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ドラゴンクラン 幼龍編  作者: 木苺
序章  ボレロ・ボロン
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ボロンの履歴

(ボレロ・ボロン3/4)



ボロンは好奇心の強い少年だった。

道端の石ころも草も 本も なにもかもが好奇心をかきたてた。


幼年学校で動物の飼育係をしたり、園芸部で毎日畑に水やりをしたり

図書係になって本を整理しつつその中身を熟読したり。


中学校で天体について習えば、毎晩外に出て星を眺めたり

空の雲を眺めたり


そして 友達と遊んだり いろいろな人の話を聞くことも好きだった。


というわけで 就職先には迷うことなくドワーフギルドの配達員を選んだ。

配達員になれば 世界を旅してまわり いろいろな人と会うことができるから。


彼は採用試験の成績が良かったので、首都に送られた。

 最初の2年間は通常便の配達。

 首都のつづうらうらまで 道という道を覚えた。

 2年目から時々 首都近郊向けの特別便の配達を請け負うことができた。

 

 何もかもが珍しかった。

 同じ道でも時間によって行きかう人の姿も表情も違う

 一つの道でも首都から離れるほど周辺の様子が変わる


 3年目からは 積極的に特別便の配達を引き受けた。

 すると 局長から護身術を学ぶように指示が出た。

  いわゆる盗賊対策である。

  護身術の中には 一撃で敵を倒すことも、上手に立ち回って素早く逃げること・人に助けを求めるときの心得も含まれていた。


 「親切だが力のない人に助けを求めてはいかん

  巻き添え被害を及ぼすか、

  さもなければ助けを求められたのに助けられなったという心の傷を負わせることになるからな。」指導教官は最初の講義で言った。


「助けを求めてよい相手というのは、相手が負担を感じることなくおまえを確実に助けられる人物のみだ」


「そんな とっさにそれだけの判断がつきません」ボロン


「その判断力を養うための講義じゃよ」


というわけで、ボロンは配達業務だけでなく、非常時に備えた訓練や講義

さらに 確実に配達業務を遂行するための様々な研修を受けることにした。


そのかいあって、就職5年目からは、長距離配達や、鉱山地帯の拠点ギルドの運営を任せてもらえるようになった。


最初は街道に沿った宿場町のギルドからギルドへ行ったり来たりして

各地域特有の事情を学んだ。


そのうち 長距離特別便の輸送とギルド間の長距離通常便を兼任することにより、旅の日程調整のやりくり(裏技的なもの)を身に着けた。

 騎獣の特徴とそれらの効果的な使い分け・組み合わせについて、コストとスピード両面から考察したレポートはドワーフギルドの教本として採用されたほどだ。


鉱山地帯の拠点ギルドでは

 「男児出産母子とも順調」と言っためでたい知らせを運ぶこともあれば

 「母危篤 すぐ帰れ」という伝言とともに採掘場へ人を迎えに行き、

そのまま拠点の家族のもとに連れていく業務もあった。


 時には拠点ギルドに伝書鳥が運んできた知らせ(=重病人や重傷者の病状書)をもとに

医師や薬を緊急配達したり、逆に重傷者を迎えに行って病院へ救急搬送する仕事もあった。


 そのために ボロンは救命措置・応急手当についても、医師達から学ぶことにした。

 搬送中に人が死んでは困るから。

 患者さんに無用な苦痛を与えたくなかったから。

 なによりも 人が苦しんでいる姿を見るのが苦痛だったので

 応急処置により、更なる重症化を防いだり、回復を早めることができるなら

 それができるようになりたかったから。


当時、伝書鳥の育成がむつかしく、所轄のすべての村に配備するには数が足りなかった。


過疎地の郵便業務というのは、緊急性の高い案件が多い割に、日常業務は暇だった。

 そこで 空いた時間を利用して ボロンは伝書鳥の繁殖と育成を始めた。

 帰巣本能を用いた配達訓練には、ひな鳥の発達にあわせた綿密な教育プログラムが必要であった。


 しかし 人間同様伝書鳥の発育も個体差があった。

 それこそ 人ぞれぞれ 鳥それぞれである。


 そこで ボロンは 伝書鳥の発達指標を作って、その発達の目安に合わせて訓練課程を進めるメソッドを考案をした。


 おかげで 担当地域にあるすべての村と採掘地に伝書鳥を複数配置できるようになった。


 さらに 伝書鳥のえさに適した「伝書草」の生育に適した場所を見つけたので、

 その地域では 伝書草の産地として現金収入を得ることができるようになり

 大いに住民から感謝された。



このようにして 地域での評判が高まると、必然的に婿がねとして声がかかることが増えた。

 それが煩わしくて ボロンは 再び長距離配達(特別便)を中心とした部署に異動した。


ボロンは 嫉妬や羨望と言った人の負の感情に対処するのが苦手だった。

 だから その地でその場で必要とされる明確な目標を設定して

 その解決に向けて人々の力を結集させることは得意であったが、

 成果が見えてきた時から始まる 人々の欲得がらみのあれやこれやにかかわるのが苦痛だった。


というわけで ボロンは郵便配達という旅暮らしを始めた。

 彼はすでに実力も信頼も得ていたので、彼を特別配達に指名する顧客も多かった。

 そのどれもが 守秘性・緊急性が高かったり、非常にややこしい仕事であった。


災害地への救援物資の輸送、希少な薬品や悪用されると厄介な薬の運搬


時には、家出して何十年も他所で暮らしている息子に一目会いたい(財産分与を自分の手で円滑に済ませておきたい)という老親からの依頼もあった。

 過疎地とはいえ ドワーフギルドの所長まで務めたボロンであったから

 人物確認等の高度な認証技術の資格を保持しているからこその指名依頼であった。

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