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開拓(1)

長いこと世話になった『金暁騎士団ゴールデン・ドーン』の館を辞去したイーディス達は、大陸南西部より遠洋漁業船を送り出す港にたどり着いた。


ラヴィエールやジェダは、イーディス達が一大探索イベントに参加しないことを、とても惜しんでくれた。

が、やはりひとつの島を始めから開拓するという壮大な夢を選んでみることにした。


そして、ルーチェの好奇心が赴くままに利用した転移装置テレポーターが、二人を間違いなく『スタークラッカー諸島』へと続く港に送り届けてくれた。

港町にいくつもある食事処のうちの一件で、『楽団おじさん』と落ち合うことになっている。


おいしそうな海鮮料理の誘惑に見事に敗北した二人が、弾力のある海老を食べつくした頃。

「やー、遅くなってすみません」

待ち合わせに遅れたことを軽薄に詫びつつ、『楽団おじさん』が現れた。出会った時よりも少し可愛らしい装いの良く似合うガトゥも一緒だ。


彼は相棒の為に料理を注文してから、さっそく本題に入った。

「お二人の島ですが、代金は後払いで良いとのことです」

「えーと、それは……」


「以前の持ち主がお二人のことを大変に面白がられましてね。今度は開拓者となって、ぜひ腕前を披露してもらいたいとのことです」

「開拓の出来栄えによって、土地代から割引してくれるってさ。まあ、ちょっとしたゲームだよね。クヴェトゥーシュ様からの挑戦状ってとこかな」


今、この半猫族は、クヴェトゥーシュと言わなかっただろうか?

確かにそう聞こえたので聞き返さず、挑戦を受けることを即決した。

「うん、二人ならそう言うと思った。いやー、"もと魔王"ってすごいよね、魔力と術式だけで島をひとつ再現しちゃうんだもん」


なんだかとんでもない単語がたくさんガトゥの口から飛び出している気がするけど、既にクヴェトゥーシュにもてあそばれる(人聞き悪し)ことが決定しているようなので、あえて気に留めずに話が進むに任せてみることにした。


「ガトゥ、それ以上のネタバレはまずいですよ。私たちは今回、伝言を頼まれただけでしょう」

『楽団おじさん』が相棒のトークを優しく阻む。

「あー、団長ごめん。そうだった。あとはクヴェット様から聞いてね、島で待ってるそうだから」


「わかりました。簡単にスローライフを始めることはできない、ということですね」

こんなことなら『金暁騎士団ゴールデン・ドーン』から何人か雇っておくべきだったかと内心で後悔しながら、イーディスが話をまとめる。

実際のところは、スローライフとはどういうものなのかが、いま一つよく分かっていないのだけれども。


「スローライフか……まあねー、ちょっと望みは薄いかな。早く遊びたいから合流し次第、現地に送り届けて欲しいとも言われてるんだけど……観光とかできなくて大丈夫かな?」


物事が予定通りに運ばないのには慣れっこだ。

義姉妹は瞬時に意志疎通を図って頷き合う。

観光は後回しにして、先にゲームとやらの会場に直行することにした。


決めるべきことは決まった。

美味しい料理を雑談に興じながら満足するまで食べ、店を出る。

『楽団おじさん』が何事かを短く唱える──珍しく真剣だった──と、賑やかな港町の光景がすぐに一変した。


「やあやあご両人。お久しゅう御座ござる。"スキル・コレクター"との勝負は満足のゆく結果に終わったと聞き及び申した。わたくしも大変に安堵して御座る」

赤いじゅうたんが敷き詰められた広い部屋の真ん中で、クヴェトゥーシュが丁寧に再会のよろこびを述べる。


久しぶりに騎士らしいあいさつをこなして、イーディスはさっそく本題に入った。

「わたし達とのゲームをご所望と伺いましたが」

「そうなのです、恋人があまりに楽しげに貴公らの話をするので……わたくしもお二人と遊んでみとうなりましてな。ぜひ一局、受けて頂きたい。報酬ギャランテイはズバリ、この島でござりまするぞ」


開拓に必要な資材や食料などは主催者側で用意することや、ゲーム開始のボーナスも兼ねて、このドーム型の建物を無料で譲り渡してくれることなどの説明を受ける。

ゲームのルールはすぐに理解できたけれども、イーディス達にはそれ以上に気になることが多すぎる。

2021/2/17更新。

2021/2/18更新。

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