幼龍の食事
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ボロンが目覚めると 傍らで生後2日目のドラゴンが鍋の臭いを嗅いでいた。
「おはよう。 朝飯を一緒にどうだ?」
「いいの?」ゴンはうれしそうにボロンの顔を見た。
「ああ。
おまえは やっぱり柔らかい肉とかがいいのか?」
ゴンは口を大きく開けた。
「ぼく まだ歯が生えてないよね?」
驚きつつもドラゴンの口の中を覗き込み
「うん 歯はまだみたいだね」
「じゃあ 柔らかくて消化が良くて栄養いっぱいの朝ごはんをお願い」
「うーん」
(すり鉢は持ってないから すり身は作れないしなぁ。)
「干し肉をゆでて柔らかくしてからでなくては 刻めないので
最初はスープで そのあと肉とかゆでもいいか?」
「まかせる」
ドラゴンはちょこんと座って ボロンの作業を見守った。
「あそこの温泉の湯は料理に使えるかな?」
「かなり熱いから 人間だとやけどするかもよ」
「そうか。じゃあ 時間はかかるが水から調理するか。
おまえ 寒いなら 火は大きめにたこうか?」
ゴンはちらっとボロンの荷物を見て
「薪は足りるの? ご飯ができるまで 僕は温泉の中で待ってるよ」
そう言って よたよたと湖の中に入りに行った。
(ドラゴンというのは 生まれたてでもずいぶん賢い)
そう思いながら、干し肉をたっぷりと入れたスープを作った。
「スープはできたぞぉ」
ボロンの呼びかけに答えて、ドラゴンはよろよろと飛んできて、かまどから少し離れたところにドスンと着地してよたよた歩いてきた。
「スープをこの椀に入れてもいいか?
それともスプーンですくって飲ませたほうがいいか?」
自分用の木の椀を手にもって尋ねた。
「なんだか小さいねぇ。 僕の口に流し込んでくれる?」
「えっ むせたりしたいのか?」
「さぁ でも椀の中身をこぼすともったいないじゃん」
「だったら せめて 熱さ加減をみてくれ」
ボロンは お椀にスープをよそってゴンの前に突き出した。
そっと臭いを嗅いだドラゴンは「いいよ。早く食べたい!」と再び口をカパッと開けた。
そんなドラゴンの口に しゃもじですくったスープをそっと注ぎ込むボロン
「味は?」
「味より質と量!」
「大食いめ!」
ボロンは笑いながら 今度は椀の中のスープに粉ミルクを溶いて それをゴンに飲ませた。
「ミルクありとなし どっちがいい?」
「ミルク入り!」
「もっと濃くしてみても大丈夫かな?」
ミルク濃いめのミルクスープを飲んでおなか一杯になったのか ゴンはウトウトし始めた。
「うーん 赤ん坊のようにゲップをさせてから寝かせたほうがいいのか?」
ボロンは ドワーフ学校で習った「赤ん坊の育て方」を思い出しながら ドラゴンを胸に抱えて背中をトントンしたら・・ゴンはかわいくゲップをした。
「ふむ ドワーフもドラゴンも赤ん坊はゲップをするのか」
それにしても この子は重い。湖まで運んでやれない。
保温大丈夫かなぁ・・
心配しながらも ありったけの衣類で包んで火のそばに寝かせてやった。
(いったい この子の親はどこにいるんだろう。
こいつがひとりぼっちなら 俺が世話をしてやらなければいけないんだろうなぁ・・
しかし 食料が足りないぞ
洞窟の外まで補給に行くにしても 外まで何日かかるんだろうか?)
心配だなぁ