ダーさん達のお見合い事情
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ボロン達が清明の食レポを読んでいたころ、
ダーさん達も親子の会話をしていた。
「あのねえ ママ」
メリオが遠慮しいしいメリーさんに尋ねた。
「ママはどうして パパと番になったの?」メリオ
「彼はね、抱卵力がありそうだったから」メリー
「だけど 人を運ぶのも 荷物を運ぶのもダメダメで すぐに売り飛ばされそうじゃない」メリオは小さな声で尋ねた。
メリーさんは 羽を広げてメリオの頭を包み込むように引き寄せた。
「私たち家畜は 住むところや仲間を自由に選ぶことができないの。
今いる所がどんなところか見極めて そこで自分がどんな役割を期待されているか考えて 行動しなければいけないの。
私のねぐらが 多くの雄たちに囲まれた場所へと移されたときに
『あー 私は有精卵を産むことを期待されているんだなぁ』ってわかった。
だから 私は、他の鳥と争ったりせず根気よく待ち続けられる 健康で 鳥としては標準的な頭をもってそうな雄を選んだの。
それがオットーだったわけ。
まさか 番候補を選んだすぐ後に、番(仮)といっしょに売りに出されるとは思わなかったw」
「ママは どうしてオットットを番に選んだの?」
モリッコもメモリーに尋ねた。
「私は農場で暮らしていたから。
雄鳥達が 人や荷物を運ぶ仕事をしているのも ずっと見ていたのよ。
だから オットットが働き者だということは知ってた。
雄鳥達が 私たちメスの宿舎に連れてこられた時
毎年の番選びの時が始まったんだなとわかった。
オットットよりもよく働く雄も
オットットよりも強い雄もいたけど
仕事のできる雄たちの中で 彼はね
雄に対しても雌に対しても態度を変えない分別のある鳥だなって感じた。
やっぱり 番として一緒に暮らすなら
仕事がよくできるだけではなくて
抱卵も若鳥のしつけもきちんとできて、雌に対しても礼儀正しい鳥が良いと思ったから オットットを選んだのよ。」メモリー
「ねえ 僕たち雄って 選ばれるだけなの?
僕たちは 雌を選べないの?」メリオ
「それこそ 鳥それぞれさ」オットー
「どういうこと?」メリオ
「俺がいたのは繁殖農場なんだ。
つまり雌と見合いして番になるのが仕事みたいなもんだ。
何度か見合いをして 番に選ばれれば、番相手の農場に一緒に行って抱卵・子育てをすることになっていた。
何度も見合いに失敗すると食用にまわされるらしいことも知ってた。
俺の仲間の雄たちの中には
とにかく雌に選ばれようと躍起になるやつもいれば
気に入った子の気をひこうと必死になるやつもいた。
俺は 乱暴な雌と一緒になるのはいやだった
それ以上に ひどい環境で抱卵するのも嫌だった。
だから しっかりとした体格で羽につやがって羽毛の手入れが行き届いて健康そうな落ち着いた雌が現れるまで待つつもりだった。
だから最初の見合いの時は適当にやり過ごした。
次の見合いに 俺にとって理想と思われる雌がでてきたから
がんばってアピールしたよ。」オットー
「俺がいた普通の農場では、見合いは年に1度の祭りみたいなもんだから 雄も雌も自分の好みで好きに動いてたな。」オットット
「ここは 小規模な農場みたいだから、雄も雌もしっかりと仕事ができて キチンと子育てできる鳥になるよう お前たちも頑張ったほうがいいぞ」オットー&オットット
「こういう小規模農場では、雄も雌も仕事ができて当たり前
そして 飼い主様が 繁殖させようと思った時には すぐに応じられるだけの力量も必要なのよ。
繁殖用の雄が必要になった時 手元の雄が使えないと、
繁殖用の雄を購入して元からいた雄を売りに出すこともよくあるからね。
逆に繁殖用の雄の必要がなくなれば それを売りに出して
働き者の雄を購入することもあるし。
だから オットーにも 子育てだけでなく仕事も頑張ってほしいわ。
大規模農場なら、子育て専門に使われることもあるけど」メリー
「わかってるさ。
だから 俺も 若鳥と一緒の訓練に文句も言わずに従っているんだ」オットー
「家畜であるって つらいわね」モリッコ
「しかし ここは待遇がいい。
上げ膳据え膳 砂場付き。
休日もあるし、むちゃくちゃきつい仕事をさせられるわけでもない。
宿舎の掃除も行き届いている。すごく居心地よくしてもらえてる。
しかも よく働いた時にはいたわりの言葉もかけてもらえるから
やる気もでるよ」オットー&オットット
「たしかに 自分でごはんを見つけるのは 大変だったピー」メリオ&モリッコ
「そういうこと。
さ もう寝なさい」メリー&メモリー