表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/128

寒い時代、恐ろしい時代だね

ジェットエンジン比較

・日本:ネ20 推力約472kg

・イギリス:ウェランド 推力7.1kN (730kg)

・ドイツ:ユンカース・ユモ004 推力8.8kN (910kg)

・ソ連:実験版のみ実用版無し

日本人技術者甲「ユモ004を模造(コピー)したのに、なんでこんなに性能低いんだ?」

日本人技術者乙「耐熱素材が上手く作れないんだよ。

 材料有っても冶金技術が追いついてない。

 量産すると更にバラツキ出るぞ。

 やっぱり基礎工業力をもっと高めんとダメだわ」

 ドイツ第三帝国総統アドルフ・ヒトラーは考えていた。

(折角減った人口だ。

 戻してやる事は無い)


 これはドイツ人に対しての考えではない。

 ドイツ人、オーストリア人、更に北方ゲルマン人であるノルマン人たちは彼の同胞だ。

 減って嬉しいのは、スラブ人やその他の民族である。

 彼等はドイツが占領した東方領土に住んでいる。

 ヨーロッパが氷河期化して食糧生産力が低下している。

 彼等を食わしてやる義務を、支配者は負うものなのだが

「お前に食わせる黒パンはねえ!」

 と変顔で言ってやりたいくらいだ。

 どうせポーランド、ウクライナ辺りはもう穀倉地帯として使い物にならない。

 生産性の無い土地に人だけいても、無駄飯食らいである。

 だったら居ない方が良い。

 独ソ戦で折角大量に死んだのだ、これをあえて救ってやる必要は無いだろう。


 ヒトラーの著作「我が闘争」で二等、三等と定義された民族に対してすらこれである。

 敵対者とされた民族はもっと悲惨であった。

 ポーランド南部に建てられたアウシュヴィッツ強制収容所は、1940年5月から稼働している。

 ここでは毒ガスの実験等もしている。

 だが、より工場のように人を処理するのはアウシュヴィッツ第二強制収容所ビルケナウの方だ。

 こちらは1941年10月から稼働している。

 ここには輸送鉄道が通っていて、ドイツ各地から人が荷物のように運ばれて来る。

 そして処理場に送られる。

 そこは外から鍵が閉まる、宿泊施設であった。

「ここに寝ろ」

 そう言われ、毛布も与えられず、マットレスも無いベッドに寝かせられる。

 まあ建物の中だから親切なものだな、収容された者はそう思った。


 甘い。


 夜中になると、屋根の部分が自動で開放され、寒気が入り込んで来る。

 マイナス35度の寒気が空腹かつ強制労働で疲れて動けなくなった者たちの上から降り注ぐ。

 しかも、床下には換気扇がついていて、効果的に寒気を循環させる。

 天井に張り巡らされたパイプからは、霧が下で寝ている人に向けて吹き付けられ、一層凍りやすくする。

 霧と共に麻酔としても使われる笑気ガスも使われ、眠ったまま氷漬けにされていく。

 ドイツ人らしい、無駄に凝ったギミックの殺人施設であった。


 こうして殺された者の肉は、缶詰の豚肉としてドイツ占領地域で売られる。

(流石にドイツ国内へは流通させない)

 剥いだ身ぐるみは、ドイツ国内の慈善団体に寄付。

 貴金属や金歯は回収して再利用。

 この行為は、非公式に「フリッツ・ハールマン計画」と呼ばれていたという。


「絶滅収容所とか、作る必要すらない」

 ヒトラーは気づく。

 鉱山労働とか凍結河川の掘削作業をさせた後、屋根の無いキャンプ場で野宿させれば、それだけで良いのだ。

 親衛隊が大量に犠牲者となるべき者を連れて来る。

「おい、この〇〇野郎、

 よく聞け、いいか、

 ここをキャンプ地とする!」

(※〇〇にはユダでもジプでも何でも好きな単語を入れてみましょう)

 そのように髭のSS将校に宣言され、やせ細った男たちは文句を言う。

「ただの……ただの道端じゃないですか。

 道端で寝るんですね」

「あの、食事は?」

「飯より宿だ!」

「宿って、何も無いじゃないですか!」

「ゲッティンゲンに連れて行くって話じゃなかったんですか?

 なんでゲッティンゲンに行かないんですか?」

総統フューラーが行かねえって言ったんだよ」

「負けねえぞ!

 僕ぁねえ、最後まで望みを捨てないんだよ。

 君みたいなのはねえ、雪山で遭難したらまず死ぬぞ」

「いいよ、あと数時間だけ付き合ってやるよ」

(どうせその時間を過ぎたら、へらず口も叩けなくなるだろう)

 そうして、僅かに開いた窓から入り込む寒気の為に眠る事も出来ず、まんじりともせず寒いから膝を抱えた姿勢のまま、恨めしそうにドイツ人の方を見つめたまま死んでいた。


 ドイツではこうやって白人によって同じ白人が殺されていく。

 一方、インドもまた悲惨であった。

 こちらは人種差別、民族離間政策込みである。


 インド大暴動は収拾する気配を見せない。

 裏ではソ連が糸を引いている。

 悟られないように。

 ソ連の関与が目立たないのは、ドイツが背後に居るのが目立つからだ。

 旧時代のドイツ製小銃が大量にインド国内に出回り、特徴のあるドイツ製手榴弾が商店とかに投げ込まれる。

 イギリスは部族や藩王(マハラジャ)の国、宗教等で細かく分割し、お互いに憎しみ合うようにした。

 そのカラクリをネタジ・チャンドラ・ボースが暴いた。

 だが、対イギリスでは共闘しても、それ以外の場面では憎しみは消えていない。

「豚肉食えねえっつってんだろうがよ!」

「てめえこそ牛肉使ってんじゃねえよ!」

「ああヤダ、肉食う野蛮人どもが」

「シーク教は黙ってろ!」

「てめえら、ぶっ殺す!」

 このように纏まらない。


 こういう内紛に付け込み、イギリス軍は一地区、また一地区と制圧する。

 インドは広いから、まだ全土制圧には至らないが。

 地区を制圧したなら、徹底的な軍政を敷いた。

「これはインド人に対する差別ではない、区別だ。

 インド人はヒトラーという詐欺師に踊らされ、アーリア人という名に戻ろうとした。

 好戦的で危険な人種である。

 ゆえに我ら英国(ブリタニア)によって教育されなければならない!!」


 この態度が更なる暴動を呼ぶ。

 インド解放戦線は、あちこちで敗れながらも抵抗を続けている。

 だがインドは地域による独立性が高い。

 ベンガル支部とセイロン島支部では地域の特色が違い、更にセイロン島支部でも仏教派とイスラム教派で利害が異なる。

 ボースのカリスマ性で何とか統一戦線を作れているだけに、イギリスとしては彼を排除すれば何とかなるのではないか、等と暗殺計画を立てたりしている。


 軍事的にはイギリスはドイツに大苦戦しているし、

 ドイツは気候と資源的に苦しい状況にある。

 ソ連も物資はともかく食糧は、将来手に入れたい満州の為に現在の備蓄を食いつくしている。

 日本は海外領も含めて、逆に熱帯化による水害の禍を受けながら、劣る国力でソ連と戦争中。

 どの陣営も苦しい。


 日本はソ連以外とは戦争をしていない。

 ソ連は情報統制国家である。

 極めて厳重に情報を秘匿し、弱みを見せない。

 だから日本人は、

「数年耐えて、ソ連が飢えて戦えなくなるのを待とう」

 という事を考え付かない。

 共産主義を過大評価した結果、

「世界で最も進んだ、資本主義の一歩先を行くソビエト連邦が破綻する事は考えられない。

 ソ連は、あの世界大恐慌の時も全く影響を受けなかった。

 計画経済によって順調に繁栄していっている。

 何とか早期に講和に持ち込まないと、発展するソ連に負けてしまう」

 そう思い込んでしまい、必死に世界中を駆け回っていた。


 日本人は、ヨーロッパかぶれになるか、逆に白人の凄まじい差別を前に亜細亜主義に転じてしまうか、そんな癖があった。

 外国を知らない、ウブなところがそうしていた。

 日本を亡ぼさない為に、外国を飛び回るそうした日本人たちは、やがて現実を知る。


 哲学と芸術の国、文学も法律も科学技術も医学も進んだ世界最高の国・ドイツ。

 その実態は、白人至上主義で、黄禍論を内に持ついけ好かない国であった。

 今のドイツは、わざわざメイドさんをあてがったりもしない。

 逆に秘密警察(ゲシュタポ)を使って監視すらする。


 経済学が発展し、世界で最初の産業革命を起こし、世界中に領土を持つ超大国・イギリス。

 その実態は、栄光は今や昔、ドイツに押されて苦戦し、その癖弱い相手には高圧的で、かつ狡猾で二枚舌、三枚舌を平気で使う腹黒紳士であった。

 ここの非白人への態度は、それは酷いものであった。


 だが、非白人にも失望をしてしまう。

 義憤から同情を寄せたインド人は、隙があれば騙そうとして来るし、激しい身分差別があり、かつ極めて怠惰な上に自分の権利を主張する時は口うるさい。

「オレ、オレ、そうインド解放戦線のオレ。

 親が人質として捕まってしまい、身代金が必要なんだ。

 どうか資金を用立てて欲しい」

 そう言われ、騙されて金を持ち逃げされる日本人も出る。


 また、中国大陸ではソ連の支援を得た蔣介石が、講和条約を破って宣戦布告して来た。

 支那人は約束を破る、信用出来ない、彼等と共に立つ事は有り得ない。

 日本人は失望する。

 本来なら、裏切りに激怒した日本軍が再び成都に居る蔣介石を攻め、兵力を分散してソ連の思う壺となるのだが、開戦が早まった為に先にソ連との戦争に突入し、大苦戦を強いられている為、

「蔣介石になんか構っている余裕は無い!

 暴れたいのなら、勝手に暴れさせろ。

 あんな水浸しの土地に用は無い!」

「汪兆銘政権に支援だけしておけ。

 まあ、あの僻地から中原に出て来られるとも思えんが。

 一号作戦の時、海軍の短艇を借りてようやく移動出来た我々の苦労を、今度は奴等が思い知るだろう」

「……中原まで奪還しても、今年も麦は壊滅しているがな」

「ていうか、確か現地の人間に泣かれたんだろ?

 日本軍は去ってくれるな。

 日本軍が居なくなったら、誰が堤防を直してくれるんだ?って。

 自分たちでやれよな!」

 こんな感じで、裏切りは腹立たしいが、昨年の内に中国の大地から足抜けに成功していた事もあって、まだ靴下も乾かぬ内に泥沼へ踏み込む気は無いようだった。


 中国の民衆の他力本願さに呆れるのと同じような感情を、蘭印や馬来(マレー)に資源買い付けに行った日本の商社マンたちも持つ。

 白人たちの支配はえげつない。

 だが、一部の政治犯、つまりは独立運動家を除き、多くは極めて無気力である。

 支配を唯々諾々と受け容れている。


 こうして、勝手に同情し、勝手にアジアにも失望していく。

 技術や経済で、ヨーロッパと縁は切れない。

 ソ連に太刀打ち出来なくなる。

 ヨーロッパの技術の進歩は凄まじく、縁を切って江戸時代のように世界から遅れてしまっては大変だ。

 あのアジアの民のように、牙を抜かれて地面に這いつくばるような者に、日本人を堕としてはならない。

 しかし、勝手に憧れていたヨーロッパにも、勝手に幻滅する。

 彼等は口で言う程に、文献で見る程に、立派な人間ではない。

 むしろ人間としては腐っている。

 あれ程酷く、他人を蔑む事や、人を家畜のように処理していく事は、日本には出来ない。

 我々が他の有色人種と違い、それなりの待遇を受けているのは、偏に大日本帝国の強さによる、

 大日本帝国が立憲君主国であり、世界三大海軍(いまや二大海軍)国の一角であり、東亜で唯一海外領を有する大国だから、ドイツもイギリスも、イタリアもスペインも、敵であるソ連すら一定の評価をしているのだ。

 この地位を失ってはならない。

 ヨーロッパ諸国の風下に立ってはならない。


 西洋哲学や文化に憧れていたインテリ大学生だった者たちも、

 亜細亜主義を信奉し、現地人たちを解放し、手を携えて白人を追い出そうとした者たちも、

 崇拝していた者も救おうとした者もどちらもクズだと実感し、

 次第に現実という情報で、自分たちの夢と理想を上書き更新していった。

※「〇の錬金術師」のバリー・ザ・チョッパー的な人なので、

そっち系興味あるなら「フリッツ・ハールマン」で調べてみて下され。


※欧州人も亜細亜人もクズと書きましたが、自分たち日本人にだってクズな部分あるし、

欧州人にも亜細亜人にも日本人にも良いとこと悪いとこが不可分で共存してると分かって

やっと成熟した国民になるのですが、そこまでは多分書かないだろうなあ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >謎肉缶詰 部位に頭部が含まれてたら、販売区域でクール―病が流行しそうですね(阿鼻叫喚 数年後には情緒不安定で突然狂乱する人間が出てきそう
[気になる点] 未だ12歳の現実日本より賢くなった?
[良い点] ドイツの政策えげつない!でも史実を知るとありえるから怖い。 占領地で売られる豚肉缶……いいえ、私は遠慮しておきます。 そして気になっていインド大暴動!流石に英国を追い出すほどは行かなかった…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ