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俺が投稿している無料小説投稿サイトへのコメントがおかしい

作者: 高山小石
掲載日:2021/07/23

「あーまたか」


 勉強疲れのストレス発散に、俺は無料小説投稿サイトに妄想を小説化して投稿している。

 その程度なので、PVはそこそこ、評価もおさっしだ。

 コメントなんてものはまず書かれない。


 それが最近コメント欄がおかしい。


 俺が投稿しているサイトでは、なにかしらアクションがあると通知が来る。

 『コメントがつきました』そこまではいい。

 「よっし!」と喜んで見に行くとコメントがないのは、いったいどういうことだろう?


 最初はこう思った。


 自分もスマホでたまにやってしまう。

 評価を入れたつもりが押しすぎて一周していて評価できていなかったり。

 ブックマークするつもりがなかったのに間違ってブクマしてしまって、慌てて取り消したり。


 急いで本来の状態に戻すものの、たまたまその瞬間を相手が見ていたり、知らされる機能があると、きっと「んん?」となる、悪気のない押し間違いだ。


 俺もうっかりしたときは、相手に申し訳ないと思いながら、気づいた時点ですぐ直す。

 だから、コメント欄もそういうのと同じだと思っていた。

 自分があまりコメントすることがなかったから、そう思っていたんだ。


 でも、どうやらコメントは、評価やブクマとは違うのがわかってきた。

 コメント欄なのだから、なにかしら書かねば送ることさえできないのだ。

 二段階認証みたいな感じ……いやまぁだいぶ違うけど、とにかくワンクリックでは送れない。


 それで誤送信などあるんだろうか?


 まぁないことはないだろう。

 スマホが手から落ちた瞬間に、布団か服かに触れてコメント欄が開き、床に置いてあるカバンか足にでもぶつかってコメント欄に意味不明な文字列が記入されて、スマホを拾い上げる時に画面に触れて送信ボタンを押してしまうコンボ。


 あとからうっかり送信していたことに気づいた送り主が慌てて消している、のかもしれない。

 

 と。

 最初はそう思っていたんだ。


 でもここ最近、そんなことがずっと続いている。

 いくらなんでも俺の小説ページを開いてる最中に何人もスマホを落とすとは思えない。

 しかも毎回、押し間違いコンボが発生するはずもない。

 そもそもそこまでの人気作でもない。


 かといって、俺も無料小説投稿サイトを一日中チェックできるわけじゃない。

 当たり前だけど授業中はできないし、投稿していることを学校でオープンにしていないから、昼休みや放課後もできない。

 学校にいる間はメール通知を受け取って、心の中だけで「やった」と思うだけだ。


 実際に確認できるのは、朝起きてから学校に着くまでと、学校が終わって帰る途中から寝るまで。

 俺が確認できない時間に「コメント有り」な通知があって、喜んで見に行く頃には消えているというわけだ。


「なんなんだ……」

  

 実害はないけどモヤモヤする。

 どうやらこんな状況になっているのは俺だけのようだから、無料小説投稿サイトの不具合というわけでもなさそうだ。


 そして今日も、俺は通知に一喜一憂するわけで。


「あーもーっ。いったいなにが書いてあるんだよ! 消すくらいなら初めから書くなよなっ」


 それは翌日判明した。


 たまたま部員の中にコロナと濃厚接触者が出たからだ。

 部員全員PCR検査を受け、結果が出るまで自宅待機になった。


 休み中の課題をもらったのは嬉しくないけど、平日昼間もスマホを手元に置くことができる。


 自室で課題を広げた机に向かいながら、俺は気になっていた無料小説投稿サイトのページを開いた。

 コメントが書かれていた。


-----

 私とのお付き合いをこんなに赤裸々(せきらら)に書くなんて

 二人だけの秘密だって思ってたのに

 あのことだけは書かないで

-----

  

「は?」


 いやいやいや。なんだコレ?

 感想じゃないだろ? 妄想じゃん。 

 俺は誰かとの付き合いを書いてなんか……。


 コメントが書かれていた小説のタイトルを見てギクリとした。


 これ、一瞬つき合って別れた子との話をネタにしたヤツだ。

 当然ながら、登場人物の名前は俺もその子も本名から変えているし、話の内容だってかなり盛ってるから別物になっている。


 え……まさかその子からのコメント?

 いや、本人じゃないよな。

 だって俺、このサイトに投稿してるとか話してなかったし。


 でも、その日はそれ以上スマホを(ひら)けなかった。

 その間に、いつものようにコメントは消えていた。


 コメントされたタイミングが日中だったので、その時間を狙って、学校のトイレでスマホをチェックすることにした。


-----

初めてのデート、私とっても嬉しかった

飲み物をひとくち味見したこと、ケーキをひとくちもらったこと

向かい合ってるだけでも緊張したのに

すごくドキドキした

-----


「それは俺じゃない!」


 俺はトイレの個室で叫んでいた。


 悪いけど、あの子に限らずデートでそんなことはやってない。

 定番だから、そういう内容を書いてはいたけど、俺はどっちかっていうと潔癖だから、誰かと食べ合うなんてダチ相手でも無理なんだよ!


 ということは、この書き込み主はあの子じゃない。

 この勝手に勘違いしてる書き込み主は誰だ?

 誰がこの小説を自分とのことだと誤解してるんだ?


-----

 ふるえながら海を見た

 ポケットに誘ってくれた手がちょっと汗ばんでいたから

 心はあたたかくなった

-----

 

「ほんと誰なんだよ……」


 確かに小説では意外性のために冬に海を見に行く話を書いてたけど、現実の俺にそんな経験はないし、行く気もない。

 海に行くなら断然夏だろ!

 水着の女子を楽しみたいんだよ!


 なんなんだ?

 こんなコメント書いて、なにがしたいんだよ?


 俺の懸念(けねん)をよそに、謎のコメントが書かれるこの小説は、なぜか最近PVが増えてきた。


 コメントの内容を読んでいなかったときは定期的に更新できていたけど、コメントを読むようになってからは更新が(とどこお)りがちになっているにも関わらず、だ。


 PV詳細で確認したら、コメントが書かれる時間帯が急激に伸びていた。


「もしかして、このコメントを読みたいがために増えてんのか?」


 じゃあ俺が書いてる小説の価値ってなんだ?

 なんで俺のとこにわざわざコメントするんだよ?

 コメントしないで自分で本文として書いたらいいじゃん!


 相手が見えない怖さと嫉妬と(いきどお)りで、俺は無料小説投稿サイトを退会した。


   ※


「あ~~! 消えてる~!」


 スマホを手に何回も検索をかけるが、お気に入り作家のページは見つからない。


「面白いからもっと人気出るようにと思って、ヒロインの心の声をポエム調でコメントして、でも邪魔にならないようにすぐ消してたのに~。そのかいあって最近PV伸びてきてるぅって思ってたのにぃ~」 


 コメントを読んだ読者はコメントがすぐに消されることもあって、作者公認の演出だと思っていた。

 だから、誰一人として消えるコメントについて語る(ツッコむ)者はいなかったのだ。


「ま、いっか。別の推しは~っと」


 彼女の善意のコメントは幾人ものネット作家を恐怖におとしいれた。

 反対に、彼女のコメントに気づいて活用するネット作家もいた。

 だから彼女はひっそりと存在し続けた。


 彼女のハンドルネームは確連報(かくれんぼう)

 皮肉なことに、確認も連絡も報告もせず、勝手に推し作家を推す存在だ。 




これが私の精一杯……。

(もっとどろどろ展開にしたかったけど怖くてできませんでした)


検索した限り、これを書いた瞬間、『確連報』なペンネームの方はいらっしゃらなかったですが、もしいらっしゃったら、微妙な役どころでごめんなさい。

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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして。地獄への道は善意で舗装されている、という言葉もありますから、悪気がない、というのが一番怖いのかもしれませんね。楽しく読ませていただきました。
[良い点] 面白いですね! こんなこと、想像もしていませんでした。 コメント、ご感想などが知らないうちに消えていたら、怖いです。 推してくれなくてもいいですよ?って言っちゃいそうです。 ありがとうご…
[良い点] >評価を入れたつもりが押しすぎて一周していて評価できていなかったり。 そうなんです! 推しに星を送っているつもりが、星を送っていなかったことに気がつくあの恐怖!!! スマホのタップは、…
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