛布の制作にかかわったミューズ・コンラッド・ボロンがそろって
ゴンに寝心地を尋ねた。
「ねいりばなは気持ちよかったよ。
でも 寝返りうつとしわが寄っちゃて・・ずれたり・・
やっぱり 上掛けにする方がいいな」ゴン
「やっぱり・・・
そんな気はしたんだ。orz
ただ 地面にじかにつけておなかを冷やすといけないと思ってね。
それに 君の体重を考えると、敷布団やマットレスに何かを詰めてもすぐにつぶれて袋の中でずれるだろうと思って、少しでも保温性を上げるために作ってみたんだ」ミューズ&ボロン
「腹が冷えるなら 寝るときは 温泉のある台地に行こうか?」コンラッド
「その辺は ケースバイケースでお願いします」ゴンは頭を下げた。
「僕一人で サウナ部屋とか温泉部屋で眠ることもできるかもしれない
光の部屋の真ん中にテントを置いて寝てもいいし」ゴン
結局ゴンの寝床として 発熱素材でできたゴン一人用の三角テントを作った。
これなら ゴンが寝返りを打っても 三角テントが揺れたり転がるだけだ。
テントの角には軸が入っているから テントの側面も底面もしわは寄らない。
仮にテントの側面を下にして仰向けになったとしても、全面発熱素材なので
地面に接する所から体が冷える心配はない。
「もっとも 背中があったかいからと言って ドラゴンが仰向けに寝そべって眠るようになると 問題だが」コンラッド
「今まで見てきた範囲では 横向きで寝ているときに 首を伸ばしたり曲げたり
足を動かすのが多いんだよな。
時々横倒しの向きが変わってるけど、仰向けになっているのは見たことがないなぁ」ボロン
「そもそも ドラゴンが仰向けで止まってしまうと 自力で態勢が立て直せなくなる危険があるのだ。
手足の動きで 勢いよく横倒しの向きを変えるのはありだが、
普通は 足をまげて体を丸めて寝るのが4本足の基本だぞ
そりゃ あまりに暑いときは 横向きになって足を伸ばして 腹から熱を逃すようにして寝るが」コンラッド
テントの中は発熱素材で囲まれた空間なので 今まではよりはゴンの寝場所の温度の適用範囲が広い。
コンラッドは温度調節に苦心し、ボロンはテントの強度に頭を悩ませ
ミューズはテント布の機織りと縫製をがんばった。
(スカイに 発熱布のつくり方を教わっててよかった~)ミューズ
これで 同じ部屋の中で、ボロンやコンラッドは快適な寝具を使って眠り
ゴンも暖かく安心して眠ることができるようになった。
(やはり 温泉のそばは 湿気るからなぁ)ボロン
(転移を乱発せずに あちこちで眠れるようになると 行動範囲が広がるな)コンラッド
(いくら自立を重んじるとはいえ、昼夜を問わず 頑是ない幼な子の声の聞こえるところに居るのが 子供の安全確保のために必要なことだ)ボロン&コンラッド
ボロン達が ゴンの寝具の開発にいそしんでいる間
ノームの大ちゃんは ゴンに調理方法を教えてもらいながら、
ゴン達が持ち込んだ 地上食材を使ったクッキングにいそしみ
ワクワクと至福の時を過ごした。
ボロン達にとっても 食事の支度に気を遣わずに 研究開発に集中できて大助かりだった。
ゴンも新たな友達とのおしゃべりや、大ちゃんと二人でする洞窟探検は
ちょっとした親離れの気分で、わくわく・どきどきたっぷりだった。
実際には 毎晩コンラッドと大ちゃんとで翌日の行先を打ち合わせ、
いつもミューズが大ちゃんとゴンの動きをモニターしていたのだけど。
大ちゃんは 子どものよき友となれる大人だったので、ゴンにとって
大ちゃんは サイコーの遊び仲間だった。




