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碇ちゃんの学校生活  作者: 紅葉日向
1/2

第1話:入学式です!(前編)

初投稿です。

 私は碇薫子。中学三年生。じゃなくて、今日から高校一年生です!

 車を降りた私は運転手の佐々木さんにお礼を伝えて、エレベーターホールに入ります。

「緊張しますぅ」

「えーっと。学校は25階から30階で、礼拝堂は30階ですね」

 私は手元のMETAeta、通称『板』で学校の情報を再確認しながらエレベーターを待ちます。

「へー、学校が休みの日は結婚式もできるみたいですよ。ねぇ、美琴はここで結婚式したいですか?」

 私の従者従者(バレット)の美琴に板に映っている礼拝堂の画像を見せながら聞くと、いつものように顔色を変えず、無表情に答えます。

「私には結婚願望はありませんよ、お嬢」

「例えばって話じゃないですか。相変わらずですね」

 私は笑いながら到着したエレベータへ乗り込みます。美琴は女性にすごくモテます!しかし、運転手の佐々木さんなどの男性の使用人の方々からは怖がられているようです。

 優しいし、ユーモアのある人なんです。男性の方はあまり話す機会が無いのですから理解できないのもわかります。

「お嬢、このエレベーターは六階以上には行けないようです」

「どうしましょ。行けるエレベーターとそうでないエレベーターがあるのでしょうか?とりあえず一回降りましょう」

 ため息をつきつつ、板でこの建物『八本木ヒルズ』のフロアマップを開いて美琴にも見えるよう、空中投影を開始しました。

「三階に学園専用の入り口がありますね。行きましょうか」

 以前にも何回か見たのですが、やはり構造が複雑です。この森タワーだけでなく、周囲にも複数の建物が建っている上に敷地自体も広いのです。私のお家よりも一〇倍以上広いのですから把握しきれるはずがありません。

 しばらく歩くと、学園入り口と書いてあるゲートがありました。板の個人確認APPを美琴のと一緒に起動し、ゲートにタッチしましたが通り抜けられません。さらに、引っかかった所に、後ろから来た美琴と一緒にこてんっと転んでしまいました。

「お嬢、すいません。怪我はありませんか?」

「大丈夫です」

 と答えながら美琴に助け起こされます。

「新入生の方ですか?中等部の入学式は午前中のはずですよ」

 優しそうな、柔和なお姉さんが心配しながら話しかけてきました。

「わわわ、わ、わたs、わたしわわた」

 パニックです!みっともない所を見られてしまった上に勘違いを訂正しなければと、言葉がまとまりません。

「お嬢は高校生だ」

 美琴は相変わらず無表情ですが、少し強く言いました。

「そうなんですか、失礼しました。なにぶん転入生というのは聞いたことがないものですから」

 そう、八星女学院は中高一貫校である上に、名家の人間しか入学が許されません。ですから、高校からの編入は私が初めてであるらしいのです。だから、このお姉さんが勘違いするのも仕方がありません。決して私が小さいからではないはずです。

「自己紹介をしますね。私は九条禮と言います」

「わわ、わた」

「落ち着いてください。ほら、息を吸ってー、吐いてー」

「すいません、ありがとうございます。私は碇薫子と言います」

「碇さん、よろしくね。ここを通るには専用のカードが必要なのよ。貰ってない?」

 やっと落ち着きを取り戻した私は今朝、母から貰った封筒があることを思い出しました。

「そうでした。美琴、鞄から封筒を取ってください」

 美琴が差し出した封筒を開けるとそこには、学園への行き方のメモとカードが入っていました。学生証と書いてあります。

「そう、それね。それをタッチするの」

 今どきカードですか?と言いいそうになるのを控え、美琴が拾ってくれた板でカードをスキャンし、内部データをコピーします。それを立ち上げた新規APPにドロップしてカードの役目は終了しました。

「思い出した。それ、METAetaでしょう。経済誌でみたことがあるわ。日本では使えないはずだけど……」

 この日本では板自体が普及どころか売っていないのです。理由は、使えないから。板は板を通じて通信を行います。換言すれば、情報のバケツリレーです。そのせいで周りに板のない状況では能力が制限され、使えないとされています。しかし、この国の人が使う『スマートフォン』という見た目は板に似ている省エネな端末に比べ、遥かに上回る性能を発揮できるのです!

「Wi-Fiを使えるようにしたので問題ありません」

「使えるように?あら、もうこんな時間、行きましょう」

 禮さんに続いてゲートを抜けますが美琴をわすれていました。

 見ると美琴が無表情に手をこちらへ伸ばしています。少し怖いです。

「メモには従者は学院内には入れないと書いてあります。終わり次第連絡しますので待っていてください。幸いにもここは時間を潰すのに最適な施設ですから」

 と言い残してエレベーターに乗り込みます。止まるのは学園のあるフロアのみのようでスイーッと登っていきます。

「そういえば、禮さんは何年生なんですか?」

「私は4年よ。高校1年生。」

 ...…どうやら、同級生のようです。仲良くなれたのはいいのですが、ちょっとショックです。

 放心している間に30階につきました。広々とした廊下を抜け突き当たりにある礼拝堂に入ります。

「わー」

 思わず声が漏れてしまうほどの美しい光景が目の前に広がります。日の光に照らされた室内はまるでクリスタルの中にいるような光景です。

「きれいでしょ、私もここ好きなのよ」

 ふっふーんっとまるで自分のことの様に自慢する禮さんを見て、この学校がいいところだと確信します。

「生徒は整列してください」

 見とれていると、教壇に立っている神父らしき人が言います。そういえば、私のあとに入ってくる生徒はいなかったので、私が最後だった様です。あっちでは早い方だったのですけどねぇ、と考えていると私は一体どこに並べばいいかわかりません。いつの間にか禮さんはいなくなっています。

 どうしようかとパニックになりつつあたりをキョロキョロしていると、私を見て、手をおいでおいでとやっている神父が目に入ります。

 ほぼ整列し終わっている生徒の間を抜け、たどり着くと

「椎名先生、碇さんが来ましたよ」

 と神父さんが私の担任の先生らしき人を呼び出します。

 現れたのは、雰囲気は美琴に乙女らしさを足したような、かっこ可愛い若い女性です。

「ごきげんよう。私はきみの担任の椎名実生だ。とりあえず後ろの方に座っといてくれ」

 わかりましたと返事をしつつ、また入り口の方へとんぼ返りです。とりあえず後ろの方と言われましたが三人がけの木製の椅子は余っていません。正確に言えば二列分が丸々余っているのですが、おそらく二,三年生用の物でしょう。

「あれ、碇さん?ここに座わりますか?」

 といつの間にかどこかへ消えていた禮さんが2人で座っていたところを詰めてくれます。一刻も早くこの状況を抜け出したかった私はすぐにその提案に飛びつき、座らせていただきました。

「四人でも意外と余裕だね」

 どういうことでしょう?私からは禮さんともう一人、髪の短いかっこいい方しかいないのに、禮さんは四人といいます。答えは禮さんの隣で隠れていました。

「よろしく。わたしは新庄飛鳥。あなた転入生なんだ。珍しいね」

ぴょこっと禮さんの胸の下から顔を出したかわいい女の子が話しかけてきます。

「あっちの短髪は日ノ本碧ひのもとあおい」

紹介された碧さんがこっちを向いて言います。

「おう、よろしくな。碇って言えば碇グループの碇だろ。IT系の」

「よくご存知ですね。そうです、私の父が経営しています」

「まあ、この学校の生徒は例外なく名前を調べればすぐに出てくるような家だからなー。こっちの飛鳥は新庄電鉄だろ、禮も京都の大地主だし」

「そんなことより、碇ちゃんの下の名前はなんていうの?」

「薫子といいます」

「そっか。じゃあ『かおるん』ね」

「そりゃセンスないぜ、飛鳥よー」

「いいじゃない、どうせ私しかあだ名なんて使わないんだから」

「そうだけど、日常的に使うんだからよー。気になるじゃん?それにテキトーにつけただろ。失礼だぞ」

「そうね。確かに『かおるん』じゃ『顔るん』を連想してしまうわね」

「「「?」」」

「それじゃあ『かほるん』ね。いいよね、かほるん?」

 私は涙を流していました。俯きそれを隠していると、禮さんが心配をしてくれます。

「あれ、碇さん?ごめんなさい、飛鳥が失礼したわ。ほら飛鳥もあやまりなさい」

「ごめんね、かほるん、かほるんじゃ嫌だった?」

「ずいまぜん。ぞんなあだ名なんでずげてぐでるお友達できたごどなぐって、うでしいのです。どうか謝らないでぐだざい」

 私は小学校から中学校まで、上海に住んでいました。そこの学校では周りはみんな中国の方でしたし、みんな私の父を知っていたので、私に話しかけてくるのは碇グループから利益を得たい人だけでした。

 でも、この学校は違うようです。みんな、私と同様に恵まれた環境にいるため同じ目線で接してくれます。初めて同級生というものを理解することができました。

 ここでの学校生活には期待していいのかもしれません。


 

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