清明の食レポ
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清明の話の大部分は 食べ物関連であった。
なんでも 清明は 筆記の練習もかねて毎日の食事記録をつけていたらしい。
日時・地名・店名・場所の説明(レストラン、大衆食堂、宿等)
料理名と値段・食材・調理法・談話と感想 の書かれた食レポと
マジックバックで保管した現物料理つきで。
なぜ 現物料理までついているかと言えば、スカイが食レポの採点するときの参考にするためらしい。
「でもね 今は スカイさん忙しいらしいから、先にミューズとボロンに レポートを読みながら料理を食べて、レポートを評価してもらえって言われました」清明
「懐かしいなぁ。
僕も 初めての場所に行った時には 必ず食レポを書いたよ。
土地の特色をつかむのに まず食べ物から始めるのが 一番とっかかりやすいからね」ボロン
「僕も 食べ歩きは好きだけど 食レポを書いたことはないなあ」ミューズ
「地域の特性を知るのは 商売の基本のキだからね。
それに 経営の基本は 報告書を書いたり読み解くところから始まるから」ボロン
「それ スカイさんにも言われましたよ。
ちなみに スカイさんは 食レポじゃなくて薬などの素材メモを 行く先々で書いていたそうです」清明
「まじめな魔法使いだなぁ」ミューズ
「ぼくは 清明が各地で買ってきた料理を味わいながら、
清明の料理に関する目利き度を判定してあげよう」ミューズ
というわけで、清明が帰ってきてからは、毎晩 各地の料理を味わいながら
清明の体験談を聞いたり、食レポを読んだり、ボロンとミューズがそれらについていろいろ質問したりして過ごすことになった。
清明の食レポを読んだミューズとボロンは驚いた。
「うーん、香りの漂い方や立ち上り方・広がり方が こんなにいろいろあって
段階があるなんて 今まで気が付かなかったよ」ボロン&ミューズ
「私もね これまで 臭いの存在の多様性は知ってましたが
それが 建物の構造とこんなに密接な関係があるなんて
はっきりと見えるようになって 改めて気づきましたよ」清明
「すごいなぁ。
君の見ている世界をもっと知りたい!
温度や湿度まで こんなに構造化できるなんてすごい!」ミューズ
「温度差や 湿度の流れは みるんじゃなくて感じるものなんですよ」清明
「でも 今の君は 感じたことをちゃんと視角と結び付けて空間描写してるじゃないか!
僕 今まで 肌や鼻の感覚を有効活用してなかったって気づかされたよ」
ミューズは ワクワクとした口調で答えた。
「清明の視点を一般化できると、
居心地のよい部屋・もっと衛生的で 腐食や汚れに侵されにくい建物の設計や、
メンテナンスポイントの発見にもつながりそうだ。
すごいなぁ」ボロンも深く考えこんだ。
というわけで ボロンとミューズは 清明の食レポの中でも
場所の説明の部分を特に熱心に読み進めた。
一方 ボロンは 清明のために、経営的観点から 調理や食材に関する突っ込みを入れたり、解説もした。
それを 横で聞いていたミューズは言った。
「料理から 地域の産物(生産構造)と流通を読み解く練習もする君たちってすごいね」
「スカイさんもボロンさんも 経営者でもあったんですね」清明