追放冒険者系妹(2)
その後もいくつもの魔法陣が展開され、部屋を駆け巡る。それらをまじまじと見つめて分析し、彼女はようやく口を開いた。
「一年以内に、妹さんは戻ってきます」
「一年以内? 具体的にはいつ頃なんだ?」
「そ、そこまではわかりません。すみません。でも、暦が一周するまでには戻って来ますので……」
これだけ大仰な儀式をやっておいて、そんな曖昧なことしか分からないのか。だが、今年中に戻って来ると分かっただけでも、希望が持てた。
「そうか。助かった。ありがとう。一年以内にセイラが帰ると分かっただけでも、安心したよ」
「そうですか。良かったです!」
「さて。本題だが、エリカ。俺の妹にならないか?」
「え?」
エリカは呆然としている。
「私、アルダヴァーン様とは血も繋がっていないんですよ。会ったばかりなのにそんな……」
「俺は妹がいなくなって寂しいんだ。一緒に生活してくれないか?」
「そ、そんな関係不純です! でも考えさせてください!」
その後、エリカは食事をとり、すやすやと眠ってしまった。
数時間経ったがまだ起きない。そろそろ夕食の準備をしたいのだが、このまま寝かせておいた方がよいだろうか。
などと考えていると、地響きがした。
「!? なんだ?」
外に出てみると、巨大な影が建物の隙間から見えた。これは……ドラゴン?
なぜこんな都市部のど真ん中に高位のモンスターが出る? そもそもこの町は魔術結界で守られているはずだ。
「皆さん、落ち着いて避難を!」
「慌てないでください!」
王国兵たちが避難誘導しているが、到底間に合うとは思えない。ひとまずエリカを呼びに戻るか。
「エリカ。ここは危険だ。すぐに逃げ……何をやってる?」
見ると、さっきとは比べ物にならない量の魔法陣が展開されていた。
「占いの結果、私とアルダヴァーン様はここで死ぬことが分かりました」
「え?」
エリカは遠い未来のことしか占えないんじゃなかったか?
「だからその未来、ここで書き換えます」
エリカは魔法陣の一つに、指で文字を書き加えた。すると、上空に火球が見えた。
「星繰り(ほしぐり)【メテオストライク】」
エリカの詠唱とともに火球は落下速度を増し、今まさにファイアブレスを吐こうとしていたドラゴンの頭に直撃した。
まさか、星を読む【占星術】というスキルが、星を操る【星繰り】というスキルに進化したのか?
この短期間……いや、この一瞬でそこまで成長するとは、恐ろしいポテンシャルを秘めていたのだな。
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