ワーム!
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ノームの洞窟に入って2日目、最初の朝。
昨夜遅くまで、コンラッドとミューズはかつてノームの領域だった場所の安全確認をしてまわった。
そして 朝食の席で 居住区として利用するのに問題なしと報告した。
「ところで ここでのごみ処理なのだが・・」コンラッド
「ワームな」ノームの大ちゃん
「そのワームはどうなったのだ?」コンラッド
「卵のまま保管しているので、有る程度エサになるものがたまれば、いつでも復活できるぞ」大ちゃん
「御覧のようにドラゴンは 体がでかい。
当然 出モノもたっぷりだ」コンラッド
「お前さんたちは ここで暮らす気か?」大ちゃん
「一応 1か月ほど滞在のつもりで来たのだが、だめか?」コンラッド
「この洞窟の下の地底世界にはおりないのか?」大ちゃん
「おそらく お主も気づいておろうが このドラゴンの体は小さい。
だから 順々に ゆっくりと下に降りていこうと思うのだ。
それに お主にとっても 一人でここを切り回すより
助っ人がいたほうが 再建しやすいのではないか?
それとも 再び眠りにつく気か?」コンラッド
「再建したい気はある。
しかし 食料が確保できぬことには 話にならぬ」大ちゃん
「ねえ こっから先は ちょっと大人の話が続くから、ゴンとボロンは このあたりを見て回ったらどうだい?
今夜の寝床をどこにするかとか いろいろ考えながら見て回るのも面白いんじゃないかな?」
ミューズが ボロン達に声をかけた。
「うーん もっとお話し聞いていたい♡」ゴン
ミューズとコンラッドに目線で訴えかけられたボロンは、
「まあ そういわずに」とゴンの頭をなで
「風呂場は使えるのか?」とコンラッドに尋ねた。
「ああ たぶん。」コンラッドは少し首をかしげ
「ミューズ 一緒に行って様子を見てやってくれんか?」と言った。
「じゃ 3人で見に行こう。
ここでの予定を決めるための 下見もかねて」
ミューズは立ち上がり、ゴンとボロンを誘って食堂を出た。
けっきょく コンラッドと大ちゃんは二人で あれこれ話し合った末に
ワーム付きの処理場を復活させた。
そこには、分別した有機ゴミが滑り落ちたり
トイレ・洗い場からの排水・汚物が流れ込むようになっていた。
処理場の中では、ふ化させた1匹のワームが それらを培養土にかえるのだ。
ここまでは 以前ノーム達がやっていたことであった。
それに加えて、コンラッドが ノーム達との別離以後に取得した知識と経験をもとに
段階的バイオ分解槽も設置した。
これは、地上でコンラッドが 魔法陣を使って荒っぽく設置したバイオ処理場を
もう少し丁寧に設計・設置したものである。
(この1年、スカイやボロンともバイオ処理場の改良案は話し合っていた)
段階的バイオ分解槽とは、複数のタンクの間を浸透膜のようなもので仕切っている。
タンクの各部位では 種類の異なる微生物が各々《おのおの》の性質により汚水をバイオ分解する。
最終的には 汚水は無害化された水として洞窟の外から地底世界に排出される。
しかし その一歩手前の水は 肥料分を含んだ水として栽培に使うこともできる。
このあたり 排水の富栄養化防止と肥料分の有効活用のバランスをとるために、
汚水の分解をどこまで進めるかを実地に即して調整するための苦肉の策である。
一方 風呂場を見に行ったボロンはミューズと一緒になって配管の取り付けなどを行い、
ミューズは ドラゴン用のトイレの設置に手を貸し、
「あはは 僕は いまだに いつも見学係だねぇ」とゴンはぼやいた。
「いやあ 君のおかげで (ドラゴン用便座を作る為に)ドラゴンのお尻について知ることができたよ。
これって エルフ史上初めての栄誉かもしれない」ミューズ
「やーん 恥ずかしい! ほんとに恥ずかしいんだからね!!」
ゴンは 羽先でお尻を隠すようなしぐさをした。
(もちろん 実際には 隠せなかったのだが、もうこれ以上お尻を見ないで~という意味は伝わった)
「だけど 魔法を使わず気楽に用を足せるようになったのは助かるね」ゴン
「風呂場の配管ができたので 排水の行方について 頭を悩ませずに、
洞窟の中で 存分に湯あみをできるようになったわ!
次は 湯船を設置しよう!」コンラッド
「キッチンと洗濯室に それぞれ専用の洗い場ができてうれしいよ。
いくら 大丈夫ってわかってても 汚れた食器や服ををマジックバックに突っ込むのは
気持ちの良いものではないから」ボロン
「1か月後には ドラゴンとワームのおかげで 栽培養土が手に入るのはうれしいわい」大ちゃん
(実のところ 初期投資よろしく ワームの当面の餌として、これまで空間倉庫にためていたゴンの排泄物等を処理場に送り込んだのだ)
「わしは 計画通り ワームの処理場から転移陣を使って 再培養土がこちらの小洞窟まで無事に送られてくるのを見届けるまでは 気がかりじゃわい。」コンラッド
「まったく しばらくぶりにお主に会うと 以前にもまして複雑な術式を使うようになっているうえ
魔法を使わなぬ各種技術まで覚えているので 驚いたわ」大ちゃん
「それだけの年月が過ぎたということじゃ。互いにの」コンラッド




