表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/128

英豪遮断作戦

日本海軍艦隊編制

■連合艦隊

・第一艦隊(戦艦部隊):呉

・第二艦隊(重巡部隊):昭南シンガポール

・第三艦隊(軽巡部隊):フィリピン攻撃中

・第四艦隊(対ハワイ警戒部隊):サイパン島

・第五艦隊(アリューシャン方面):幌筵島

・第六艦隊(潜水艦部隊):横須賀

・第七艦隊 何故か飛ばされて、編制されず

・第八艦隊(新設:南太平洋方面):暫定的にブルネイ

・第一航空艦隊(空母機動部隊):昭南、ペナン島


■支那方面艦隊

・第一遣支艦隊(砲艦部隊)

・第二遣支艦隊(砲艦部隊)

・第三遣支艦隊(砲艦部隊)

・上海方面根拠地隊(水雷艇部隊)

・青島方面特別根拠地隊(水雷艇部隊)


■海上護衛隊

・第一護衛艦隊(日本本土~昭南航路担当)

・第二護衛艦隊(日本本土~南洋諸島航路担当)

・第三護衛艦隊(日本本土近海担当)

・第四護衛艦隊(九州~沖縄・台湾航路担当)

 蘭印(インドネシア)全土を占領し、軍政を敷く第16軍の今村均将軍は、現地では好評であった。

 彼はインドネシア人を登用し、権限を与え、政治も行政もやらせてみている。

 兵たちにも軍紀を守るよう厳命し、現地人への横暴には厳罰をもって当たった。

 日本本土で物資が不足しても

「インドネシアは独立国となる。

 決して日本がオランダに代わって支配者になるのではない。

 だから日本によるインドネシアからの搾取は決して許されない。

 今はともかく、将来対等の国となるのだ。

 なれば、正当な商取引によって物は売られるべきものなのだ」

 そう言って、無条件で日本に何でも渡さないよう指導した。

 例えば本国から、衣料用の白木綿輸入を打診して来たが、今村は現地の生活を圧迫する事と、死者を白木綿で包んで埋葬するインドネシアの宗教心を傷つけるとし、要求を拒否した。

 今村の施政を調査しに来た政府高官は

「原住民は全く日本人に親しみをよせ、元支配者であるオランダ人も敵対を断念している」

 と高得点を付けている。


 だが、これを批判する者もいる。

 もっと厳しく統治すべきである。

 捕虜とした白人たちに自由を与えるとはどうした事か。

 もっと皇軍を尊敬するよう、現地人を教導せねばならん。

 等等。

 こうした如何にも軍人軍人した思考の者以外でも、今村に対し反発した者が居た。

 軍需大臣岸信介である。

 彼の統制経済は、綿密な輸入・輸出の物品管理、生産調整、生産物の適正な分配、価格の調整等で行われている。

 日本の支配地域では、岸の統制に従って生産や輸送をして貰わねば困る。

 なのに、今村はインドネシアの為に動き、彼等が絶対に損をしないように指導している。

 そうなると、入って来るべき物が入って来ない、来るべき時期から遅れて届く、予定と異なる価格で取引される為、価格が高騰してしまう等の問題を引き起こす。


 軍内の軍国的思考の者と、岸たち経済官僚の不満が東條英機に寄せられ、今村はインドネシアの占領司令官、軍政担当を外され、第16軍を率いてラバウル攻略に駆り出される事となった。

 まあこれは、単なる懲罰人事でもない。

 速やかに作戦を進行するには、内地から兵を送るよりも、近くに居て既に動員完了している部隊を使った方が良いのだ。

 内地で動員された部隊は、今村の後釜として蘭印に駐留する。


 イギリスはオーストラリアの海軍を増強していた。

 かつてのアメリカ合衆国には及ばないまでも、イギリスも大量生産の国である。

 都市名(タウン)の名を冠したタウン級と呼ばれる軽巡洋艦は10隻が建造された。

 次の怪物(ダイドー)の名を冠した防空巡洋艦は11隻が建造されている。

 直轄植民地(クラウン・コロニー)級も11隻が就役している。

 その他の級を入れて軽巡洋艦は44隻となる。

 イギリスは性能より隻数、戦闘能力より航洋能力を重視した為、重巡洋艦には力を入れていない。

 それでも重巡洋艦は全級で20隻が第二次世界大戦では使用された。

 日本海軍は建造中・換装中も含め重巡洋艦18隻、軽巡洋艦20隻で1940年を迎えた。

 巡洋艦戦力において、イギリスは侮れない。

 この巡洋艦戦力をオーストラリア海軍に分け与え、南太平洋において日本に対する圧力をかけている。


 そこで日本海軍は新たに南太平洋を担当する艦隊を編制し、オーストラリア海軍に対抗した。

 イギリス海軍が軽巡洋艦主体である為、質で凌駕する為に重巡洋艦部隊となる。

 貴重な戦力を割く事になる第一艦隊、第二艦隊は渋い顔をしたが、新合衆国艦隊を念願の近海決戦で打倒した今、使わない戦力を抱えていても意味が無い。

 第二艦隊は昭南市と改名されたシンガポールを拠点として移り、重巡としては古い型になる「古鷹」級と「青葉」級を割いて第八艦隊が新設された。

 旗艦として、艦隊指揮能力向上の為に大型艦橋を持つ重巡「鳥海」が割り当てられる。

 更に一個水雷戦隊と、多数の駆潜艇部隊が配属された。

 この駆潜艇部隊こそ本命である。

 オーストラリアにある基地から英軍潜水艦が出撃し、資源地帯と日本を結ぶ航路を脅かしている。

 その為、インドネシアの多島海やニューギニアの海を抜けて来られないよう、駆潜艇を使う。

 駆潜艇だけだと強化されたオーストラリア海軍に撃破される為、重巡部隊を置いて睨みを利かせる。

 更に巡洋艦部隊は、珊瑚海やタスマン海にも進出し、南太平洋航路の移民船団や商船を脅かす。

 如何に「日本の熱帯化はチャーチルの欺瞞」という意見が野において蔓延っているとはいえ、ヨーロッパの氷河期化は紛れもない事実である。

 政府及び軍部は

「勝つ為には色んな手を尽くすが、本気で英豪を遮断してしまい、無辜の避難民を海に沈めるのは可哀想だ。

 それに、豪州からの食糧が無くなると、後に引けない英国が本気になってしまう。

 適当な所で戦争を終えるには、余り追い詰め過ぎても良くない」

 なんて、甘い考えになっていた。

 この辺はドイツと大きく異なるだろう。

 基本的に戦術での撃破しか考えていなく、避難民を殺しまくろう、これは戦争なのだ!という非情さに欠ける。

 戦果を焦る部分と、敵に情けを掛ける部分、こういう部分を合わせ持っているからチャーチルなんかが理解に苦しむのだろう。


 こうして今村将軍の部隊と第八艦隊とで、ニューブリテン島をまず攻略。

 ラバウルを占領してここを拠点とする。

 第八艦隊はソロモン海~珊瑚海~アラフラ海と遊弋し、オーストラリア海軍の出方を見る。

 しかしオーストラリア海軍は動かない。

 チャーチルから

「決して日本海軍の挑発に乗ってはならない。

 決戦に応じてはならない。

 艦隊は存在し続ける事に意味がある。

 敵への攻撃は潜水艦に任せ、水上部隊はただ日本軍に圧力を掛け続けるだけで良い。

 それだけで日本軍はこの方面に兵力を割かざるを得なくなる」

 という訓令が出ていたからだ。


 敵が出て来ないのを確認すると、第八艦隊は一旦ラバウルに帰投する。

 ここでニューギニア攻略の為の本隊を待つ。

 名将今村将軍は

「ここは本国から遠く離れている。

 補給に負担を掛けてしまうだろう。

 今、敵が出て来ない内に畑を作り、食糧くらいは自給出来るようにしておこう。

 それと要塞化を進め、損害を減らすようにしよう」

 とラバウルの恒久基地化を始めた。


 こうした動きに、イギリスは混乱する。

 日本の目的はインド方面だと見ていた。

 だが、オーストラリア方面に彼等は現れ、腰を据えて攻撃準備を始めている。

 情報戦には自信があるイギリスだが、流石に担当方面が多過ぎて全てには対応し切れていない。

 もしかしたらインド方面は欺瞞で、オーストラリア方面が本命ではないのか?


 チャーチルはまだ日本を彼の常識内で判断しようとしている。

 普通に考えたら、日本がインド方面に手を伸ばすのは不可能だ。

 補給が続かないだろう。

 そして、オーストラリア攻略も国力からいって無理なのだ。

 この無理を2つ重ねる事は有り得ない。

 インドとオーストラリアを同時に攻める等、経済も戦略も知らないドアホウの所業だろう。

 だが、オーストラリアの孤立化なら可能だ。

 あそこは要は、どでかい島のようなものだ。

 海上封鎖すれば、オーストラリア大陸内に攻め込まない限り、無力化が可能である。

 優勢な日本海軍の力を持ってすれば、絵空事ではない。

 それによって何が得られるのか?

 ヨーロッパからの避難民の行き場が失われ、イギリス本土への食糧も断たれる。

 それだけだ。

 代替は可能だ。

 オーストラリアも重要であるが、失陥しない限りどうにでもなる。

 インドの方が色々と痛い。

 インドそのものより、そこから中東、更にはアフリカにまで「日本がやって来て独立をさせてくれる」「イギリス軍は弱い」と波及してしまえば、大英帝国というものが一気に崩壊しかねない。


「日本の国力からインド侵攻は不可能です。

 オーストラリアの海上封鎖は可能です。

 この狙いとしては、我々の艦隊を釣り出す事ではないでしょうか?」

 それが陸海空軍で出した「日本軍の戦略」であった。


 オーストラリア封鎖をすると、イギリスは困る。

 それだけでなく、無理を承知でオーストラリア大陸への侵攻も伺わせる。

 するとイギリスは救援部隊を差し向けるだろう。

 この救援部隊を南太平洋で迎え撃ち、艦隊決戦の勝利をもって戦争終結を狙っているのではないか。

 日本からオーストラリアは遠い。

 しかし、イギリスからオーストラリアまでは更に遠い。

 シンガポールを失い、セイロン島からも退いたイギリス海軍からしたら、オーストラリア救援は遥か南米回りか、元パナマ運河の海を突き進むしかない。

 南米回りだと中継地はフォークランド諸島、中米回りだとバミューダ諸島となる。

 両方とも大した基地は無い。

 遠征の疲労のピークで、日本海軍の迎撃を受ける事になる。

 まして、日本軍はニューブリテン島を基地化しているという。

 そこでじっくり待たれたら、世界最強のイギリス海軍と言えど敗れるだろう。


「考えられる事だ。

 日本はロシアとの戦争も、バルチック艦隊を撃破して終戦に持ち込んだ。

 彼等にとって艦隊決戦は、戦争終了への唯一の方法なのだ。

 ならば我々としては、日本に釣られない事が肝要だ」

 チャーチルの言に、三軍の司令官たちは頷く。

 どんなに挑発しても、日本軍はオーストラリア全土を占領なんか出来ない。

 精々、沿岸のダーウィン、ケアンズまでだろう。

 それだって、恒久的な占領は不可能だ。


「もしも調子に持って、オーストラリア大陸を進んで来たなら、砂漠地帯か中部のブリスベン手前辺りで迎え撃て。

 現有戦力で十分に勝てる。

 まあ、万に一つもそんな場所での陸戦なんて無いだろうがな」

 つまり、イギリスが救援を出さずとも、オーストラリア大陸内でならオーストラリア軍だけで勝てる。

 第一次世界大戦時、オーストラリアとニュージーランドから派遣された合同軍ANZACは「西部戦線の連合国軍最強」を謳われた。

 補給線の延び切った日本陸軍に負ける事は無いだろう。


 かくしてチャーチルは理知的に考え、見事に日本の意図を読み間違えた。

 インド方面は欺瞞。

 オーストラリア方面は、本国の軍を釣り出す為の挑発。

 引き続き守っていれば日本は打つ手が無くなる。

 その方針を全戦線に通達した。


 そしてインド・ビルマ方面から上がって来る日本軍の集結情報を無視する愚を犯す事になる。

おまけ:

日本は資材難である。

大破した艦はそのまま直せない場合もある。

だが、何としても戦力を増やしておきたい。

そこで、とある数学の天才と称される主計参謀が、壊れた艦同士でパーツを交換するといった、「数学じゃなくて足し算、奇策というより無理難題では」「画期的じゃなく、英国もやってたよな」というものを提案した。


その結果こうなった……

「戦艦『山城』が大損害を受けたのはどの箇所だった?」

「うーん、煙突より後方全部だね」

「空母『龍驤』が損傷したのは?」

「艦首及び艦底部だね」

「もう一つ質問して良いかな。

 航空戦艦『龍城』って、どうやって造っているんだ?」

「君のような勘の良い士官は嫌いだよ」


(悪魔合体というより、龍驤の設備流用した航空戦艦「山城」といった感じです。

 煙突より後は、「龍驤」の飛行甲板と格納庫乗せる為に総改造といった見た目です。

 「龍驤」は推進器系と艦底・舵機・スクリューがボロボロで直すのが面倒なのと、

 トップヘビーが酷いのでもっと安定した艦に乗せ換えた方が良いという考えもありますし)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] もしかしたら、もしかしたならば、何もかもがうまく、大日本帝国の目論見通りに転がり史実日本惨敗ルート回避するのではあるまいか?(笑う口元を抑えながら) 続きが楽しみですw [気になる点] …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ