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「ちょっとこれ見てくれ」
郵便物を整理していたボロンが 皆を呼び集めた。
(ゴンは 大洞窟の中から意識だけの参加)
「拝啓 スカイ様
せんだって スカイ様のお店でスカイ印のはちみつを購入したミューズと申します。
私は スカイ印のはちみつのとりことなりました。
先日は限定販売ということで1日で店じまいされてしまったスカイ様
どうかどうか このおいしい蜂蜜をもっと生産できるように
私にも養蜂のお手伝いをさせてくださいませ
私はエルフで生育魔法が使えます
蜂たちのために たくさんの花を育て果樹園を広げましょう。
そのための土地さへあれば。
どうか 私をドラゴンギルドに加えてくださいませ。
敬具」
ミューズからの手紙の入っていた封筒の封印及び便せんに描かれていたイラストを見てスカイは言った。
「確かに 竪琴の模様を使っているねぇ」
「でも 正式に登録されたものじゃない。
竪琴のイラストは だれでも使えるものだ」ボロン
コンラッドは 「魔法のにおいがするが種族まではわからん」と言った。
「スカイの旦那は エルフに蜂蜜を売ったんですかい?」清明
「冬だったからね、フードをかぶって手袋をしたお客さんもいたから
わからなかった」
「今も冬だけど どうする?」ボロン
「王都で面接とかできないの?」ゴン
「本物のエルフだったとして 会いたいの?」スカイ
「興味はある」ボロン
「同じく」清明
「僕も」ゴン
「契約内容による」コンラッド
「僕としては はちみつはむやみに売りたくないな。
それこそ 『土地』に関する詮索をひきよせかねない」スカイ
「しかし ブドウからはワイン、大麦からはビールが作れる
あちこちで 農産物加工品を多品種少量販売というのはどうだ?
自家消費はいうまでもなく」コンラッド
「それでも スカイ印だ ドラゴン印だと商品を販売していたら いつかは
『どこで作っている』って詮索を呼ぶよ」スカイ
「言いたくはないが ドラゴンは長命だ。
お前たちが居なくなった後も ゴンが飲み食いするに困らぬだけの食料をストックしておかねばならん。
自然に繁茂する農地も残しておいてやりたい
猟場も言うまでもなく。
だから持続的な生産活動を可能にするための開拓要員を新たに雇ったり
コネクションづくりのための 商品販売も視野に入れたほうが良いのではないか?」コンラッド
「正直に言えば 農作業をやってくれる人の増員を希望します。」
清明が小さな声で言って、「軟弱者」とコンラッドににらまれた。
というわけで エルフのミューズと王都で面談することにした。
「だけど この手紙 返信先が書いてない」ボロン
「案外 別宅の近くで毎日張り番してたりして」清明
「勘弁してよ」スカイ
「だって ドワーフギルドの引き受け場所のハンコがついてないもの
自分で投函したんじゃないか???」ボロン
「つまり郵便箱の受取スタンプを利用せずに 隙間から強引におしこんだってこと?
それは ちょっとまずいんじゃないか?」スカイ
「今後の課題として考えたほうがよさそうだね」ボロン
(町の人々は まだ ドワーフギルドに対して畏敬の念を抱いていたので
ミューズのように、郵便箱に個人的なメモを強引に押し込むような真似はしなかったが
こののち 郵便箱に自分のメモも入れられるようにしたいとい希望が多く出た。
そこから 先に述べたように、専用封筒や専用はがきの製造販売の開始につながった。
一方ミューズによるメモ押し込み事件は、
まだ郵便箱をスカイの家に取りつけだけのときに起きたことなので、
郵便箱の量産をはじめるまでに、ボロンは、郵便箱に無認可のメモを押し込めないように改良し
それを郵便箱の製造販売の雛型としたのであった。)




