脱走ホムンクルス系妹(1)
それから二日後。
エリカの方は、だんだんと血色もよくなってきた。【星繰り】を発動した後、昏倒してしまっていたのだが、こうして無事回復してくれて何よりだ。
「エリカ、だいぶ元気になってくれたようだな。兄としても嬉しい限りだ」
「あの! だから私、あなたの妹になることなんて承諾してないんですけど!」
「まぁ戸籍を書き換えただけだから気にするな。嫌なら妹を名乗らなくてもいい。俺は兄を名乗り続けるがな」
「うぅ、しれっと戸籍を書き換えられるとは……さすがはルーラオム家……ってそうじゃなくて、あ、でも……」
「でも、なんだ?」
「やはりアルダヴァーン様には恩義があります。それにきっと、私のスキルが進化したのも、アルダヴァーン様のおかげだと思うのです。だから、私を、使用人でも何でもいいので雇ってください!」
「アルダヴァーン様ではなくお兄様と呼んでくれないか?」
「今重要なのはそこじゃないです!」
エリカは怒ってペチペチと俺の胸を殴ってくるが、全く痛くない。戦闘はからきしダメなようだな。
「いいだろう。妹が嫌ならメイドとして雇ってやる。そしてゆくゆくは、セイラの探索に力を貸してくれ」
「そ、そのくらいなら……協力して差し上げられます! どうかこき使ってください!」
「いや、妹を酷使するなんてことはできない」
「だから私は妹じゃありません!」
エリカがそう言い放つと同時に、轟音を立てて屋敷の壁が崩れた。
「エリカ、いくらなんでも大声で怒鳴り過ぎだ」
「いや、私の声にこんな破壊力ありませんよ?」
土煙の向こうに目を凝らすと、黒い甲冑を着た人間が立っていた。性別も、種族も分からない。だが、ただただ異質で、おぞましい気配を感じる。
「誰だ貴様は?」
黒甲冑は、俺の問いかけには答えず、巨大な戦斧を手にして襲い掛かってくる。
これは、久々に本気を出さないとマズいな。そう考え、近くにあった木剣を手に取る。鋼鉄製であろう戦斧の一撃を防ぐことは、木剣では無理だ。普通はな。
だが俺は普通ではない。
などと考えていると、エリカの詠唱がこだました。
「星繰り【アストラル・フラグメント】」
光球が空から降ったと思うと、それは黒甲冑に当たり、大爆発を起こした。俺の見せ場は無くなってしまったが、まぁいい。それに、妹(本人は否定)が無事で何よりだ。
「おいエリカ、これ、明らかにオーバーキルじゃないか? 一体何をしたんだ?」
「太陽のほんの一部を切り取ってぶつけただけです。【星繰り】はこんなこともできるんですよー」
相当な危険度を持つ妹になってしまったな。
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