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碇ちゃんの学校生活  作者: 紅葉日向
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第2話:入学式です!(後編)

 そうこうしている間に空っぽだった席は上級生であろう人たちで埋まり、入学式が始まろうとしています。

 ふと、隣を見れば禮さんは何か考えている様子で俯き、飛鳥さんは禮さんの膝の上で寝てしまっています。碧さんは紙の文庫本を読んでいるようです。

 なんだか、入学式らしくありません。まるで、休み時間です。周りも似たようなもので、騒がしくはないものの、各々目立たず好きなことをしているようです。そうして、私が人間観察に集中している間にいつの間にか入学式は終わってしまいました。何を話していたのか一言もわかりません。

 禮さんたちは二、三年生が礼拝堂から出ていく音で終わったことに気づいたようです。

「飛鳥、起きなさい」

 と、禮さんは自分の膝の上で寝ている飛鳥さんを揺り起こします。

「むにゃー」

 っと可愛らしい飛鳥さんの返事を聞き微笑みます。一方、碧さんは未だに文庫本を読んでいます。すごい集中力です。

「ほら、碧ももうすぐ出るわよ」

「はいよー」

 っと名残惜しそうに本を閉じます。

「このあとはどのような予定なんですか?」

 私が聞くとやはり、禮さんが答えてくれます。

「例年通りなら、クラスでのホームルームでの挨拶のあと、解散のはずよ」

 今気が付きました!私、自分のクラスがわかりません。担任は椎名先生という中性的な人のようですが、はたして皆さんとは一緒のクラスなんでしょうか?心配です。

「おい、お前たち行くぞー」

 っと、椎名先生の号令で一年生全員が立ち上がり、先生に続き礼拝堂をあとにします。私も禮さんに押されて流れでついていっていますが大丈夫なんでしょうか?ちょうど前に先生がいますから、聞いてみることにします。

「先生、質問をしてもいいですか?」

「なんだー、碇か。そんなにかしこまらんでいいぞ。で、なんだ?」

 少し怖いです。ですが、勇気をだして、答えます。

「私はどこのクラスなんでしょうか?」

「へ?」

 っと、気の抜けた返答に私も驚きます。

「あーっと、知らないのか?全部説明した手紙を送ったはずなんだがなー?」

 全く身に覚えがありません。

「うちの学校は一学年一クラスなんだ、なにせ、一学年20人前後しかいないからな」

 なんで、私は気が付かなっかたのでしょう。確かにそうでした。でも、私の不安はなくなり、安心しました。

 広い廊下の途中、先生は立ち止まり、無機質な壁についている、カードリーダーにカードをかざします。

 すると、扉が浮き出るように現れ開きました。

(なるほど、光学偽装壁ですか)

 やはり、この国の開発力は凄まじいですね。社会的な制度は進歩していませんが技術だけは世界一です。

 私は先生に続きぽっかりと壁に空いた長方形の穴へ入っていきます。

 教室の中はアニメや映画で見た日本の教室といった感じではなく、どことなくオフィスを感じさせます。おそらく、机自体が比較的大きいのと、薄い灰色を基調としたデザインのためです。

 私は、先生に促されて座、窓際(窓と言っても映像が映し出されているものであり、今は桜の舞う日本庭園らしきものがうつっている)の一番後ろの席に座りました。隣には碧さんが、前には禮さんが座っていて、その隣の席では飛鳥さんが寝ています。

「よーし、ホームルームを始める。今日からお前らも高校生だが、みんないい子だからな、特に言うことはない」

 先生は私達のことを信用しているのか、面倒くさがり屋なのかわかりません。

「去年と変わったことと言えば、みんな気がついているだろうが転入生が入った。碇、前に出て自己紹介しろ」

 私は席を立ち教壇へと歩いていきます。私はこんな瞬間が苦手です。クラスメイトの視線が痛いほど私に突き刺さります。気が昇って思考が飛びそうです。

「今年からお世話になります、碇薫子と言います。よろしくおねがいします」

「ということだ、みんな仲良くな。聞きたいことは沢山あるだろうが、放課後にしてくれよ。よーし、碇、席に戻れー。じゃあ、始めに宿題を集め...…」

 なんとか、最低限の言葉を出すことはできましたが俯いてしまっていたので変に思われてしまったのかもしれません。

 そんな、心配をしているといつの間にかホームルームは終わりかけていた。また、話を聞いていませんでした。周りを見れば飛鳥さんはお昼寝中、碧さんは読書中、唯一まともに聞いているのは禮さんだけです。ホームルームが終わったら聞いてみましょう。

「委員長号令を」

 と椎名先生がいうと私と真反対、入り口に一番近い眼鏡の子がみんなに起立を促します。全員(飛鳥さん以外)が立ったことを確認すると

「ごきげんよう」

 と言い、あとに続いて私達も

「「「「ごきげんよう」」」」

 と言って私達は放課後を迎えました。

 私は一瞬さきほどの先生の『聞きたいことは沢山あるだろうが、放課後にしてくれよ』との言葉を思い出し身構えましたが、禮さんたち四人以外は話しかけてきません。やはり、変な子だと思われてしまったのでしょうか?そんな心配をよそに禮さんは

「学院に来たのも久しぶりだし、上のお店でお茶していかない?」

「上ですか?」

 今私達がいるのは三〇階です。この上はもう学校の施設ではありません。どういうことでしょう?

「そうよ。五一階にあるのよ。確かいまは期間限定で外国の有名チョコレートショップが出店しているはずよ。碧はいくでしょ?」

「もちろん行くぜ」

「碇さんも時間があるのだったら一緒に来ないかしら?」

「えーっと」

 一瞬、待たせている美琴のことを考えますが、甘味の誘惑が勝ってしまいます。美琴には後で連絡すれば大丈夫でしょう。

「行かせてもらいます」

「よかったわ。いろいろ聞かせてね。さあ、飛鳥おきなさーい」

 と、寝起きの飛鳥さんを連れて四人で教室をあとにします。面倒なことに一旦下に降りてから、別のエレベーターに乗り換えないといけないようです。

不定期更新です

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