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ドラゴンクラン 幼龍編  作者: 木苺
     始動!? ドラゴンクラン
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初仕事???

(1/8)

ゴンが生まれてボロンと出会って約1年

「ドラゴンクラン」が正式に発足した。


クランができたおかげで、ボロンも清明も「行方不明者」扱いされることなく

「今 なにしてる?」と詮索されることもなく

外部と接触できるようになった。


反面、ボロンとの連絡先が知れ渡ってしまったために、「心配してたんだぞ~」という手紙が 殺到というほどではないにしても かなりそれなりにボロンのもとに届いた。

(スカイの王都の別宅の郵便受けを経由して)


ちなみにこの国では「郵便」は貴重品扱いなので 必ず受取人のサインがいる

その配達記録は ギルドに記録として残る。通常は10年間、特別便は20年間。


スカイの別宅には人がいないから、どうやってサインと交換に郵便物をうけとるのか?


最初はスカイの魔力を使った魔法対応だったのだが、

クランあての郵便物が予想外に多いので、

手紙と一緒に受取伝票を差し込み、郵便受けの奥に押し込むと、伝票にスタンプが押される郵便箱をスカイとボロンの二人で作った。


この方法を「発想特許』登録、郵便箱の仕様を『仕様特許』登録したら、

召使のいない個人商店主から、その郵便箱を販売したいと引き合いがきた。


ボロンは、知り合いのドワーフ職人に注文を紹介するとともに郵便箱の作り方のノウハウを教えた。

その結果、販売希望の商店主と、郵便箱製造を始めたドワーフ職人両方からロイヤリティが支払われることになり、

さらに郵便箱がとりつけられるたびにドワーフギルド経由で特許料が振り込まれ、

ドラゴンクランを大いに潤した。


なにしろ 郵便配達はドワーフギルドの専売事業である。

そして 郵便箱の受け取り伝票を扱うのはドワーフギルドの配達員である。

つまり郵便箱の設置状況を正確に把握しているのがドワーフギルドであるから

郵便箱の特許料のとりっぱぐれがないのである。


しかも ドワーフギルドとしても 郵便箱の設置により、せっかく運んで行っても不在で再配達といったことがなくなり 配達員の負担軽減に大いに役立った。


さらに 都市住民からは、不在中も郵便を受け取れる手軽さが喜ばれ、

市内での手紙のやり取りが活発になった

 これまでは 留守番のいない家の人に確実に伝言を伝えたいと思えば、

使用人を送って、相手やその同居人が戻ってくるまで待たなければいけなかったのだが

配達証明ともいえる受取スタンプ付きの郵便箱ができたおかげで、手紙を送りやすくなったのである。

 そして 盗難除けのついた郵便箱を設置することは、受取人側にとっても、

ドアの隙間に差し込まれたメモが紛失したり、悪意ある人に抜き取られたり、伝言を受け取りそびれたりと言ったリスクを軽減することに役だった。


「必要は 発明の母なり」コンラッド


「ドワーフと魔法使いが組むと強いですねぇ」清明


「この調子で収入が増えれば ドラゴンの食費の足しになる」コンラッド


「確かに 家畜の購入費はバカにならないからねぇ」ボロン


「怪しまれないように 分散して購入するのも大変なんだから」スカイ


「人族が増えすぎて ドラゴンのえさ場がなくなったのがそもそもの大問題なのだ!」コンラッド



ちなみに、郵便箱の普及とともに、「送り付け犯罪」防止のための法改正がなされた。


 「一方的に郵便で書類を送りつけて 異議なくば成立」はNG

 ちゃんと「うけとった」という返信とともに

 双方交渉所で書類をとりかわす日時を定めてそこで契約しなければならない、と。


「社会を「便利」にするには、便利さが悪用されない様に細かい規定を先に作らないとね」スカイ


この法律関係の草案を作ったことで ドラゴンクランは王家からの依頼を一つこなしたことに記録上ではなった。

 ただし草案奏上に関しては、報酬なしの社会奉仕扱いである。



さらに、都市住民から、自分でご近所の知人あてのメモを郵便箱に放り込みたい・私的なメモも郵便箱で受け取りたいという要望が多数出た。

 ドワーフギルドの郵便箱は、スタンプを押す関係上、ドワーフ便しか受け取れない仕様になっていた。


 しかし 人々からの要望に応えるために、ドワーフギルドで販売する、ドワーフギルド認可封筒や

ドワーフギルド認可はがきを使えば、郵便箱を利用できるようにした。


 このドワーフギルド認可封筒や認可はがきの製造部門を新たに立ち上げることにより、

ドワーフギルドの雇用が拡大した。

 これは 都市に定着したいと願う若きドワーフたちにとっては、格好の就職先となった。


 郵便箱の生産に加え、スタンプインク・はがきや封筒という消耗品の生産事業にドワーフギルドが携わることができるようになったことは、雇用の持続と安定という面で大きな功績をもたらした。


 なぜなら郵便箱のような耐久品の生産にはそれなりの設備投資がいる一方で、資源を守る=製品を大切に使うという観点からは、商品がいきわたった段階で生産が大きく縮小し、修理中心に事業形態を改めなければならない。

 ドワーフの生産活動のメインが これまでインフラ整備関連事業であっただけに、

ドワーフにとっては、人々の暮らしが豊かになり人口が一定数になるということ、つまり社会の安定が

そのまま事業の衰退につながっていた。

 しかし 社会が安定し、人々が豊かになるにつれ増える生活必需品に準じた消耗品需要にこたえらえる「ゆとり産業」に直結する事業を新たに持つことは、豊かな社会になっても失業することのない労働需給の円滑な切り替えが可能になったということである。


 これは ビルド&スクラップ型の使い捨て産業社会=資源浪費・乱開発・荒廃と戦争がなければ雇用縮小から貧困化&貧富の格差が増大して廃れる文明スタイルから、柔軟に社会のニーズに対応し、人々が安定して暮らせる成熟分配型文明スタイルへ移行する足掛かりを得たことを意味する。


 これまで幾多の文明・文化の隆盛につきものの大崩壊を経て、細々と続いてきたこの星の人々にとって、

新たな未来を手するチャンスをつかんだと言っても過言ではないかもしれないできごとであった。


 ドワーフという採掘・インフラ専門特化集団が、手紙や封筒と言った都市型消耗品事業を自ら営むことについての意義について 上記のような建議書を書いたボロンの頭の中には、自分のような街に定住するドワーフ家庭で育った若者の姿や、逆に土木・建築・採鉱関係の仕事が減ったと嘆く高い技術力に特化した先生達(元棟梁たち)の姿があった。


 需給の変化にただ合わせるだけの生産体制の変化は、人の心を荒廃させるだけ

 社会の変化の行く末を見定めた生産体制の柔軟構造を構築することこそが、

 文化・文明の維持と人々の安定した暮らしと職人の誇りを守るために必要だと ボロンは説いた。


この似て非なる思想を、郵便箱の普及と生産体制に絡めて主張したボロンが、

その後数世代にわたって「先読みの偉人」と語り継がれることになったのは、これはまた別の話。


当時は 郵便箱一つに壮大な話をくっつけるとは、さすがドラゴンを追いかける夢追い人ボロンだと新たな噂のタネになっただけ。


しかし その説く所には 「実利的な利点=都市定住型ドワーフの就労先の確保」が見込まれたので

すんなりと 彼の提案は受け入れられた。

 しかも 郵便事業が拡大する=ドワーフギルドの繁栄に伴う配達人雇用の増大

 →郵便箱の普及=郵便箱製造&販売の隆盛=職人の仕事の増大

 →定住型物作りドワーフや商売を始めたいドワーフにとっても良い話なのだ。


そして ドワーフギルドからは、ドラゴンクランに対して、ドワーフギルドが運営する郵便配達事業になじむ、ドワーフギルド認可封筒・便せん製造プランの立案依頼が下った。

 これには 郵便配達員であるボロンの経験と市井の人であった清明の経験と

 王宮魔術師でもあり実は皇太子教育もしっかりとうけていたスカイの知見や

 長命なコンラッドの意見も加えて 計画を練り上げた。


 そのかいあって、ドラゴンクランは、ドワーフギルドから依頼料だけでなくボーナスもしっかりと手にすることができた。


「クランって 冒険者の寄り合い所帯みたいなもんだと思っていたのですが

 意外なところに 収入源があったのですね」とは清明の弁

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