怪談(合宿気分)
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ボロンの腹ごしえが終わり、清明とスカイもおやつを食べ終わり、そろそろおねむの時間だ。
押し入れから寝具をとりだしたスカイと清明は 再び大騒ぎ
「敷布団が短い! 掛け布団が小さい! ついでに枕までかわいいサイズ!」
「あーもううるさいなぁ
ここはドワーフ用の客室なんだから 寝具だってドワーフサイズに決まってるだろうが!」ボロン
「しかし 3つ並べても体がはみだすんですぜ」清明
「僕 寝相がよくないから蹴っ飛ばしちゃいそう」スカイ
「スカイはお得意の魔法でマイ寝具を引っ張り出せばいいでしょう。
そしたら清明も4人分の布団でなんとかなりませんか?」ボロン
「なんなら 城に送って朝に引き戻してくださいませんかね?」清明
「やだ! せっかく 同じ部屋で寝るチャンスなんだもの。
今夜はみんなで 怪談しようよ!」スカイ
「小学校の修学旅行を思い出す」ボロン
「なんですかい それ?」清明
「ドワーフ学校では5年生になると野外宿泊って言って、1泊2日でキャンプに行くんだ。
だいたい 10人ぐらいづつの班に分かれて 夜は宿泊室の2段ベットで寝るんだよ。
そして6年生になると修学旅行で1クラスづつ男女別の部屋で固まって寝るんだね。
で 必ずいるんだな、今晩は徹夜して怪談やろうって言いだす奴が」ボロン
「それそれ そういうのがあるって コンラッドから聞いてさぁ ずっと憧れてたんだ!」スカイ
「そもそも 怪談ってなんです?」清明
「怖い話 おばけーとか」スカイ
「先に布団を敷こう。夜話は布団に入ってやろう」ボロン
というわけで スカイが取り出した人間用のマットの上にスカイと清明は寝転がり
「なんか 俺だけ布団だと 段差があって 下側になっちゃってヤダな」
ボロンはぼやきながら 敷布団を3段に重ねてその上に寝た。
「ねえ ドワーフってベットを使わないの?」スカイ
「ボーロでは畳の部屋で押し入れから布団を出し入れするか
床と作り付けベッドに布団が多いかな?」ボロン
「でも 毎日布団を敷いたりたたんだり めんどうではないですかい?」清明
「どうだろ そういうのって慣れだから。
あと ドワーフは移動しながら仕事をすることが多いから
寝具を持ち運ぶのが一般的だったりする。」
「あーそうか 馬車に5つも6つもマットレスを積んで運ぶのはさすがにねぇ」スカイ
「そいうこと。
だからその分 部屋の中は土足厳禁な。
絨毯か畳か そのあたりは各家それぞれだけど、土足厳禁は共通」ボロン
「じゃあさ ギルドの宿泊室の 人間用とドワーフ用の違いってのは
ベッドか布団かってこと?」スカイ
「大当たり~。
床面積が同じでも ベッドがない分 起きている間は広々ゆったり過ごせるのがドワーフ部屋さ」ボロン
「そう考えてみると 布団生活もいいとこあるね」スカイ
・・
このあと、スカイ憧れの怪談話に興じるはずが・・
「おばけ~ 暗闇から白い腕がぬ~っと」スカイ
「なんで そんなのが怖いんですかい?
見えたほうが捕まえやすいじゃないですか」清明
「鼻をつままれてもわからない漆黒の闇」スカイ
「ずいぶん鈍感ですね。 気配がわからないなんて」清明
「どろりとした闇に押し包まれるような息苦しさの中
ぴちゃり ぴちゃりと水音が」スカイ
「そういう湿気た所に 入っちゃだめです」清明
「なんだよ 君 さっきから横やりばっかり!
ぜんぜん 怪談の雰囲気にならないじゃないか!!」スカイ
「あのさ スカイ、清明はずっと あまりものが見えない→
全然見えない中で生きてきたんだから。」
ボロンのとりなしを聞いて 「あっ」絶句するスカイ
「ふふ 私は心眼使いですから」清明
「心眼使いの 新たなアピールポイントめっけ!」ボロン
「なんです それ?」清明
「怪談退治!
闇を恐れる人の恐怖のもとを捕まえます! ってどう?」
ボロンは 番町皿屋敷を語りだした。
「『一枚 二枚・・・・』女の声が聞こえてきたら
清明が心眼で見極めてお菊さんを捕まえるなり 慰めるなりして鎮めるんだ」ボロン
「なんで そこでバッサリ切っちゃわないんだよ?」スカイ
「それだと物語が終わっちゃうだろ。
むしろ お菊さんと心眼使いが一緒になって
成敗!って悪い殿様を切りに行く方が物語としては面白い。
でも それだと犯罪になっちゃうから、人情話に置き換える」とボロン
「あのー もしかして ドワーフも採鉱とかやってる関係で
暗い状態で生活することが多いから
怪談には 突っ込みしか入れられないとか?」
スカイが 恐る恐る尋ねた。
「ご明察
ドワーフにとって 人間の怪談話というのは、突っ込みネタ特集なんだよ。
それで もうみんな興奮しちゃってさぁ
笑い疲れて寝ちゃうんだな、
それが 修学旅行の一番の思い出。」ボロン




