進路相談
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ボーロ到着2日目は、スカイの服の仮縫い試着の後、
ウォーレンの案内でボーロの町を見て歩いた。
スカイも清明もドワーフ二人にあわせてゆっくりと歩いていたのだが
ウォーレンは人間の歩幅の広さを実感したり、話すとき二人の顔を見上げ続けて首が痛くなったようだ。
昼食はボロンのおごりだった。
スカイと清明が気を利かせて、二人連れだって用を足しに行っている間に、
ウォーレンはこっそりと ボロンに尋ねた。
「ボロンさんは あんなに背の高い人達に囲まれても どうやって落ち着いていられるのですか?」
「半分は慣れ。
あと半分は お互い友達として率直に話し合っているからかなぁ。
話すときは 少しだけ間隔を広くとって、見上げる角度を調節するとか
椅子の高さを工夫するとか いろいろと。」ボロン
「僕は人間と付き合うために あの二人と親しくなったわけじゃないよ。
親しくなった相手がたまたま人間だったからさ」
ボロンの説明を聞いて ウォーレンは感じるところがあったようだ。
「人間って 僕の父さんよりもずいぶん背が高いんですね」ウォーレン
「あの二人は 人間族の中でも背が高い方だよ」ボロン
「女性は?」ウォーレン
「ばっちゃんくらいの人もいれば もっと高い人もいる」ボロン
・・・
(ボーロ到着3日目)
スカイの新しい服も、洗いあがった清明の服も受け取ることができた。
「きれいに洗っていただいただけでなく ほころびなども直してくださってありがとうございます。
私は長らく目を患っていたので 服の手入れの仕方がさっぱりわからなくて助かりました。」清明
「あら 何日かボーロにお泊りくださるなら、そのあたりお教えしますよ」お美代
「それはそれは ありがたいお話で。
次回こちらに来る時には 改めてお願いするかもしれません。
今更 連れの者に洗濯方法を習うのも業腹ですしねぇ。
もし お願いするときには事前に連絡を入れさせていただきますので
その時はよろしくお願いします。」
清明は丁寧にお辞儀をした。
一方のスカイは、芳香蒸留水を使ったアイロンサービスを今でもやっているのか?
などなど香り系の話をいろいろ尋ねた。
清明とスカイが お美代と話に興じているころ、
ボロンはウォーレンと再度面談していた。
「ボロンさんに話を聞いていただいたあと、僕はなにをしたいのか?って真剣に考えてみました。
それで 気が付いたんです。
僕 家族から離れて 自分がドワーフよりか人間よりか悩まないですむ生活をしたかっただけだったって。」
ウォーレンはうつむきがちにぼそぼそ言った。
「ふむ」
「ぼく どうしたらいいんでしょう?」
「なにをしたいかと、種族ってあんまり関係ないんじゃないか?
採鉱が好きな人間も、栽培が好きなドワーフも何でもありだと思うぞ。」
「でも 人間とドワーフってっ暮らしぶりも違うし
種族別に住んでいる人のほうが多いじゃないですか」
「それは 便利だからじゃないか?
うちなんか 調理台一つとっても高さが~とか奥行きが~とか違いがあって
ドワーフ用のキッチンと人間用のキッチンを用意したし、
ここのギルドの宿泊所では、布団が小さい!とかって騒ぐ人がいたし
なんとなんと 人間から、「なんで怪談を怖がらないんだ!」とクレームが来たし」
プっと吹き出すウォーレン
「怪談って やっぱり 人間にとっては怖い話なんですか?」ウォーレン
「目の見えるスカイにとっては 怖い話だったらしいよ。
でも 長い間、目が悪かった清明は 怪談そのものを知らなくて
スカイの怪談に 僕達みたいなマジ突っ込みを入れてさ・・」ボロン
ウォーレンは目を丸くして笑いながら
「そっかー 違いがあるって 笑い話にもなるんですね
深刻に考えるだけじゃなくて!」と言った。
「じゃあ 僕も もう少し 自分がなにをしたいか考えてみます。
でもでも もし僕が人間よりだったって気が付いた時に 婚期を逃すのは嫌だなぁ」ウォーレン
「あのさ 30代40代になってから初めて結婚する人間も多いから
婚期については あんまり気にしないほうがいいぞ。
『一緒に居たい』と思う人に出会ってから考えたって間に合うって。
でも 自分は何をしたいか?
仕事を生活費稼ぎの手段と考えるか
自分のやりたいことを実現させるための道の一つと考えるのか?
自分の夢や希望につながる道筋にあることを仕事にしたいのか
そこは気にせず 労働環境とか人間関係重視で職場を選ぶのか?
とかいったところから考えるのは、在学中から就活期間のポイントだと思う
結局 自分的なそれぞれの要素の兼ね合いと、
求人とのマッチング&交渉で就職先が決まるわけだけど。」ボロン
「わかりました!
もう一度 新しい観点で自分の人生を考えてみます!」
ウォーレンは顔を上げて 力強く言った。




