脱走ホムンクルス系妹(4)
が、
「星繰り【メテオストライク】」
エリカが先行して隕石を叩き込んだ。またしても俺の出る幕はなさそうだな。
「アルスアンティカ【巨神】」
なんと、瞬時に天を衝くような巨人が現れ、隕石を掴み取ってしまった。
「な……」
「これこそが錬金術の極致だ。さぁおとなしくアラベラを引き渡せ!」
「嫌です! 戻りたくありません!」
アラベラは必死の形相で拒否する。
「黙れ! お前はただ私の言うことに従っていればいいのだ!」
アウレアはアラベラを杖で打ち据える。何度も何度も。
服が破け、背中の皮が破れて血が出ても、アウレアは殴るのを止めない。
それに、アラベラの方も全く抵抗しない。主人には危害を加えられないよう刷り込まれているのだろうか。
なんか、可哀想になってきたな。
「よく分からんが、アラベラは俺の妹に内定している。ルーラオム家の一員になろうとする者に危害を加えるなら、俺は黙っていないぞ?」
「フッ、貴様、ルーラオム家の無能次男か。噂になっているぞ? 始祖ルーライの力を受け継ぐことのできなかった出来損ないだとな!」
なんだと? そんなに俺の悪評が広まっていたのか? 知らなかった。市場の人たちとか、俺に優しく接してくれてたけど、あれも全部憐れみだったのか?
「俺を無能呼ばわりするとはいい度胸だ。それと、ホムンクルスとはいえ少女を痛めつけるのが趣味とは、随分と下劣な奴だな」
俺は久々にスキルを発動する。
「少し格の違いを分からせてやろう。スキル【デイ・サピエンティア】」
途端に、翡翠色の魔法陣が大量に展開される。
《神の叡智》を意味するこのスキルを食らって、跡形もなく消し飛ばしてやろうか? いやそれはまずい。気絶程度に留めておくか。
「再現せよ【デーモニック・エンネアコルド】」
魔法陣は黒く染まり、縦に整列する。聴くがいい。壊世の魔音を!
「スキル【リフレクション】!」
「え?」
なんと、アラベラのスキル発動の方が早かった。
アウレアは途端に背中から鮮血を流し始め、気絶した。これは、受けたダメージを反射させるスキルなのか? この一瞬で変身以外のスキルに覚醒するとは、大したポテンシャルの持ち主だ。
「ハハ、やりましたよ、お兄様……」
そう呟いて、アラベラは気絶した。
後日。アウレアは街中に巨人を出現させた罪で逮捕され、その他の非人道的実験の数々も明らかになり、収監された。
「えへへ、これで私も晴れて妹ですね。お兄様!」
「俺は仕方なく嘘を言ったまでなんだがな……」
「それでも、私のことを思って助けて下さいました。そこには正真正銘の兄妹愛があったと思うのです!」
「はぁ……」
エリカとは正反対に、アラベラは俺が認めていないのに妹を名乗りたがる。兄妹愛とはうまくいかないものだな。早く両想いの妹と出会いたい。
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