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ドラゴンクラン 幼龍編  作者: 木苺
     出会い
19/112

果樹園

7/7

スカイの家から食料・日常品などの備蓄品は どんと城に持ち込まれた。


食料に関しては、日持ちのしないものはマジックバックに入っており

そのリストも食料貯蔵庫の壁に張り出された。


「すごいなぁ 人間2人なら10年分以上ありそうだぞ、この備蓄」ボロン


「人間二人ならね」スカイ


「大食いのフェンリルの肉の消費量はすごいよ」スカイが付け足した。


「ドラゴンは 身体が成長するまで 毎日家畜1頭は必要だ」コンラッド


「それに 家畜のえさもね」スカイ


「それに ドラゴンの健康を保つためには 新鮮な果物が必要だ!」コンラッド


「それに 君も果実は大好きだよね」スカイ


というわけで ボロンはスカイの助言を受けながら、果樹園と農園の作付け予定を作らされた。


「俺 農業経験って子供の時しかないんだけど」ボロン


「実は僕もなんだ。っていうか作業が嫌で宮廷魔法使いになったんだよ、実は」スカイ


「でも 家族で農園経営ってのも チャレンジだよ。

 チャレンジを楽しもう!」口だけは陽気に宣言したスカイ

  苦笑いのボロン


「魔力じゃなく物理で これだけやるなら、仲間を増やしたほうがよさそうだ」

あくまでも冷静なボロン


「でも むやみな人間を誘えないでしょ」スカイ&ゴン


「わかってる。あくまでも慎重にだ。

 だけど 良い出会いがあれば それは活用したいと思うがどうだ?」ボロン


「その時には 俺も事前審査させてもらう」コンラッド。

「僕も!」ゴン

「もちろん私も」スカイ

「当然だな」ボロンも同意した。


・・・

コンラッドは、ボロンが描いた敷地図を見ながら、川から用水を何本も引いた。

 フェンリルの魔法で豪快に溝が掘られ、

 スカイが繊細な魔法を使って、溝と川をつなげて水をひいた。


「念のために」と、コンラッドは川ぞいに バラやボケなど棘のある生垣を作った。

 ところどころにサボテンが生えているのはご愛敬だ。

 なんでも 風通しを良くするためらしいが。


 もちろん、門にあたる部分には 生垣がない。

 

「今は門や塀を立てずともよいだろう。

 しかし 門柱がわりに蜂の巣箱を置くぞ。」


 コンラッドは巣箱の周りに花壇も作った。

  パンジー・すみれ・ビオラ・けし・矢車草などが高低や色合いのバランスよく植えられた。


「君 センスがいいね」ボロンが感心した。

「だてに 長生きはしとらんわい!」フェンリルが胸をはった。



城に一番近い東側の用水にを挟むように馬場を設置する予定だ。

 今は厩舎だけが置かれている。


この用水の両側には ところどころパピルスや葦のブッシュをはやした。


「ここは 用水というより小川だね」スカイ

 

「しかし 森との境にある川と小川では呼び名が紛らわしいではないか」コンラッド


「なら森との境にある川を『境川』

 貯水性重視の用水を『用水』

 小川仕立ての川を「小川」と呼び分ければいいじゃないか。


 君は、用水の底面と側面を防水するにしても

 ここみたいな小川仕立ての場所と水田予定地を流れる川は、側面の上部は土手状にして、

 側面の下部にしか防水しないつもりだろう。

 畑に水を引く水路は 側面内側を上までがっつりと防水してから、

 側面外側だけを土手じたてにして」スカイ


「確かに 昨日の打ち合わせでは そう言ってましたね」ボロン


「幼い子に正確な言葉遣いの大切さを教えるためにも、用語は厳密に使おうよ」スカイ


「ふん! 念話の使えぬ人間の中で生きる魔法使いのためには 言葉の定義の正確さが重要なのだが

 いいだろう 将来ゴンが人間たちと付き合うことも念頭に入れて、

 言葉の定義にもこだわった話し言葉を使っていこうか。めんどくさい」コンラッド


(コンって すっごい教育パパだね)ボロンはこっそりとゴンに念話を送った。

(ふーん ああいうのを教育パパっていうの?)ゴン

(子供の前では 日常会話で使う言葉の一つ一つもおろそかにせず気を配る良いお父さんだ)ボロン

(でも 今 言葉遣いにこだわっていたのはスカイだよ)ゴン

(そのスカイを育てたのだコンラッドだぞ。

 きっと 子供のころのスカイの前で言い聞かせたことを そのままスカイが今返したんだよ思うな)


「そうなのだ。スカイは幼いころから優秀でなぁ。

 しかし お前たち 念話で内緒話とは 行儀悪いぞ」

コンラッドが いきなりボロンとゴンの念話に音声で割り込んできた。


「内緒話には 宮廷で慣れたから。

 何でもかんでも あけすけに言えばいいってもんでもないしね

 そこは ほどほどにね」

  スカイが優しく ばつの悪そうな顔をしているゴンとボロンに言った。


「もしかして 僕とボロンの念話が聞こえているの?」ゴン


「君たちが念話してるっぽい感じはしたけど 何を話してたのかまではわからない」スカイ


「俺も最初はそうだったが 今は筒抜けだったな。

 それだけ お前たちが俺に対して気を許したからだろう。

 ちなみに今でもスカイに念話は聞こえなかったのは、奴が聞こうとしなかったからだろうな


 人間は神獣ほど念話が得意ではないから

 聞かせよう・聞き取ろうとしないと伝わらないことが多い。

 そこをうまく利用して、対象を絞った念話を使ったり

 逆に他人の念和の内緒話を盗み聞くこともできる」

コンラッドが 親切にも解説してくれた。


「ふーん」ゴン

「勉強になりました。

 俺も ゴンに会うまで 念話って知らなかったから わからないことだらけです」ボロン



さっと尻尾を一振りしてコンラッドは言った。

「話を元に戻すぞ。

 ここでは トンボと蛍を繁殖させよう。 

 そうすれば城に住む者の目を楽しませてくれるだろう

 蛍の幼虫のえさになるカワニナもいるな」コンラッド


「だけど カワニナは1日5m以上移動可能だから、やっかいなことにならないかい?

 しかも 蛍の幼虫だけでなく吸虫という寄生虫の宿主にもなるぞ

 それに この小川の水を馬も飲むのだが・・」ボロン


「むむ ならば、蛍は 蛍専用の池を作って そこでサカマキガイと一緒に育てよう。

 巻貝を食べる蛍のほうがカワニナを食べる蛍よりも少し小さいが、

 病の元になる寄生虫は困るからのう。

 田字草(でんじそう)水金梅(みずきんばい)も植えておけば、

 花や面白い葉の形が目を楽しませてくれるであろう」



次にスカイとコンラッドは協力して敷地の北東の境川沿いに果樹園を作った。

 苗木はフェンリル提供品とスカイが買い付けてきたものだ。


魔力で穴を掘ってはそこに苗木を植えていく。

 スカイは、スコップの代わりに魔力を使って穴を掘った。

 コンラッドは 単純に穴予定地の土を空間収納して穴を作った。


ゴンは二人のやり方をそれぞれまねて覚えてから、コンラッド流の穴掘りをすることにした。


掘った穴に苗木を立てるのはボロンが手で行い、そこにスカイがシャベルで土をかけていった。

 桃 プラム さくらんぼ 柑橘系 びわ 梨 リンゴ 柿 イチジク ぶどう キーウィなど

季節の果樹がふんだんに植えられた。

 各種類1本づつは今年の収穫が見込める成木であった。



城の西側には、栗・くるみ・ビスタチオなど食用になる木の実系や

ローレル・柳などの薬用系を植えた。


「ふむ キノコも欲しいな。

 ひらたけとなめこはクルミの木にはえる

 まいたけは栗の木に生えるから

 あとはシイタケのためにコナラの木を植えておこう」コンラッド


「コナラは炭の原料にもなるな」ボロン


「ボロンもコンラッドも物知りだねぇ」ゴンが尊敬のまなざしを注いだ。



林の西側にも何本か用水をひいた。

 こちら側は菜園や畑にする予定だ。

 用水の土手には せりやヨモギが生えている。


「用水で、どじょう・かえる・なまず・もろこを育てれば食用になりますね」

ボロンの言葉を受けてコンラッドが胸をはった。「(まか)せておけ!」


「そうだ ジュンサイも植えよう。初夏に咲く、赤い花もつつましくてかわいいが、

 春先の若葉や茎もチュルンとしてうまい。

 カワジシャの若葉も食べられる」コンラッド


「それなら、浴場近くの谷間の湧水池に梅花藻(ばいかも)と一緒に植えたらどうでしょうか?

 どちらも食用にはなりますが、メイン食材というわけでもないので、家畜たちと分け合うということで。」ボロン


「梅花藻は冷たい湧き水が好きなので谷間の泉で良いが・・・

 ふむ それなら宿屋の近くに細長い生け簀(いけす)を作って そこに食用の魚を入れ、カワジシャやジュンサイも植えよう。

 それなら お前も食材として使いやすいだろうし、いずれゴンに魚の食べ方を教えるにも都合がよい」コンラッド


「だいじょうぶ カワジシャやジュンサイを使ったおつまみなら 僕が作るよ。

 昔 コンラッドに採取に行かされて料理法を教えられたからね

 拠点の近くで栽培できるなら すごく助かる。」スカイ


果樹園の南側、城の東側には、水田用の用水(小川)を掘った。

小川の東端には鴨池を用意した。

「鴨と人間の食用に シジミとタニシも育てておこう

 ついでにメダカも入れておこう。」コンラッド


「心配せんでもスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)は導入せんよ」

ボロンの顔を見てコンラッドは付け加えた。


「あれは 稲の苗を食べますし 気色悪いほど繁殖しますからね」ボロンはほっとした顔で言った。



南向きのホールの前の庭には、成龍が3頭くらい着陸して並んで歩けるくらいの空間をたっぷりとった。


庭の南端には、あじさい・雪柳などの低木系の花木を中心にところどころ、梅や椿・桜など丈のある花木も植えた。


食用のフナ・ごり・いわな・ヤマメと観賞用も兼ねた鯉の養殖池と金魚池も作った。


 池には スイレン・菖蒲・あやめ。カキツバタ・あさざ・うりかわ・こうほね・こなぎ・とちかがみなど水辺の花も植えられた。


食用になるハス(レンコン)と菱は、庭から見える用水と小川に植えた。


「水田の一部には里芋も植えよう」楽しそうな顔でコンラッドが言った。

「いずれは藤やアカシア パッションフルーツやカロラインジャスミンのパーゴラも欲しいな」


コンラッドの言葉を受けてスカイも言った、

「花や実のついたパーゴラの下で読書もいいねぇ」


フェンリルは存外花好きらしい。


(魔法使いが 人目を気にせず 造園や農業を始めると とてつもなく大掛かりになっていきそうだ)

ボロンは心の中で はたしてそれらを維持できるのだろうかと心配になった。


コンラッドは、少し考えたのち、草原を囲む境川にニジマスを放った。

「このニジマスは 終生を川で過ごすタイプだから 放流しても問題はない。

 それに 成長したニジマスにつられて熊やイノシシが森から出てくれば

 狩りの獲物にちょうど良い」


「それなら サケも放てばいいのでは?」ボロンが尋ねた。


「アユ・サケ・ニジマスの一部の種類は、川で産卵し、川で生まれた稚魚は海に出て育つ。

 うなぎは 海で生まれて 稚魚が川で育つ。

 このあたりの川は 海とはつながっていないからな。」コンラッド


「そういうことだったのですか。

 (あゆ)・さけ・(うなぎ)という希少な魚には 海が必要だったのですね!

 本には そこまで書いてませんでした。」ボロン


「ドラゴンが生きていた時代とは 地形がかわってしまったからのう

 失われた伝承も多いのだろう。」

フェンリルは少し寂しそうに答えた。

(参考)

貝の図鑑:https://kai-zukan.info/freshwater.php


ほたるについて

 https://www.honda.co.jp/hondawoods/forest/library/002/


淡水魚介類から感染する寄生虫 西川利正・三島伸介

 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsk/55/0/55_KJ00005423391/_pdf (PDFファイル)

   淡水魚や川や池で育つどじょう・カエル類やカニ・ザリガニ類からイノシシまで移動する寄生虫が居ることに驚いた

   豚もイノシシも泥の中に鼻を突っ込んで‥という描写が海外小説には多いけど・・・


水草図鑑:大阪府立環境農林水産総合研究所

 http://www.kannousuiken-osaka.or.jp/zukan/zukan_database/mizukusa/list.html


淡水魚について

 https://tansuigyo.com/famous-river-fish/ :写真大きくてみやすい


 https://tansuigyo.com/famous-river-fish/ :ごり(カジカ)について詳しい


川や池の魚料理(特集2新・日本の郷土食)農林水産省

 https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1206/spe2_01.html

  写真も豊富で読み物として心躍るのだが

  川魚の生食調理法の紹介が多くて寄生虫が心配

    養殖ものなら比較的安全とは言うが・・

    天然ものの生食はNGといわれているのになぁ。

    昔の人に胆石の痛みや腹痛で旅の途中でしゃがみ込むことが多かったのは、

    案外川魚や沢蟹の寄生虫のせいだったりするのではないかと思うのだけど・・

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