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ドラゴンクラン 幼龍編  作者: 木苺
    エルフのミューズ
49/112

ミューズ到来

(4/9)

そして翌日・・


スカイは朝9時きっかりに表に出た。

フード付きのコートで身を包んだ女性が門の外に張り付くように立っていたので

中からどくように声をかけてから出た。


彼女は 「ミューズです」と言って手を差し出してきた。


「君ね 人の家の門の前に張り付いて、出入を(さまた)げた挙句(あげく)

 顔も見せずに手を突き出すとは 非常識すぎる」

スカイは穏やかにきっぱりと言った。


「私はエルフですから」ミューズ

「エルフだから礼儀知らずで良いとは初耳ですね」スカイ


「目立ちたくないんです」

「それは こちらも同じ」


すると ミューズはパッとフード付きコートを脱ぎ捨てた。

ビキニスタイルで竪琴を持った女性が出現した。

「私が エルフのミューズです。お見知りおきを」

そう言って 胸に手を当て 片足ひいてあいさつをした。


「して 当家に何用ですかな?」

スカイは 腕組みして門柱にもたれかかって尋ねた。


「ぜひ 魔法使いのスカイ様にお目にかかりたく」


「アポイントもなしに?」


「手紙を2度さしあげたはずですが?」


「して 返信をお持ちかな?」


「いいえ ですが 来訪の意は伝えたはず」


「話にならない。

 あなたのふるまいは 常軌を逸している。

 お帰りください」


「助けてください。」

 (すが)りつこうとしたミューズは スカイに身をかわされ、扉に激突して跳ね飛ばされた。


「いくら中に入りたいからと言って 人にとびかかるとは。

 衛兵! 不審者です」

スカイは、二人のやりとりを不審げに見ていた衛兵に声をかけた。

(この衛兵たちは 王からスカイに下賜されたこの屋敷の出入りを常に監視していたのである)

衛兵たちも ミューズがスカイにつかみかかる勢いに危険を感じて走り始めていた。


ミューズは素早くフードつきロープを羽織った。

スカイは指先を動かし、ミューズからロープをはがして、代わりのコートをかぶせ

竪琴もとりあげた。


衛兵たちには防護魔法をかけた。

衛兵たちは コートの上からミューズを捕まえた。


スカイは素早く 隊長にこれまでの経緯を話し、

彼女の素性を徹底的に調べて報告してほしいと頼んだ。

「このフードには 強い結界魔法がかかっているので

 うかつに触れると大変危険です。

 また 竪琴も強い魔法をおびています。

 ですからこれらは 私が預かります。


 また 彼女を拘束するときは 私が着せたコートの上から行なうように

 彼女の肌にも髪にも触れないことをお勧めします。


 彼女を釈放するときには 私が身元引受人になりましょう。

 常識が欠如しているのが、

 正体を隠ぺいして悪しきおこないをしようとしているのかが判明するまでは

 彼女のまなざしや声によって(とりこ)にされないように防護を固めた者しか近寄らせぬように」


スカイは彼女の周りに透明な箱を作り出し その中に彼女を閉じ込めた。

ミューズはがっくりとうなだれたまま おとなしく連行されていった。


・・・

門の中で待っていたボロンと清明は、スカイから外での出来事を聞いて唖然とした。


「少し厳しすぎやしませんか?」清明


「そこまで 彼女は強力な魔法使いだったのか?」ボロン


「得体がしれないうえに、すでに この土地周辺を警備している衛兵たちから

 正体不明の不審者と認識されていたからねぇ

 あのまま 門をくぐらせることはできなかった。


 それに王宮には あの手の人物を見破るプロがいるから

 そっちに任せた方が安全だよ。


 こちらも いらぬ詮索をされたくないからね。

 王宮からも彼女からも。


 彼女を囲った透明の箱は、外部から彼女を害することもできないんだよ

 彼女が他の者を害することができようにもなっているけど。


 だから 双方に分別があれば 平和的に解決するだろ。」


スカイの説明を聞いて ボロンは合理的判断だと同意した。

清明は いまだ半信半疑であった。


・・・

翌日 王宮から使者が来た。

 「昨日のエルフの件で伝えたいことがある。

  あのエルフを引き取ってもらえるならありがたい。

  できれば迎えの使者とともに来られたし」

という伝言つきで 王からの呼び出しであった。


スカイは、清明とボロンに後を任せて参内した。



(王の間にて)

「スカイ お主はエルフについて何を知っておる?」

王は開口一番問いかけた。


「具体的なことはなにも」


「この1000年 エルフとの交流はなかった。

 どこにエルフの居住地があるのかすらわかっておらなんだ。


 ところが 突然 エルフを名乗る者が現われて、

『時渡りをしてきたが、同族が見つからないので 探している』というのじゃよ。」


「なんですか!それ!(@_@。」


「そう まさに なんじゃ!それ!だ」


「そもそも 耳がとんがってもいない ただの美しい女子おなごがエルフじゃと?、とわしは思ったね。」


「で?」


「審問官は 彼女が嘘はついておらぬというし

 鑑定士は 彼女は正真正銘のエルフだという。

 しかし あのような者が 一人で街をうろうろしていては困る

 お主がひきとって始末をするか

 さもなければドラゴンクランの一員としてクランカードを持たせて

 町での活動を保証してくれ」


「私は 殺しはしません!」


「わかっておる」


「クランの会長はボロンです」


「なんじゃ お主ではないのか」


「クランの入会審査はメンバー3人で行うことになっています」


「ならば さっさとあの娘を連れて行って審査にかけよ。

 ちなみに お前が身元保証人にならないならあの子は消す

 クランメンバーでなければ町を歩くことは認めん」


「信頼関係のない人の行動に責任を取ることはできません

 クランメンバーとしてふさわしくない人を入会させることもできません

 それに私は 釈放されたら身元保証人になると言いましたが、

 罪人や罪科の定まらぬ人間を預かることはできません」


王はため息をついた。

「鑑定人によれば あの者は潔白だそうだ。

 しかし いかなる意味においても常識からかけ離れた者を野に放つわけにはいかん

 かといって 正真正銘のエルフをゆだねて悪用しない人物と思えるのはお主しかおらん。

 ゆえに 頼む。引き取ってくれ」


「まず 彼女の同意が必要です。

 そして 私が彼女を悪用しないことは約束しますが

 それ以外のことは何も保証できません。」


「よかろう では ミューズとやらのところに行こうか」


・・

スカイは王の後について、隣室に入った。

そこには 透明のオリの中で ビキニスタイルで胡坐をかいているミューズがいた。


「エルフのミューズよ。

 スカイを連れてきた」


王の言葉を聞いて、ミューズはふくれっ面のままそっぽを向いた。


「隣でわしらが話していたことのおおよそは聞こえていたのだろ」


「肝心なところはすべてぼかしていたよな。

 俺を殺すとか始末するとかってところは しっかりと聞こえていたよ」ミューズ


「きれいな女子おなごがそのような口をきくでない」王


「ふん!」


「君 女装男子?」スカイ


「スイッチだ」


「はい⤴?」スカイ


「その時々の気分で 男女どちらにでもなれる」ミューズ


「知ってました?」スカイは王に振り向いて尋ねた。


「この者はそのように主張しておる

 鑑定士も それは嘘ではないと言っておる

 しかし わしには この娘は娘にしか見えぬ」王


「ミューズ、王は 僕が君を一時預かって君に常識を教えろと言っている。

 しかし 今の僕は仲間と一緒に暮らしている。

 その仲間は男ばかりだ。


 君は 僕や僕の仲間に忠誠を誓い 僕達を害さぬと誓約し

 僕達と一緒に共同生活をしながら 常識が身につくまでは

 僕達から離れない、僕たちの言いつけをすべて守ると約束できるかい?」


「約束できぬなら 不憫じゃがおぬしには死んでもらう」王


「脅迫のもとでなされた誓約に意味はありません」スカイとミューズがハモッた。


「俺は 行きたいところに行くし、生きたいように生きる。

 しかし この檻の中にいるよりは スカイさんのもとに居るほうがいいな。

 もっとも スカイさんの仲間と気があわなければそのまま俺はとんずらするし

 そのことで王がスカイさんを困らせたりしないと誓うならな。」


「とんずらして 2度と「エルフ」としてこの国に姿をみせなければ

 死んだことになるからスカイを責めやせんよ」王はにこやかに答えた。


「汚ねぇ」

ミューズははっきりとした声で スカイは小声でつぶやき やっぱりハモッた。


「どうやら二人は気は合いそうじゃの」王は満足そうに言う。


「では 契約書にまとめましょう」

スカイが主導して 3人は契約をかわし それぞれサインをした。


それから スカイはミューズに 自分が渡した白いフード付きコートを羽織り目立たぬようについて来いと言った。


ミューズが同意したので エルフはオリから出され二人は王宮を出た。

 

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