追放冒険者系妹(3)
ドラゴンは気絶し、中央広場へと倒れ込んだ。幸い、怪我人は出なかったようだ。
「さぁ、空に帰ってね」
エリカが手をかざすと、ドラゴンの脳天に直撃した隕石はゆっくりと浮上し、空の彼方へと飛び去って行った。
隕石にまで情けをかけるとは、慈悲深いな。
「すごいな、エリカ。こんな才能があるのに、なんで今まで隠してたんだ?」
「いや、隠してたわけじゃないんです! 本当です! 自分でもこんなスキルが使えるとは思わなくて……」
やはりこの一瞬で急成長したということか。
「そこのあなた、ぜひうちのギルドに!」
「冒険者に興味はありませんか?」
「私たちのパーティでならもっと活躍できるよ!」
なんと、一部始終を見ていた冒険者ギルドの関係者たちが一気に押し寄せてきたのだ。まぁ冒険者たちはドラゴンの迎撃に出てきていたようだし、ここに集結しているのも当然か。
などと思っていると、太った男が群衆をかき分けて進み出てきた。
「おいおい、邪魔だ! 有象無象ども! エリカ・フォン・イーゼルベルクは我がギルドの一員だ。むやみな勧誘はやめてもらおう!」
「誰だあいつ?」
「うっ、元上司です……」
「おぉそうか! 良かったな。ギルドに戻れることになって!」
「うぅ、でも私、あそこには戻りたくありません! さんざん私のこと使えないクズだのエセ能力者だの偽占い師だのと罵倒しておいて、今更迎えに来るなんて都合がよすぎます!」
そうか。前のギルドではだいぶひどい扱いを受けていたようだな。
俺はとっさにエリカの手を引き、背後に隠した。
「貴様! なんのつもりだ?」
「なんのつもり? それはこっちのセリフだ。彼女の名はエリカ・フォン・ルーラオム。俺の妹だ。連れていくなら俺の許可を取ってもらおう」
「な! まさかあなた様は! あの名門ルーラオム家の?」
「あぁ。俺の名はアルダヴァーン・フォンルーラオムだ」
「なっ、な、ですが、いくらかの侯爵家の御仁といえど、そんな勝手が許されるとは……」
一度は解雇したくせに、何を言っているのだろうか。
「ちょっと、妹になるなんて聞いてませ……」
「こいつは俺の妹だ。大事な妹をお前のような信用ならない奴には渡せない。分かったら帰るんだな」
「くっ、」
エリカの元上司は何も言い返せないようだ。
「正式な手続きはこれからだが、既に俺の妹に内定したエリカになにか危害を加えてみろ? 俺が許さない」
「チッ、こんな使える能力だと分かっていれば、追放などしなかったのに……」
男は悔しげに歯噛みし、立ち去って行った。
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