三角
(4/9)
「う~ら~め~し~や~」三角が キッチン洞窟の入り口に姿を現した
「ギャツ」ゴンが悲鳴を上げた
「ここは キッチンであって 裏の飯屋ではない」コンラッド
「あの者たちを害さず眠らせてくれたことには礼を言う。
そして わしを閉じ込めなかったことにも。
だが これ以上寒いギャグを飛ばすのはやめてくれ」
三角は入口の外に立ったまま言った。
「そもそも お前はなにものなんだ」コンラッド
「あまりにも長い年月がたって忘れたよ。
あそこにあった次元の裂け目から いろいろなもの達が入ってきて出て行って
結局最後まで残ったのが あのにょろにょろ達だ。
あやつらは 魔素食いで、ここからほかの次元に移れば 魔素の不足で生き延びられぬと悟ってな、
ここに居ついたのだよ。
かといって あやつらをここで野放しにしておくと この世界のすべての魔素を食いつくす未来が見えておったらから、わしが 子守りをしながらあやつらをあの洞窟の中にとどめていた。
しかし それにも飽きていい加減うんざりしておったから、
コンラッド殿 お主があやつらを眠りにつかせて魔素の減少を食い止めてくれて
わしは喜んでおる」三角
「どうして 君は 子守りになったの」ミューズ
「若気の至りじゃ。
ついつい 慈悲の心をおこしての。
抹消する気になれなんだ。
あれで なかなか愛嬌がある。貪欲で野放しにはできぬ存在じゃったが」三角
「で 君は これからどうするつもり?」ゴン
「良ければ仲間に入れてくれぬか?
わしは あやつらの番をしながらも もうちょっと気楽に生きたいわ。
もちろん おぬしらを害せぬ。
秘密は守る
おぬしらに迷惑はかけぬ」三角
「あの魔素食いどもが活性化したら 速やかに抹消できるか?」コンラッドが尋ねた。
三角はため息をついて言った。
「抹消の邪魔はせん。わしの力の限りを尽くして あ奴らが魔素を消費することを抑える」
「ふむ それがお主の限界か」コンラッド
「君もいっしょに眠りにつこうとは思わないの?」ミューズが尋ねた。
「せっかく面白そうな運が回ってきたのに寝ようとは思わぬな」三角
「君って 根っからの嘘つきだね」ミューズが言い終わったとき
三角もゴースト達がいた空間も消滅してしまった。
「あれらは 精神寄生型の捕食生物だったよ」ミューズ
「お主が 時渡りで見た世界はどうなっていた?」コンラッド
「奴らに食い尽くされて エネルギーの枯渇した世界だった。
水爆云々のつくり話をしたときに あいつの脳裏に浮かんだ光景が変だったから ずっと探索を続けていたんだ」ミューズ
「お主 時渡りと消滅の魔法だけは正確だな」コンラッドがぼそっと言った。
「お主の的確な判断に感謝する」
コンラッドは ミューズに向かって一礼した。
「僕には 何が何だかわからないけど、それだけ危機的だったってことだね?」
ゴンとボロンが恐る恐る尋ねた。
コンラッドは黙ってうなづき、
ノームは腰を抜かしたままつぶやいた。
「重圧が消えた。
それが ミューズの力なら感謝する。
だが 怖い。
伝説の 恐怖の大王は 本当にいたんだ」
ミューズは悲し気に答えた。
「そんな呼び方をされるのは好きじゃない」
「いやいや 恐怖の大王はゴーストとその主のほうで
ミューズは 光の救世主様じゃ」ノーム
「ゴーストどもにとっては ミューズが恐怖の大王で
我々にとっては ミューズが光の救世主だ。」
コンラッドがつけくわえた。
ミューズは 時渡りの能力を使って、このままゴースト達と共存し続けた場合の先の未来を「視て」
それをもとに 今のゴースト達の状態を探り 嘘ばかりつき続けるゴーストの主を信用ならぬと判断し、
三角を注意深く観察し続け、三角がノームに精神寄生をしようとした瞬間を狙って
素早く反撃に出たのであった。
ゴースト達は過去にもノームを食らっていたし、
今も 三角はノームを精神支配しようとしたことがばれても 先ほどの誓約には 入っていないと言い抜けるつもりであったから、ミューズは ゴンとこの世界の未来を守るために素早く行動を起こした。
なぜなら 三角がノームに寄生したあと分裂して、自分の分身にノームとボロンを支配させ
自分はゴンを乗っ取って この世界の支配者になろうとしている魂胆と未来まで視てしまったから。
ミューズは 生育魔法の達人であるので、生物の探査にも秀でていた。
ノームとフェンリルは 一部のエルフが持つ「時渡り・生育魔法」の奥義について知っていたので
ミューズの行動と判断をすんなりと受け入れたのであった。
というよりも ミューズの能力と奥義を知るがゆえに
新たな出会いのたびに『誓約』を利用していたともいえるが
そのあたりの裏事情について、ボロンやゴンはまだ知らなかった。
「生まれたての者どもに 魔法の体系すべてを教えることもできぬし
魔法の体系を学びきっておらぬ者には理解しがたいことを半端に伝えても 混乱と恐怖を招くだけじゃ」というコンラッドとノーム共通の考え
&
『とことん話し合えば みんな仲良しになれる』と信じていたミューズが
これまで 様々な世界で多くの人と平和共存を目指して いろいろ頑張ってみたけど
やっぱり 誠意の通じぬ むしろ人の誠意を悪用する輩と平和共存は無理
平和共存が無理な相手とのかかわりは最小限に抑えて速やかに排除することが
自分が守りたいと思う人を守るために必要だし、
逆に 自分が守ってやらねばと思うほど か弱い人に
脅威となる存在を「即断で抹消することの必要性」を説いても 受け入れてもらえぬと つらい体験を重ねた結果として
ミューズは 説明抜きで 三角達を消すことにしたのであった。




