ご先祖様からの情報
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ゴンが生まれた洞窟の中で暮らしながら、外の獲物をゴンの念力で引き寄せてボロンが狩るという計画は うまくいかなかった。
最初にウサギをテレポートで引き寄せることができたのは いわゆるビギナーズラッキーだったらしい。
しょんぼりとゴンはボロンに尋ねた。
「もしも 洞窟の外で何かに襲われたら僕を守ってくれる?」
「なにかって?」
「悪い人族とか 強い獣とか・・」ゴン
「うーん 俺 強くないからなぁ・・
お前が洞窟の中にテレポートする時間を稼ぐ努力はするから
いざとなったら お前ひとりで逃げろ」
「そんなの嫌だ! ボロンを置いてはいけない」
ゴンは目に涙を浮かべて きっぱりと言った。
「困ったなぁ。
お前 今 どれくらい探知できるの?
俺が街道を離れてから 竜の山にたどり着くまでも、
竜の山のトンネルを通ってここに来るまでも
生き物らしい生き物にほとんど出会わなかったんだけど
そんなに危険な生き物が このあたりにいるの?」
ボロンは 不思議にそうに尋ねた。
「実のところ ボロン以外の気配はないね。この近くには。
でもね 人間の中には龍を狩る人たちがいるって僕の中のご先祖様からの情報にあるんだ。」
「ご先祖様からの情報?」ボロンは聞き返した?
「うん。ドラゴンは一人で生まれても困らないように 卵の中にいる間に先祖の知恵を引き継ぐんだよ」ゴン
「なるほど・・凄いねぇ。
ところで、お伽話の中では 龍を殺して宝物を奪う人の話もあるけど・・
それって はるか昔の話ではないかなあ・・・・
今では 龍は伝説の生き物だから、わざわざ龍を探す人もいないよ」
ボロンの言葉を聞いてゴンは震えた。
「やっぱり 龍を狩る人間の話はあるんだ。
存在を知られると 探して殺しに来るかも」
「う~~~~~ん」困惑するボロン。
「もしかして 君が洞窟の外に出たがらないのは、知らない人に会うのが怖いからかい?」
ボロンは 半信半疑で尋ねてみた。
「うん」
「普通 逆じゃないか?
もし喧嘩になれば 人間よりもドラゴンのほうが強そうだけど」
「だけど 僕まだ赤ちゃんだもの。
ブレスも吹けないし、かみつく歯もないし
たぶん 殴られたら僕のほうが負けると思う」
「なるほど。
でも お前のように かわいくて、気立てがよくて 賢いベビーに暴力をふるう奴なんているかな?
ていうか だれかが君に乱暴することを 俺は絶対に許さないから」
ボロンはきっぱりと言った。
「ありがとう。
でも・・ボロンって強くないんでしょ??」
ゴンが首をかしげる。
「それとこれとは別だよ。
あのさ ドラゴンっていうと 史上最強ってイメージね。
だから ドラゴンとためを張るような生き物に俺がかなうわけないじゃないか。
でも 君はベビーでもあるから 僕は全力で君を守る。
ただ 一緒にいると 君はテレポートとか念話とかすごい能力を当たり前のように使っているから
ついつい僕も君のほうが僕より強いって思ってしまうわけ。
そのへんで ちょっと発言が混線しちゃったかな」
ボロンが苦笑いで答えると 「なるほどー」とゴンも納得した。
「そっかー。
お互い 自分にとっての『あたりまえ』の中身が違うから
話がこんがらがることもあるのかぁ」
ゴンは うんうんとうなづきながら言った。
ボロンは幼龍を抱きかかえるようにして、頭をなでた。