地底の川
昼食後 コンラッドはフェンリルの姿に戻った。
梯子の底穴はそこそこ広く、側面にはいくつかトンネルが開いていた。
そのうちの一つを足先で指し示しながらコンラッドは言った。
「よいか、この先しばらくわしが二人を乗せて先導するから
ゴン おぬしは飛びながらついてくるがよい。
一応 光石をボロンに背負わせるから それを目印にするがよい」
「はい」ゴン
コンラッドは ボロンたちの腰につけさせていた小さな光石を回収し、
代わりに中くらいの大きさの光石を網袋に入れてボロンに背負わせた。
コンラッドは自分の頭の上に小さな光石が来るように網ネットをヘアバンドのように巻いた。
その他の光石はすべて空間収納した。
「では 行くぞ。用意はいいか?」
「はい!」
ミューズはコンラッドの首にしがみつき、ボロンはミューズの背中にしがみついた。
コンラッドは矢のように飛び出し トンネルの中を駆け抜けた。
トンネルの横穴の幅はかなり広く ゴンが羽ばたくときにつかえる心配はなかった。
(この先 高さがかなり低くなるぞ)
コンラッドの念話のとおり、ゴンが羽ばたくのに差支えはないが
羽先がぎりぎりになるほど 高さは縮まった。
(ちょっと怖いな。
コンラッドが先導してくれているから大丈夫だと思うけど)
ゴンは ドキドキしながら飛び続けた。
(あと少しだ がんばれ!)
ボロンの背中の光が動かなくなったと思ったら コンラッドから念話が入った。
ゴンは速度を落としながら 前に進むと やがて ぽっかりとした空間に出た。
どうやら 新たな洞窟についたようだ。
よく見ると コンラッドたちは岩だなのようなところに立っており、
その横には 深くて幅の広い谷川が流れていた。
「ここで小休止だ」
コンラッドの掛け声に従って ミューズとボロンはそっと岩棚に降りた。
二人が降りるとコンラッドは人化して ゴンが背にするトンネルの出入り口のわきにあるくぼみに触れると 小さな光石がともった。
「もしかして 目印?」ミューズが訪ねた。
「そうだ。わしは別になくてもかまわんが、お主たちはあったほうが気が休まるだろう?」コンラッド
「ありがとう」ボロン
ゴンは 暖かい肝臓を一つ食べ 暖かくて甘いミルクティーを飲んだ。
ボロンとミューズも ミルクティーを飲み
コンラッドは ミルクティーと一緒にロイヤルゼリーの塊を食った。
「変身すると 腹が減っていかん」
「この先1時間ほど進むと、川とともにトンネルを出て、谷川のそばに 温泉の湧く台地につく。
今夜は そこで泊まろう」コンラッド
「そこって 僕も入れる温泉?」ゴン
「もちろんじゃ。
少なくとも 昔はドラゴンと一緒にわしも入ったぞ」コンラッド
「じゃあ もうひと頑張りするよ!」ゴン
コンラッドは再びフェンリルの姿にもどり、ミューズとボロンを乗せた。
コンラッドが先に岩棚をかけだし、
少し遅れて ゴンが 川の上を飛んで行った。
「今度は 余裕をもって羽ばたけるから気が楽だよ」ゴン
「はるか昔は この川の上は ドラゴンの通り道になっておったからなぁ」コンラッド
やがて 岩棚は 緩やかに川にむかって下り坂となった。
岩棚がつきるころ、目の前に台地が広がっていた。
トンネルから 新たな巨大洞窟に出たようだ。




