ゴンの誕生会
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そうこうするうちに2度目の春が来た
つまり ゴンが冬ごもりしている間に、ゴンとボロンが出会った1周年記念日が過ぎたのだ。
「僕達 人族ではないから そういうの 別にいいよね」
ゴンが ボロンの顔色を見ながら言った。
「そうだね。
むしろ 2度目の春のお祝いをしたいな」ボロン
「それじゃあ 僕がシフォンケーキを焼くよ。
ゴンは シフォンケーキを牛乳に浸して食べるといいよ。
ボロンは特大プリンを作って
清明は しっかりとクリームを泡立ててイチゴに添えるといいんじゃないかな。」
スカイはお祝いメニューを提案した。
「だったら わしは 遠出をして魔獣を捕まえてこよう」コンラッド
「僕も行く!」ミューズ
コンラッドとミューズは姿を消した。
・・スカイ式シフォンケーキの作り方・・
①ダーさん卵の黄身をしっかりと泡立て、レモンの花のはちみつを加える
②小麦粉をふるい入れる
③白身を泡立てメレンゲにして、②と混ぜあわせる
④型に流し込み 170度のオープンで30分焼く
・・ボロンのプリン・・
① 鶏卵と牛乳を混ぜて溶きほぐす
② 生クリームに砂糖を入れてしっかりと泡立てる
③ ①を湯気のたった蒸し器に入れて蒸す
蒸しすぎると素が入るので注意
③の周りにイチゴと②を飾り、黒糖シロップをプリンにかける
清明は白身を泡立てメレンゲにしたり、
生クリームを泡立て イチゴと一緒にプリンの皿を縁取った。
(剣術で鍛えた声明の腕の筋肉は こういう時 力を発揮するんだよなぁ)スカイ
・・・
コンラッドとミューズは どこかで捕まえた魔獣たちを
竜の山周辺のジャングルや森、竜の山の西側の草原に放った。
その夜の宴会メニュー
ゴン:数種の魔獣の肝臓の盛り合わせ
コン:魔獣のさしみの盛り合わせ
人達:ステーキ ジャガイモ炒め サラダ
干し果物入りのパン 紅茶
共通メニュー
シフォンケーキ&プリン・イチゴとポイップクリープ添え
シチュー
「お誕生日おめでとう!」
突然ボロンが ゴンに向かってカップを持ち上げて祝った。
「えっ?」驚くゴン
「僕たちが出会った日って ゴンの生まれた日だもの。
僕たちが出会って 1年たったってことは
君が生まれて1年たったってことだから
君は 今では1歳だよ」
ボロンが説明した。
皆も口々にお祝いの言葉を口にした。
ミューズとコンラッドも
「初めてのお誕生日おめでとう!
君にとって良い思い出になりますように」と言った。
不思議そうな顔をするゴンに コンラッドがばつの悪そうな顔で言った。
「長く生きていると ついつい自分の誕生日など忘れてしまうから。
でも おまえにとって初めての誕生日
幼いころの誕生日は しっかりと記憶に残る良き日にしてやりたい。
誕生祝を忘れていてすまん」
「時渡りをしていると 月日の数え方もわからなくなるからね。
だから その時その場所での楽しい思い出を大切にね」ミューズ
食後、みんなでジェンガを踊った。
ゴンは後ろに下がることができなかったので足踏みをした。
なにしろ ぴょんぴょんぴょんと跳ねると 城が壊れそうになったので。
片足づつ斜め前に出すこともできなかったので、
片足づつ持ち上げた。
ゴンの後ろについた人は 肩のかわりに ゴンがピンと立てた尾に手をのせた。
コンラッドの後ろについた人は コンラッドが元気よく前に後ろに跳ね回るので 十分な間隔をとって 後ろに並んだ。
スカイは、細やかな彫刻のなされたフィドルを弾きながら踊った。
ミューズは 珍しく歌うことなく踊りに専念した。
(ほかの人が奏でる音楽に身を任せるのも 案外いいもんだ。
初めての経験だけど 面白いなぁー
これが 仲間と一緒に遊ぶってことなのかなぁ。全然さみしくなくて 気持ちいいや)
ミューズの心の声が聞こえたゴンも同意した。
(楽しいね。卵の外に出てきて 生まれてきてよかった♡)
(参考)
フィドルについて
・現在ネットの検索上位に上がるサイトでは、バイオリンとフィドルは同じで、奏法が違うという説明がなされている。
しかし 古い楽器の展示では フィドルとバイオリンの違いが 明確に展示・解説において示されている。
・さらにまた 大航海時代またその前の時代の船乗りの歴史に興味がある人ならば
フィドル弾きの給与・雇用契約について述べられた章を読んだことがある人は多いのではなかろうか?
・アメリカ人が描いた作品で 「フィドル」という言葉が出てくれば、それは時代考証とは関係なく
アイリッシュ音楽と 飛びあがって片足をカチッともう一方にぶつける踊りのイメージが付いて回ると言ってよい。
・ポール・アダム作「ヴァイオリン職人と消えた北欧楽器」東京創元社文庫2019年には
ヴァイオリンとは明らかに異なる楽器として「ハルダルゲン・フィドル(ハーディングフェーレ)」についての細やかな描写がある。
楽器の外見・構造・音色についてP14~P21まで具体的に描写されているので、興味のある方はぜひどうぞ
・本文では アイリッシュダンスの足さばきを描写する語彙力が私にはないので
レッツキッスのイメージでジェンガの説明をしましたが、
コンラッドは 本来の北欧のジェンガを踊っていると思っていただければと思います
あの複雑な足さばきを4本の足を使って しなやかな全身をばねのようにはじいて踊る白狼
これぞ 月夜に踊るオオカミの決定版なのではないかと私は個人的に思っています。
ゴンがもう少し大きくなったら
月光の下で踊る白狼と
フィドルを弾くスカイの髪がまるで星明りをはじくようにきらめき
二人の上を 銀色の翼を広げてドラゴンが滑空する夜が訪れるかもしれません。
今はまだ ゴンは幼いので どたどた踊っています。




