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千夜学園の女神さまっ!! ///  作者: 影咲シオリ
第1章 神頼み
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第4話 僕は彼女のルールを知らない

★ようやく出会えた神様はちょっと変わった女の子だったけど、でもなんだか凄そうなので大丈夫だ


「すごく聞きづらいことだから、最初に聞いちゃいますね? あのうぅ、これってお金かかるんですか。料金とか報酬とか、それとも対価とか生贄とかそういう奴です。もちろん僕にできることならお礼はするつもりですけど……養殖真珠のネックレスとか地元の有名なあんころ餅……それと良く合う伊勢の茶葉とかじゃ……ダメですよね」


「ハンッ。最近の若者は実につまらないことを言うものだね。神様というのは人間の願いを叶えるから神様なんだ。下手な遠慮はかえって失礼になることも覚えておくといい。そんなことより勿体ぶるなよ、意地が悪い。イージーゴー・イージーカムだよ、キミの悩みとやら洗いざらい全部話しちゃおう」


 神様は自分の机に腰を下ろすと、足をばたつかせて零斗を急かす。


「神様だから願いを叶え?る ただ、それだけですか?」


「そうだよ。何かおかしいことを言っているかな。私はね、自分が神様だってことを皆に分かってもらいたいんだ。だから、一番手っ取り早い方法をとっているんだ。これは特別なことじゃない。誰だってそうさ、藤原君」


「それは僕もってことですか。僕は別に……」


「誰だって自分が自分であると証明するために生きている。ボクはそう思うけどな。さて、実はね。君みたいな心配性の相談者のために、パンフレットを作ってあるんだよ。さぁ、ご覧あれ」


 と彼女は一枚のパンフレットを取り出す。A4のその紙にはスタジオ・ジ〇リ調のキャラクターたちが手書きされており、全体的に可愛らしいパステルカラーの色取りで、真ん中には大きく赤い文字で料金ゼロ。その下にその他一切経済的負担はございません、と添え書きされている。

 しかしよくよく見ると、さらにその下に黒い文字で3つの条項が書かれていることに気付く。


【 一つ 叶える願いは神様が決めるよ 】

 

 叶える願いを神様が決める? それってどこかおかしくないだろうか。零斗は疑念の表情で神様の顔を覗き込む。


「なぁに、別に君を騙そうとかそういうわけじゃないさ。ただ単に、お金が欲しいみたいなのをボクは願いとして認めないだけだよ。お金なんてものは代替物でしかないからね。母親の手術のために闇医者に支払う報酬が必要だとか、月に行きたいからロケットを作る費用がいる。そういう具体性があって、初めてそれは人の願いといえる。それに、叶えてしまえばキミ自身の人生を破壊してしまうようなのもダメだ。例えば、アメリカ大統領になりたい……なんて願いはやめておけというよ」


「ただ、女の子に会いたい……みたいなのでもいいんですか!?」


「最高じゃないか! 僕が叶える願いはキミ一人では解決ができない、でもキミ自身が解決しなきゃいけない。キミだけの願いだよ。君が見たもの、聞いたもの、感じたもの。そういった体験から生まれる悩みや願いだ。だから、恋の悩みはいつだって、最高なのさ。キミが何日も真剣に悩んだというなら、それはきっとボクが叶えるべき願いだと保証するよ」


 可愛くウィンク。なんでも許してあげたくなるような、茶目っ気たっぷりの。


「恋の悩みってわけじゃないですけど、安心しました」


 零斗は胸をなでおろし次の一行へと目を向ける。


【 一つ どうやって願いを叶えるかは神様が決めるよ 】


 願いを叶える方法は神様が決める? それってどこかおかしくないだろうか。疑念の表情で神様の顔を覗き込む。


「ボクは屁理屈こねて、さぁ願いは叶えてやったぞなんて性悪な魔神のようなことは言わないよ。トラブルの解決についてはプロフェッショナルの中のプロフェッショナルなのだよ。ボクがベストだと思う解決方法が最善に決まっているんだ。自慢ではないけれど、顧客満足度は100%を超えているんだ。今まだ一度だって、不満をぶつけられたことはないと断言できるね」


 清々しい顔で、白い歯を見せて親指を立てる。全部自分に任せておきなという自信たっぷりの笑み。


「僕は彼女にもう一度会って、写真を手渡したいだけですから、方法なんて何でもいいです」


 零斗は心配しすぎだったなと反省し、最後の一行へと目を向ける。


【 一つ 願いは必ず叶えるよ 】


 願いは必ず叶える? それって……どこもおかしくない。でも、だからこそ疑念の表情で神様の顔を覗き込む。


「途中下車は無しだ。キミの願いは絶対に叶える。キミがそれを望まなくなってもね」


 零斗には無関係に思える第3の条項。それが何故か重々しいものに感じられた。


「もちろん。他人を巻き込む以上、自分の都合だけで諦めたりはしませんよ」


 零斗は固く握った拳を突き出し、強い決意のほどを神様に示す。


「よし、いい顔をしてるじゃないか。さて、最後にこのパンフレットは実は契約書になっているんだ。ここにサインと遺伝子押印をお願いするね」


 パンフレットの裏側を向けると、凝った意匠もなくただ黒い文字で


【本件サービスの内容につき十分な説明を受けたことを確認し、今後一切の異議苦情を申しません。また、本件に関し生じたい一切の損害はいっさい賠償を請求しないことを誓います】


 と記載されていた。


「あの実家を出るとき母から、変な契約書にだけはサインをするなって言われたんですけど……」


「大丈夫だ。これは変な契約書じゃない。ちゃんとした契約書だ。なぁに、ただのコンプライアンスさ」


 これはまずいと思いながらも、渋々契約書にサインをする零斗。


「大事なのはボクとキミの間の信頼関係だ。そして信頼関係がなくても何とかするさ。ボクは神様だからね。さらにいうと本音を言えば契約書にサインもいらない。それだってボクにかかれば『後でどうにでもなる』。ボクは神様だからさ」







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