ドラゴンクラン・ノーム部発足
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ゴン1歳の冬・初めての地中探検の年から、数年後のノーム達の暮らしまで③
数年後、大ちゃんは 何人かの休眠中のノームを見つけ出し起こすこと成功した。
彼らはワーム洞窟の近くにノーム村を作った。
村といっても 牧草地周辺の壁に小さな穴を掘ってそこを各自の寝室にしただけのものである。
ノーム達は 必要に応じて生活の場を共有したり、共同作業も行なうが
基本は個人主義なのであった。
だから ゴン達が使うキッチンや浴室設備を自分たちで使ってはいたが
また キッチンを集会室、浴室を娯楽室として活用もしていたが
寝室は 各自距離を取って作った穴を個室として利用していた。
いずれカップルが誕生すれば 家族部屋もできるかもしれないが。
もっかのところシングル集団のノームであった。
ちなみに ノームはシングル時代は中性、必要に応じて性が分化して子孫を残す種族であることがわかった。
「うわぁ 人族でも繁殖形態はいろいろあるんだなぁ」ゴン
「まあな お主は わしらの姿形から ノームをあっさりと人族と受け入れてくれるが
人間たちは わしらのことを化け物扱いしよったぞ。
光に弱い、おまけに繁殖形態がちがうからと言って」大ちゃん
「僕たちドワーフは 繁殖形態が違うなんて知りませんでした」ボロン
「それは ドワーフと出会う前に、人間に迫害されていたから そういうデリケートな問題を隠すことにしたからじゃよ」大ちゃん
「ご苦労なさったんですね」ミューズ&ボロン
「わしらに冷淡だったエルフに 今更いたわりの言葉をかけられてもなぁ」大ちゃん
「ええ! エルフにも恨みがあったのですか?」ミューズ
「うーん 恨みは無いが好きではなかった。
でも おまえさんは 忌憚なくわしに接しているのはすぐに感じたからの
お主に含むことはなにもないな」大ちゃん
「すみません。何も知らなくて」ミューズ
「わしらとて 語り伝えらている大昔の話で、今 これからの関係を狭めるほど愚かではない。
伝承に基づき 最初の警戒はしっかりとするがな」大ちゃん
「我々も 村長の説得に応じて ここで新たな暮らしを始めてよかったと思っている」他のノーム達も言った。
・・
ノーム達は、羊の群れを放牧し、魔素成分たっぷりの羊乳とヨーグルトとチーズ・食用羊&「やみやみ葉」をゴンに提供した。
「ドラゴンと神獣の糞が90%以上使われた培養土」は 魔素成分もたっぷりで
その土で育った「やみやみ葉」も、その葉を食べた家畜や家畜由来食品も 魔素成分が多かった。
一方、「ドラゴン・神獣由来ではない培養土」や 何年も使われた培養土は
魔素成分が低めで それに由来する食品の魔素も少なめであった。
ノームは 魔素成分の多い食品をドラゴン・神獣用に生産して提供する一方
自分たちは魔素成分低めの食糧(羊由来・すくすく葉ほか)を作って食べた。
ノームにしろ人間にしろ、魔素成分を多くとりすぎると 魔素中毒になるのである。
エルフは魔素成分を多く摂取すれば魔力が増大したり、強い魔力を維持することができる。
ドワーフの血の濃い者たちは、魔素成分の摂取により各種能力や身体能力が増す
ボロンは ドワーフの血の濃いタイプであった。
だから ドラゴンとの念話もできたのだ。
「すべてのドワーフが ドラゴンと念話できるわけではない」コンラッド
「えっ! うそ! 知らなかった!\(◎o◎)/!」ゴン&ボロン
「だから お前たちもほかのドワーフの前では いろいろ考えて用心するのだぞ」コンラッド
「うわぁ 付き合いを広げる前に 覚えなければいけないことがいっぱい!
ぼくそんなに いろいろ気が使えるかなぁ」ゴン
「だから わしらがそばについて 物事がゆっくりと お前に無理がかからぬように流れていくよう気を使っているのだ」コンラッド
「君が一人前にデビューできるようになるまでの長い道のりの 最初の部分をともに歩めて僕は幸せだよ」ボロン
「ありがとう」ゴンはボロンに鼻づらをこすりつけた。
今では 頭をこすりつけようとすると ボロンがひっくり返ってしまうくらい体が大きくなっていたから。
一方 牛は地上に返品され、乳牛洞窟は羊洞窟と名前を変えた。
やはり 牛は大きくてノームにとっては扱いづらかったのだ。
地下洞窟で「やみやみ葉」を食べる生活をしていると、ダーさんの無精卵に含まれる魔素成分も増えていった。
それゆえ 魔素成分が基準値を超えると、ダーさん卵もゴンに進呈された。
「いやはや食品の魔素含有量を図りながら 食材選びをすることになるとは夢にも思わなかったぞ」大ちゃん
「しかし それが 結果的にわしらの健康維持につながるとわなぁ」
大ちゃんの次に起きてきたノームが言った。
ちなみ ダーさんが地上に戻り地上の飼料を食べだすと、ダーさん卵の魔素成分もなくなる。
そして 魔素成分がタマゴに出なくなってから、ダーさん達は受精卵を産んでいた。
このあたりなんとなーく 本能的にわかるらしい。
ダーさんが持つ潜在能力 おそるべし。
(もしかしたら ダーさんが魔素成分たっぷりの受精卵を産んで、そこから生まれたヒナが
魔素成分たっぷりの餌を食べて育つと怪鳥になるのかな?)
ボロンが 地上に戻ったダーさんの世話をしながら そんなことをぼんやりと考えていたら
メリオが にやって笑って話しかけてきた。
「怪鳥が育つと 俺たち産みの親であるダーさん族を真っ先に 食い物にしようと狙ってくるからな
そういうことにならないように 俺たちも卵を受精させる前には しっかりと確かめているよ。
昔は 地上にも 魔素だまりが多くあったからな。そのあたりのことは心得ている。」
あわてふためくボロンに ダーさん達は羽をばたばたさせながら言った。
「平和共存が私たちのモットー。
ドラゴンクランは私たちと同じく平和共存を大切にするクランだから 仲間になったのよ
これまでだって 人族と平和路線を維持してきたでしょ」
ははー と平伏するイメージをボロンはダーさん達に送った。
・・
ノーム達は、光の洞窟の栽培容器を甕から水耕栽培用のプランターに変更した。
これは一端から水を灌ぐとプランター全体に水が流れていくので、省力化につながった。
新しいプランターと水循環システムはボロン達が作って スカイの甕と交換した。
「すくすく葉」はノームの主食となった。
備蓄分を作ったあとは、毎日 食べきることのできる量きっちりに すくすく葉を栽培した。
水耕栽培であることと、すくすく葉の性質から そのあたりの生産調整は やりやすかった。
ミューズやボロンが地下を訪れるときだけ、すくすく葉の生産も増やした。
ノーム達は ワームやダーさんを見習い、「ドラゴンクラブ ノーム部」を結成して
ゴンとコンラッドとミューズ・ボロンの盟友となった。