表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンクラン 幼龍編  作者: 木苺
第3章(2年目の野外活動) 春
57/112

恋の季節とサボテン騒動

(3/8)

パジャマパーティのあと、コンラッドはミューズの魔力の調整に協力していた。


ゴンが大洞窟の外に出てくるようになってからは、コンラッドは 再び幼龍のトレーニングを開始した。

「コン」というのは、コンラッドの略称である。

  それは幼い頃のスカイがコンラッドを読んでいた呼び方でもあり

  ゴンも よくコンラッドをそのように呼んでいた。


 「幼子(おさなご)というのは 人間も龍も発想が似ているのだな」とコンラッドはまんざらでもなさそうな顔で言う。


 声明とボロンは、ゴンとコンの呼び名が紛らわしいので、できるだけ「コンラッド」とフルネームで呼びかけるようにしていた。



そうこうするうちに春の種まき・苗の植え付けシーズンとなり、人間もドワーフも大忙しだ。

 種や苗は、スカイが買い付けてきたり コンラッドやミューズが独自に用意したものだ。 


ミューズは 南部牛追唄を口ずさんでは大牛を働かせ

「御馬の家族は~」と歌っては荷馬達を働かせ 

 田や畑を耕していた。


さらに 種まきが終わった畑では「雨あめ降れ降れ~」とこれまた種の名称を入れつつ替え歌を歌って、局所的に雨を降らせた。


おかげで、春の農作業が思いのほか早くすんだ。

ここまでは良かったのだ。


ところが境川に沿って生垣を伸長しようとコンラッドが言い出したものだから・・・


 バラを植えながら 歌ったのが

   ♬バラが咲いた バラが咲いた~♬(1番のみ)

   ♬白きバラ一つ 清らかに~♬

   ♬赤きバラ~ 誇らかに~♬

   ♬~君はこころの白薔薇か♬

 はい 全部恋の歌です。


その結果 せんだって コンラッドとミューズが連れてきた魔獣たちが

一斉に求愛行動を始めたから さあたいへん。


  めーめー もうもう べーべー きゃっきゃ ピーチク パーチク

  ンゴ~ だの ウォ~だの にぎやかなことになりました。


 もはや 種固有の発情期関係なし!の大騒ぎ。


そこで コンラッド、「恋とは関係なさそうな サボテンを植えよう」と方針変更。


ミューズは歌う

  ♬どこ行くの?こんな雨の中~窓際の小さなサボテン♬(ポルノグラフィティー)

  ♬ほんの小さな出来事に♬(財津和夫)


  すると サボテンがむくむく育って 棘を飛ばし始めた!


「うーん 今回は 動物たちに影響でないように控えめに歌ったのに」ミューズ


「どっちも 心傷つき 旅立つ歌だろうが!」

  近くで見学していたゴンのほうに飛んで行った棘を、身をもって受け止めたコンラッドがぶつくさ言った。


「ごめん。痛いの痛いのとんでけ~ ただし飛んでくのはあっち~

 飛び出すのは敵がきたときだけだよ~」

とミューズは コンラッドにささったとげとサボテンたちに言い聞かせた、

ジャングルのほうを指さししながら。


そして少し考えて

 ♬サボテンが 赤い花をつけたよ♬ のフレーズだけを歌った。


さらに考えてミューズは言った。

「なあ コンラッド カラタチの花はどうだい?

 ゆずとよく似た木で棘がある。

 棘のつきかたは ボケの木に似ている」


「しかし あれは食えん。生薬にするにしても配合がむつかしい」コンラッド


「残念 いい歌知ってるのに」ミューズ


「やぎが川に飛び込まぬようにメェーと鳴かせるのか?」コンラッド


「それだけじゃなくて みんな優しい心になるんだよ」ミューズ


「ふむ、しかしあれを食べて腹を壊す家畜が出ると困るのだ」コンラッド


「よ~し だったら僕が1曲作ろう

 ♬サンバ ビバサンバ サボテンサンバよ~ (オレ!)♬


サボテンたちがミューズの歌にあわせて 身体を震わせ踊りだしたので

コンラッドはあわてて ミューズの口をふさぎ、「オレ」の代わりに

「やめ!」と叫んだ。


「おまえ その歌は 敵が攻めてきた時にしか歌うな!

 もし攻撃されたら 「オレ!」で一斉に棘を飛ばしても良いが それ以外のときはだめだ」コンラッド


「だそうです。サボテン諸君!」ミューズは陽気にサボテンたちに言い聞かせた。


サボテンたちも 棘を出したり引っ込めたりして 陽気に応じた。


「おまえ どうせ作るのなら ゆずとかスダチの歌にしろよ

 あれらの実はどちらも健康に良いから」コンラッド


「ふうむ だったら『栄光の架け橋』の替え歌にしよう。

 オリジナルの曲と歌詞もよい歌だったから、そこにコンラッドのお気に入りの果実の名前を織り交ぜて歌えば 果樹園の実りも豊かになるだろうさ」ミューズ


「よかろう まかせた!」




・ミューズは竪琴がなくても その歌の威力は大したものでありました。


そういえば今年の春花壇は チューリップの花が昨年以上に咲き乱れました♬

特に赤・白・黄色が。


そして スミレとビオラ・パンジーたちも初夏まで咲き続けました。

(おそらく ミューズが繰り返し♬スミレの花咲くころ♬と歌ったからではないでしょうか。


桜も咲き乱れ サクランボがたくさん実りました。

 ♬春のうらら♬ ♬やよいの空♬



・それを見て、スカイとボレロは ミューズの歌にあう果樹や花木のチェックリスト作りを始めました。

 そこにミューズも加わり、清明は コンラッドやゴンといっしょに 皆の様子を眺めていました。


いちご:♬カリンカ♬ ♬野いちご赤い実だよ♬


りんご:♬リンゴの花ほころび♬ ♬リンゴ~のはなーびら~が~♬

    ♬赤いリンゴに唇寄せて♬


みかん:♬ミカンの花が咲いている♬


茶:♬夏も近づく八十八夜♬


栗 :♬大きな栗の木の下で♬

 「これは 木材用に育てる木の下で歌うのにぴったりだね」スカイ


すいか:♬名産地~♬ 


バナナ:♬バナナが1本ありました♬

 「これはだめだ 飛んで行って行方不明では食べられない」コンラッド


 「じゃあ バナナダンスはどうだ?」ミューズ

 「バナナと一緒に 皆が踊りだしそうな陽気な曲だな」コンラッド

 「いいじゃない 楽しく踊ろう♬バンナナ バナナン♬」ミューズ



「どうせなら 野菜の歌とかないんですかい?」清明が突っ込みを入れた。


「なくはないけど微妙だから その時々に替え歌するのでかんべんして~」ミューズ


「たとえば?」清明


♬にんじん 大根 かーぶら♬ミューズ


「じゃあ こいのぼりの歌を歌ったら 鯉が空を飛ぶのか?」ボロン


「それは 鯉がもっと大きく育ってから歌ってくれ!」

コンラッドがあわてて ミューズの口をふさいだ。


「小さな鯉を切ってもつまらん

 大きな鯉を 清明に空中切りしてもらって 鯉のあらいや鯉こくにして食いたい」

不満顔のミューズにコンラッドが説明した。


「それなら納得、うーん 池の魚が早く育つ歌はないかなぁ?」

ミューズは頭の中で はとぽっぽの替え歌を考えた。


というわけで 今年の春の繁忙期は 楽しく過ぎました。

※今夜8時 臨時に本日2回目の投稿を行います


(注)

「御馬の家族」は「お馬の親子」の替え歌です。


童謡に関しても 最近世代間ギャップがものすごいと感じることがあったので 念のために書いておきます。蛇足のような気もしますが。 すみません (;'∀')

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ