食料調達
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幼龍の誕生を見た翌日から3日間は 肉エキスに粉ミルクを溶いたものを飲ませ続けた。
そして出会って5日目の朝 いつものようにミルクを飲ませた後、ボロンはゴンに話しかけた。
「なあ 俺の持っているミルクはあと1日分しかない。
俺の食料もあと2か月分くらいしかないんだ。
そして はっきりしないが 町まで 俺の足で2か月くらいかかる。
食料の補給は 町でしかできないんだ」
「粉ミルクを手に入れる方法を思い浮かべてみて」
「ここから一番近くにある食糧倉庫の場所も考えてみて」
ゴンの言葉に従って ボロンはその二つを思い浮かべた。
すると 目の前に非常に興奮した牝牛と大量の干し草が出現した。
「この牛は クマに襲われかけているのを連れてきた。
僕が助けなければ死んでいたから この牛の乳を僕のものにしてもいいと思う」
「もしかして 俺に この牛の乳を搾ってお前に飲ませろというのか?」
「うん」
「もうちょっと僕がしっかり飛べるようになるまでよろしく」
「なっ なっ」
「君の食料調達は 夜にお店の中から品物を持ち出して、その代金を君の持ち物から取り出して置いて来たほうがいい?
それとも 倉庫からかっぱらってこようか?」
「代金を 置いてきてください」
ボロンはあきらめの心境で 財布の中から金を取り出し 欲しいものをイメージした。
「よっしゃぁ」
希望する品がコインと引き換えに出現した。
「まだ 店が開く前だったから 交換しちゃった」
「お前は、しっかりと歩いたり飛んだりできるようになるまで ここで過ごすんだな?」
「そだね」
「だったら 俺の歩いてきた経路もよみとって 体がつっかえるほど大きくなる前に外に出られるようにしろよ」
「だいじょうぶ 別の通路もあるから」
「そうか 好きにしろ。
だがな 俺は一応ギルドに休暇延長もしくは退職願いを出さなきゃいけないんだ」
「もしかして 僕のために あと1年くらい一緒にいてくれるの?」
「おまえがのぞむなら。
ただ お前と一緒の暮らしって 街や村では無理なのか?
こことか 人跡未踏の地でないとだめなのか?」
「僕は 縛られるのは嫌いなんだ。
それに 僕の食べ物を買うだけのお金 君は持ってなさそうだし。
ジャングルなら、僕が狩りを覚えるからなんとかなる」
「お前の同族の所に行くとかは?」
「僕の感知範囲にドラゴンはいない。
僕にとっては ボロンが家族だ。 ちがうの?」
「あー、 お前がそう思うなら それでいいよ。
ドワーフは 幼い子を大切するんだ」
「じゃあ よろしく」
それからしばらく ボロンは 乳牛の世話をしたり 乳しぼりをしながら ゴンにミルクを与え続けた。