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脱走ホムンクルス系妹(2)

「いやぁ、痛い! 腕利きの冒険者エリカがいると聞いて襲ってみたけど、やっぱ強いねぇ」


 焼け割れた黒甲冑の中からは、一人の少女が出てきた。エリカよりは年上か? 黒髪はこの国では珍しいな。


「な、なんで無事なんだ?」


「私、ホムンクルスなので。回復能力だけは折り紙つきなのです」


「はぁ」


 面倒なのに付け狙われたな。


「ホムンクルスというからには、錬金術師に造られたんだろ? 主人のもとへ帰ったらどうだ?」


「いやぁ私、帰るとこないんですよねー。その、以前、街中でドラゴンに変身して暴れまわってみたらどうなるか、試してみたくなりまして……そしたらいつの間にか気絶してて、王国軍に拘束されていたんです」


「え? ちょっと待て! あのときのドラゴンはお前だったのか?」


「そうですよ」


 こいつ、何でもないことのようにしれっと言いやがって……


「あのときファイアブレス吐こうとしてただろ? 俺とエリカ、あそこで死ぬところだったんだぞ? 道楽で人殺すな」


「いやぁ、すみません。ファイアブレス吐いたことなかったので、どんな結果になるかまでは想像してませんでした」


「いや想像できるだろ! いいか? 街中や人のいることでドラゴンに変身するのはやめろ。それと今すぐ出ていけ!」


「いやぁ、そういうわけにはいきません」


 なんだ? さっきの戦闘の続きをする気か? そう思い身構えていると、彼女は土下座した。


「私をここで養って頂けないでしょうか。ご存知の通り、私、ドラゴンやら悪魔やら、色々な種族に変身できます! 人造人間なので! どうぞこき使ってください!」


「いや主人のところに戻れよ」


「あそこには戻りたくありません! 私に人権がないのをいいことに、あんなおぞましいことやこんなおぞましいことをされて……」


 虐待されていたのか? だったら……


「だったら王国軍に通報したらどうだ? 悪徳錬金術師がいると分かったら、王国も放置しておかないだろう」


「私がドラゴンとして暴れまわって王宮の牢から脱出してきたのをお忘れですか? 私はお尋ね者なのです!」


「ならご自慢の変身能力で逃げ続ければいいだろ? そうすれば面も割れない。そうじゃないか?」


 そう言って突き放そうとすると、なんとと彼女は俺の脚に縋りついてきた。


「そう言わずに! 私のこともかくまってください!」


「いや、お前と関わるとろくなことにならなそうだから断る!」


「私、悪魔にも変身できます! 魔王城に潜入することもできますよ?」


「じゃあ魔王城にでも行っちまえ!」


 俺はどうにかホムンクルス少女を追い出した。


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