洞窟牧場のその後 :ワーム部
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ゴン1歳の冬・初めての地中探検の年から、数年後のノーム達の暮らしまで②
牧草地の土は、ワームが作った「ドラゴンと神獣の糞が90%以上使われた培養土」である。
超栄養たっぷり。
豊かな土壌で繁茂する「やみやみ葉」は、すぐに 地中で暮らすダーさんと乳牛の腹を満たすことにできるようになった。
一方 ワームは「どうせ食べるならドラゴンと神獣の糞だけでいい。ほかの生き物の糞などいらない」と
駄々をこね始めた。
実は、培養土欲しさに ワーム1匹には十分すぎるほどの神獣の糞を渡してしまっていたらしい。
そこで、ワームの数を増やすとともに ワームたちと協定を結んだ。
「今後 継続的に神獣の糞を提供する代わりに、ワームは与えられた糞をきちんと食べて消化して
土壌に変えていく。
『神獣の糞=ごちそう』を提供するかわりに、
ワームはその他の物質を豊かな土壌に変えるお仕事をする。
ワームの安定した生活環境を提供する代わりに ワームはドラゴンのゴンに従い、ゴンの盟友の指示に従う」という協定と盟約を結んだのだ。
最初のワームは 仲間が増えておしゃべりできるようになったので精神的にも満たされたし
いつも快適な暮らしが続くならそれでいいと納得した。
実のところワームだって どんなにおいしくても同じ味ばかりだと単調だなぁとは思っていたのだ。
というわけで、コンラッドとミューズは ワームに与える餌の量が多くなりすぎないように調節しながら
ワームによる土壌生産を計画的に進めていった。
諸般の事情を考慮して、ゴン達が地上で暮らしているときのフェンリルとドラゴンの糞も、マジックバックで一時保管しながら順次地中のワームに送ることになった。
(地上のドラゴン用のバイオマスの利用終了である)
「あーん 排泄のたびに魔法利用なんて めんどくさーい」ゴン
「まったくだ。
しかし 人族のいる世界で長生きしたければ 排泄物を隠さねばならぬのだから
一人前のドラゴンになるまでに 身につけねばならぬ習慣ではあったのだ」コンラッド
「でも せっかく僕専用のトイレがあったのにぃ」ゴンもワームをまねてちょっとごねてみた。
この件に関しては、スカイとボロンの協力により、一定の時間ごとに定量だけ転移できる魔法陣を開発することで対応した。
この新式魔法陣をゴンのトイレにとりつけて、ミューズとコンラッドの空間魔法も組み合わせて、
地上のゴン用トイレ(通常は龍の草原に設置)や地中のゴンのトイレ(寝室の隣の洞窟に設置)から
自動的にワームの処理場と空間倉庫に振り分け転送できるようにした。
その振り分け設定方法も ゴンはミューズとコンラッドからしっかりと教えられた。
特に地上のトイレと地中のトイレの切り替えを忘れることのないようにと きっちり念押し注意された。
「それにしても転送量を一定に保つために 自動的に空間倉庫からも中身を引き出せる魔法陣を組むなんて
あきれたよ」ミューズ
「しかたないだろ。
わしらは休眠中=飲まず食わずの時は 出さないもの
その間も やつらに働いてもらうためには 報酬となるおやつは提供せざるをえまい」コンラッド
ワームたちは 提供されるおやつ(神獣の糞というごちそう)の増減は気にせず、
その他の廃棄物も土壌に変えるという「お仕事」にも、せっせと励んでくれた。
ワームたちの消化能力は一定しているが、時間や量の感覚がアバウトなので、
適度な間隔でおやつが出現すれば その量の多少は気にならないらしい。
「ワームたちの感覚がアバウトで助かった」ミューズ
「むしろ あれほど原始的な生き物が自己主張して駄々をこねて交渉してきたことの方に
わしは驚いたぞ」コンラッド
「これも 魔素の影響かのう」大ちゃん
といった具合に ドラゴンクラン・ワーム部も発足した。
ちなみに、ノーム達が出すもろもろのゴミ処理を継続するために、彼らが排出するごみが予定量よりも増減するときには きちんとコンラッドに報告する決まりになっていた。
ノームが出す排出量の増減にあわせて、フェンリルから発送する排泄物の量を調節する為である。
(なんで 神獣のわしが こんな面倒なことをせにゃなんのだ?
子育てのための環境整備とは ほんまにめんどいわい
予期せぬことまで考慮・調整せねばならんから)コンラッドはため息をついた。
こどもの成人後のことまで考えて 環境づくりに励むコンラッドは、やっぱり子煩悩であるかもしれない。
(コンラッドは ボロン亡きあとも ノーム達がゴンのよき友で居てくれるようにと願って
ノーム達の安定した暮らしの保証も考えていたのである。
その為 洞窟暮らしのノームの食糧確保=持続的農業・牧畜が可能な豊かな土壌の維持=ワームの生育環境を整えることを重視したのであった。)