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ドラゴンクラン 幼龍編  作者: 木苺
    再び春!
105/112

ダーさん流 子育てサバイバル

(2/9)


ボロンとミューズが地上に戻った翌日

・翌朝 早速、ボロンとミューズはダーさんに乗って 白樺林に出かけることにした。


ダーさん達は若鳥の訓練のためにと言って、一家そろってついてきた。

その時 メリーさん達の夫鳥の名前も教えてもらった。

 改めて 現在ドラゴンクランに居るダーさん達の名前を書きだすと


 たまごさん(無精卵を産む 現在地底部)

 メリー ・オットー :メリッコ(地底部) メリオ

 メモリー・オットット:モリッコ モリオ(地底部)


である。


・境川を渡る浮橋だが、今まで スカイとコンラッドが共有する空間倉庫に収納していた。


しかし、地下にいる間に 神獣達だけでなくボロンやミューズも魔素の恩恵を受けることにより、

ボロンとミューズもコンラッドの空間倉庫を使えるだけの能力が付いた。


そこで、ボロン達が地上に戻る前に、コンラッドは自分の空間倉庫の中に ドラゴンクラン用のボロン・ミューズとの共有スペースを作った。


そして、浮橋をドラゴンウラン用の共有スペースに入れなおしたので、

今ではボロンやミューズも 浮橋を自由に取り出して使えるようになった。


おかげで 今回のシラカバ樹液採取でも、シラカバ林までの最短ルートで草原をつっきり、境川を渡ることができた。


「結果的に 境川を渡る橋を 移動式の浮橋にしてよかったね」ボロン


一方、今までスカイに預けていたドラゴンクランのその他の備品も

コンラッドの空間収納庫に移したので、スカイの収納負担は軽減された。


もともとスカイは いつでもコンラッドと物の融通ができるので

コンラッドが、ボロンやミューズが取り出しやすいようにアレンジした空間収納庫にドラゴンクランの備品を保管しても、スカイには何の問題もない。




・というわけで、ボロンはオットーにまたがり、人族を運ぶことに慣れていない彼に人の乗せ方を教え、

ミューズはメモリーさんに乗り

オットットとメリーさんは、自分たちの子供たちに一定の速さで走り続ける練習をさせながら、龍の草原の南端まで走った。


(この頃はまだ 念話が使えるダーさんはタマゴさん・メリーさん・メモリーさんだけで、ドラゴンクランのダーさん部はできていなかった。

 しかし ボロンもミューズも ダーさん達の会話を理解できるようにはなっていた)


境川についたので 浮橋を取り出した。


浮橋を渡るのは、若鳥だけでなく、雄のダーさんにとっても初めての経験である。

(もともと彼らは抱卵用の雄で 人を乗せて移動した経験がないので、

 自分の巣となる場所以外は知らなかった。)

 

「ピーピー怖い!」「ピーピー揺れてる~」若鳥たちは大騒ぎ

 谷底の深さを見て 浮橋に なかなか最初の1歩が踏み出せない。


 オットーも 浮橋を渡るのも 人を乗せて歩くのも初めてなので、

「背中の上の人おりてくれないかなぁ。人を乗せてわたる自信がないなぁ」

とつぶやきながら 体をゆすっている。


「何をだらしないこと言ってるのですか!

 父親らしく 子供に手本を見せなさい!」

メリーさんは オットーの尻を蹴っ飛ばした。

 ダーさんの足は長いので、はたから見ると なかなか豪快な蹴りである。


「ダ~ 俺は 今まで人をのせたことがないんだ~」オットー


「抱卵するだけでなく 子供の手本となるふるまいをする義務が 子育て中の雄にはあります!

 無能なオスは焼き鳥になりますよ!!

 そもそも乗客がいるときに 体をゆするなんて言語道断!」メリーさん。


「えーと それではまず俺が 最初にわたる」

オットットも 内心 浮橋が怖くて仕方なかったが、

仲間の夫婦喧嘩のとばっちりを食らう方がもっと怖いと思い、

見た目だけは 颯爽と見えるように気合を入れて橋をわたっていった。


「く~ 背中の人、落ちないでくださいよ」

それを見たオットーも負けじと 勢いよく浮橋に飛び乗り 走り抜けようとして、

その勢いで1枚目の板がぐんと沈み込んで、2枚目の板との間に大きく段差が開き、板の隙間につっこみかけて またがっているボロンに手綱をひかれた。


そこでいったん止まって 狙い定めて2枚目の板に飛び移ったので

板の端がぐんと沈み込み、後ろに滑り落ちそうになった。

ボロンは オットーの肩より前にぐっと重心を移して全体のバランスをとり

オットーは必死になって斜めになった板を駆け上り

3枚目に飛び移る前に手綱を強く引かれ、ボロンの脚で胴をしめつけられて立ち止まる。


それから あらためてボロンに促され、おちついて足を出し、

4枚目の板はなんとか かしぐことなくわたりきることができた。


岸につき 「だ~~~!」とカチドキを上げるオットーの首をトントンしながら、

なだめるボロン。


「ああいう 大人になってはいけません。

 あれは 悪い歩行法です。


 あんなひどい歩行をして乗客を危険にさらしたあげく、

 人を乗せたまま 興奮のあまり羽をばたつかせて騒ぐと人から嫌われて

 その日のうちに鳥鍋にされてしまいます」

メリーさんは 翼でオットーを指しながら 子供たちに言った。


「なべー なべー やきとりー それを避ける為に まじめに働くー」

メリオ&モリッコ


「そうです。だから 今から 正しいわたり方を見せます。

 私が2枚目の板に移ったら あなたたちも順番についてきなさい」


メリーさんは 一人で優雅に浮橋に踏み出した。


メリーさんは2枚目の板にわたると 立ち止まってモリッコをよんだ。


モリッコが1枚目の板を渡り始めるとメリーさんは3枚目の板に。


モリッコが2枚目の板についたら、メリーさんに促されてメリオがわたり始める。


メリオが2枚目の板に移ると ミューズを乗せたメモリーがわたりはじめ・・


無事に全員がわたりきった。


浮橋を渡り切った子供たちは 岸に並んで ミューズをのせたメモリーさんが

わたりきるのを静かに眺めた。


浮橋を揺らすことなく 二人が無事にわたりきると

子供たちは そっと羽をうちあわせて称賛した。


「いいか 雄は 食われやすい。

 それを避けるためには、乗っている人を揺らさないように静かに早く走る方法を身に着け、

 人を乗せているときは冷静にふるまい、

 子育て上手なオスだと雌から認められるようにがんばるんだ」


 オットットは羽を広げてメリオをよしよししながら言い聞かせた。


「じゃあ オットーは 卵も産めないし 人を乗せるのも下手だし

 すぐに騒ぐから

 もうすぐ 唐揚げになるの?」モリッコ


「今はまだ 訓練中だから多めに見るよ。

 でも 何度も同じ間違いをして 上手な子育ても運び屋もできないなら」ボロン


「売りに出されるー!くわれるー」モリッコ&メリオ


「オットーは 騎乗訓練の時の覚えが悪すぎて 食用に売り出される寸前に

 メリーさんに助けられたんだ。

 抱卵しかできないオスは、ヒナが育つと焼き鳥にされる危険がぐんと増すから

 メリーさんは オットーが少しでも生き残れるように 運び屋としてもがんばれと叱咤激励中」オットット


「だから メリオ、お前も早く 人も運べて雌からも信頼される子育て上手なオスになるんだよ。」

オットーはメリオに言い聞かせた。


「じゃあ 女の子は?」メリオ


「ヒナのうちからしっかり食べて体を鍛えて、

 しっかりと卵を産み続けられる健康を保ちながら

 ご主人様も安全に運べる雌に育ち

 夫選びに失敗しなければ 長生きできるよ。


 だからこそ 雄は、自分を選んでくれた雌が産んでくれた卵をしっかり抱卵して

立派なヒナにする義務があるんだよ。


 せっかく有精卵を産ませたのに まともなヒナが育たないと

がっかりとしたご主人様が すぐに雄を食べるだけでなく

雌の扱いまで悪くすることがあるからね」

オットーは メリオとモリッコに言い聞かせた。


「けっこう シビアな教育をしているんだね」ミューズがつぶやいた。


「だって これが現実ですもの。

 サバイバル術を教えて 生存確率を上げるのも親の義務ですわ」

メリー&メモリー



ボロンは 自分たちがダーさんを扱う基準が 怖いくらいダーさん達にバレていると知って ぎょっとした。

(たしかに 有精卵から生まれたヒナが役立たずの若鳥だと

 2度とその雌に有精卵を産むことを許さず、食用卵付き運搬具として使役して

 役立たずなオスとヒナはさっさと料理してしまうもんなー。

 それを ダーさんの立場から聞かされると シュールだぁ・・・)


(家畜とコミュニケーションしてしまうと 肉が食べられなくなるね)ミューズ




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